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香港の‟小さな宮崎″ キーパーソンが語る「宮崎のきずな」

香港宮崎県人会・大原奈々さんインタビュー 
  • 2023年11月17日

香港の‟小さな宮崎″ キーパーソンが語る「宮崎のきづな」

2023年10月に行われた宮崎県人会世界大会。国内はもとより海外から県人会の代表が集いました。参加者の1人、香港宮崎県人会事務局次長の大原奈々さんに話を伺いました。
大原さんは、宮崎の味を香港で食べたいという思いをきっかけに、自ら農産物や加工食品を輸入する会社を立ち上げ、現在は宮崎のアンテナショップを展開しています。その思いの根底にある「宮崎愛」とは。現地で意外にも人気だという「冷や汁」の話題もご紹介します。(アナウンサー・土橋大記)

香港滞在歴16年 宮崎市出身 大原奈々さん

大原奈々さんは宮崎市内出身。新富町出身でパティシエの夫の仕事で、31歳のとき香港に渡りました。最初は2~3年で帰る予定でしたが、気が付けば16年になったそうです。

香港と宮崎をリモートで結んでお話を伺いました

香港の宮崎県人会とは

36年の歴史があり、約30人の会員がいる香港宮崎県人会。
発起人の一人は、60年前に横浜港から荷物を3つだけ持って香港に渡った経験を持つ方で、同郷の結びつきの大切さを痛感されて設立したということです。今では、県や企業の駐在員などが主な会員となっています。
メンバーは2か月に1回、偶数月に、宮崎の郷土料理のお店で定例会を開催しています。みんなで焼酎を飲み、チキン南蛮をつまみながら、親睦を深めています。話題は、やはり地元ネタ。出身中学校や高校の話題、宮崎に帰った人が持ち帰った「新しいお店が出来ていた、あのお店がなくなっていた」といった情報など話は尽きないということです。大原さんは「宮崎を愛する気持ち、宮崎への思いは、常にありますね」と語ります。

香港には島がたくさんあり、ハイキングをしたり、みんなで船に乗って遠出したり、レクレーション企画も行っているということです。

山の上で広げる幕には「みやざき犬」の姿が

県人会が縁で自ら宮崎県産品の輸入を手掛けるように

実は大原さんは県人会を開催しているお店で働いていらっしゃるんですね

そうなんです。宮崎県出身のオーナーが営む元気一杯というお店で、県人会事務局にもなっています。最初は宮崎県人会が縁で働くようになりました

仕入れもされているとか

宮崎のお店、宮崎の居酒屋って謳っていたんですけど、実は東京・豊洲市場から入ってくる食材が多く、なかなか宮崎産のものが入ってこなくて、だったら自分で直接入れようと思って始めました。
宮崎の農水産物や加工品を香港に輸入する会社を作って、他の飲食店や小売店にも卸しています

大原さんが香港に輸入する宮崎の野菜

人のきずなで出来た物流

宮崎のいい物を香港でも知ってもらいたい一心で取り組み始めた輸入事業。しかし貿易の経験はまったくなく、当初は困難の連続でした。
「最初は一度送ってもらおうという軽い感覚だったんです」と大原さん。手探りで、国際宅配便を使って野菜を輸送してみましたが、届いた野菜はぐちゃぐちゃで、まず梱包から見直しが必要だったといいます。
そこで力を貸してくれたのが、宮崎の青果業者や鮮魚店、そして福岡の商社などでした。

宮崎は九州の中でも陸の孤島と言われていましたが、もちろん香港までの直行便はなく、物流ルートづくりにも苦労しました。支えてくださるみなさんのおかげで、いまでは福岡経由と、沖縄・台湾経由の2つの物流ルートが出来ました

今では、野菜の場合、2日後には香港の店先に並べることが出来ます。
1日目に青果業者が鮮度の良いものを選び抜き宮崎の市場で買い付け。トラックで福岡に運ばれます。福岡発香港行きの飛行機に積み込まれて翌2日目には香港の大原さんのもとに届くという訳です。

