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葬儀も中継!?『withコロナ』で変わる別れの形

2020年6月4日

『記者 牧野慎太朗・横山翔太』

「大事な地元の葬式にも行けない…ごめん」「コロナのせいで最期を見送ることもできない」。
SNS上には、新型コロナウイルスに伴う移動の自粛で、大切な人との別れの場に立ち会えなかったという声が数多く見られました。"これまで通り"とはいかない『withコロナ』の時代。タブーを越えた『新たな別れの形』が始まっています。
変わりゆく葬儀の現場を取材しました。

【変わる葬儀の形】

イベントや結婚式の延期が相次ぐなか、どうしても先延ばしできないのが通夜や葬儀。感染防止対策も求められるコロナ禍の式は異例ずくめとなりました。

まず、変化の1つが葬儀の規模です。
宮崎市にある葬儀会社「ふじもと美誠堂」では、一つの葬儀の参列者が以前と比べて半数程度になったといいます。多くの参列者で最期の別れをしたいと願う遺族も、感染リスクを下げるために苦渋の決断を迫られ、2つあるホールのうち、2、30人ほどしか入らない小さな式場を選ぶ遺族が、全体の8割に上ったとのことでした。

また、長年の葬儀の"慣習"も変えざるを得ませんでした。
取り入れたのは"時間差通夜"。聞き慣れない言葉ですが、1度に人が集まらないよう親族と一般の参列者で通夜の時間をずらす工夫です。その上、"テイクアウト"も導入。故人の思い出を語り合う通夜の会食を中止し、「密」を避けるため、弁当を持ち帰ってもらうケースが相次ぎました。

【"不謹慎"さえも 吹き飛ばす!?】

異例ずくめのコロナ禍の葬儀。でも、最も目を引いたのが参列者の変化でした。
葬儀中にもかかわらず、携帯電話を取り出しカメラを向ける参列者の姿が見られるようになったのです。

結婚式ならわかるけど…葬式を撮影?
一見、不謹慎とも思えますが、実はコロナ禍ならではの行動でした。県境を越えた移動の自粛が呼びかけられる中、参列できなかった親族にテレビ電話をつないで、式の様子を伝えていたのです。この葬儀場で行った式の4分の1で、こうした様子が見られたといいます。

(ふじもと美誠堂 藤元一生社長)
「初めて見たときは、こんなお別れの形もあるのかと、胸を打たれたというかショックを受けました。新型コロナを経験して、お別れのシーンもずいぶん変わりましたが、よくお客様の声に耳を傾けながら、取り組んでいく必要があると思っています」

【遺族の思いに応える動きも】

"参列できなくても、一緒に大切な人を見送りたい"。遺族の思いを新たなサービスに結びつけた葬儀会社もあります。

葬儀場に入るとすぐ目につくのは、複数のカメラとパソコン。それに「Zoomにてオンライン中継中」の張り紙です。都城市の葬儀会社「アイワホール」では、参列できない離れた家族のために、式の様子を中継で伝えるサービスを始めました。タブレットとカメラ、最大4台をパソコンに接続。テレビ電話「Zoom」を介して離れた場所からでも、様々な角度から式の様子を見ることができます。

ことし4月から始めたサービスですが、すでに葬儀全体の9割、50件以上で実際に利用されているといいます。
 

(アイワホール 種子田義男社長)
「自前のタブレットなどを使って急きょ用意したサービスなんですが、お客様からの反応はとてもよく、多くの感謝の言葉もいただいています。このサービスを知らない方もいるので、いまではすべての葬儀にご提案させていただいています」

【葬儀会社も想定外!?"新たな葬儀の形"】

さらに今、父親を亡くしたある女性の強い願いから、会社も想定していなかった、新たな葬儀の形に変わりつつあります。
離れた場所から『見る』だけではなく『参加』する形です。

きっかけとなった遺族は、東京都内に住む栗林薫さん(48)。
緊急事態宣言が全国に出されていた5月2日、父親の葬儀が都城市で開かれることになりました。

宮崎県内で28年間看護師として働き、さらなるステップアップを目指して去年から東京の大学院で学び始めたやさきの父親の死。看護師の道をさらに究めたいという夢を見守り、常に応援してくれた大切な父の葬儀に、どうしても参列したいという思いもありましたが、万が一感染していたらほかの親族や参列者に迷惑がかかってしまうため、断念しました。
それでも、せめて父親に言葉だけでもかけたいと葬儀会社に申し出たといいます。

(栗林さん) 「どうしても葬儀に参列をして『父に最後の言葉をかけてあげたい』という思いから、かなり葬儀屋さんに無理を言ってお願いしたところがありました」。

いままでのサービスは式の様子を自宅に届ける、一方通行のみ。しかし、栗林さんの申し出は、逆に自宅から式場に届けたいというものでした。
サービスを始めた葬儀会社も、いわば自宅から『参加』させるのは初めての経験でしたが、栗林さんの思いに突き動かされて1日がかりで準備しました。
その結果、栗林さんは、姿を式場のプロジェクターに映し出す形で参加し、弔辞を読むことができました。

そして式の最後。栗林さんはタブレットごしに、棺の中の父親の元へ。
最後に会ったのはことし1月。長年育ててくれた、その顔を見ながら、言葉をかけることもできたのです。

(栗林さん) 「まさに最初から最後までその場にいるような感覚でした。寝ているような表情をしている父に、『感謝でいっぱいです』という思いを伝えました。参加できなかったら、一生後悔していたと思います。最後に画面越しではありましたが、感謝の言葉を伝えることができて本当によかったなと、私は大満足でした」

(アイワホール 種子田義男社長) 「お葬式はタブーな部分が多いので、新しいものを取り入れていくことはあまりしませんが、今回はこういうことがあったから、やってみようかということになりました。お葬式は、“残された者が心を癒やす儀式”です。ご家族が良い見送りができたと感じられるかどうかなので、そこに向けて力を尽くしていきたいと思います」

【アフターコロナも見据えて】

この葬儀会社では、潜在的に式に参列したくても「仕事で帰れない」「高齢になり体調がすぐれない」という人は多かったのではないかと気づかされたといいます。
ふだんなかなか会えない家族、親族同士が故人を介してつながりを実感する場でもあるのがお葬式。このため会社では、新型コロナウイルスが終息したあともサービスを続けていきたいとしています。

新型コロナを機に生まれた新しい最期の別れの形。これからどう変わっていくのか取材を続けていきたいと思います。

この記事を書いた人

記者 牧野慎太朗

記者 牧野慎太朗

都城支局。宮崎局6年目。
転勤族なのでどうしても地元の葬儀に参列できないことがあるかもしれないと我が事として考えさせられました。

横山翔太 記者

記者 横山翔太

警察担当。宮崎局2年目。
数年前、どうしても外せない用事で遠方にいて、友人の葬儀に参列できませんでした。当時こうしたサービスがあれば、きっと利用していたと思います。

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