「宮崎から出て香港に到着すまでに、いろいろな方の手にわたって届きます。おかげさまでという感じです。途中で支えてくださるみなさんも、私が『宮崎・宮崎』というので、宮崎が好きにになってくださっています。人のきずなで宮崎のものが香港に来ているという感じですね」大原さんは話します。

香港に並ぶ宮崎の野菜・魚・肉

現在は佐土原なす、ゴーヤー、甘藷(さつまいも)、また季節に応じてキンカン、マンゴーなど宮崎を代表する野菜や果物を輸入しています。

コロナ前には、月に1回「宮崎ひなたマルシェ」というものをしていました。宮崎の農家や市場直送の農産物や加工品を販売していました

コロナ前に開いていたマルシェのようす
まるで宮崎の小さな産直のよう

鮮魚店などは血抜きした魚を軽く真空パックして冷蔵輸送する方法を提案してくれました。やはり輸送は2日がかかりますが「輸送中に熟成されるのでおいしくなる」と大原さんは言います。

そしてなんといっても宮崎牛。宮崎から香港に輸出される食材で最も知られた存在です。

宮崎は県というより宮崎牛で知られています。香港のお客様から「宮崎県というのは、あの宮崎牛の宮崎か!」と言われることも多くあります

宮崎牛の入った箱 和牛の文字が見える
宮崎のポーク

こうした宮崎産の食材。確かに価格は安くありません。

値段は宮崎の市価に比べて約3倍になってしまいます。
私は品物を飛行機で輸送しているので、例えばいま(2023年10月現在)ゴーヤー1本700円、トマトや長なすが470円くらいになってしまいます。値段は高めになりますが、鮮度を求めている方には好評ですね。宮崎の食材は「どれもおいしい」と高い評価を受けています

鮮度や安心感に加えて、「香港の方は日本に行くのが大好きで、本場の料理を日本で食べているので、日本で食べるのと同じ味を求めている」とのこと。それを支える要素の1つが宮崎の食材と言えるかもしれません。

ことしアンテナショップもオープン

ことし(2023年)2月、大原さんたちは、県人会事務局の居酒屋の隣に宮崎のアンテナショップをオープンさせました。場所は香港の繁華街の1つ尖沙咀(チムサーチョイ)地区にあります。

宮崎の野菜や宮崎牛、豚肉、鶏肉を使った加工品、焼酎やワインなど約140アイテムを取り揃えています。
中でも甘藷(さつまいも)は常に人気です。実は、香港で見かける芋は、宮崎ではなかなか見ないような細い短いものが多いそうです。香港の炊飯器には蒸し器の機能がついていて、そのまま蒸すことが出来るサイズだからとか。しかし大原さんはあえて、大きな丸々太った芋を取り寄せています。切り分ける手間はかかりますが、本場の味わいを知ってほしいと考えているからです。

店では、弁当も販売していて、宮崎ブランドポークを使ったトンカツや生姜焼きが特に人気です。香港の方はもちろん日本からの駐在員、また中国本土から香港に来た旅行客も立ち寄ってくれるということです。
次第に口コミで知名度も上がってきて、最近では香港人のユーチューバーが撮影に訪れるほどになったそうです。

香港在住の宮崎出身のビジネスマンが、取引先の手土産を買いに来てくれることもあります

「他の県人会からは、こうした拠点になる店を持っていることを羨ましがられます」大原さんは言います。

意外だった!「冷や汁」の売れ行き

アンテナショップで予想外にも売れたものがあるといいます。それが宮崎の冷や汁。

香港は外食文化で、家で食べるものが売れるかどうか半信半疑でしたが、レトルトの冷や汁は売れ行きがいいそうです。

香港では凍味噌飯と表記するんですね

きゅうりを刻んでとか、豆腐をすりつぶしてとか、説明はするんですけど、それをしていなくても、レトルトの冷や汁のスープだけご飯にかけて食べたりしている香港の方もいるみたいで。香港も暑いので、手軽にさらっと食べられるのがウケているのかなと思います

これから先、目をつけている商品はありますか?

いまお店に、売り場に置いている冷凍庫がちょっと小さいんですが、宮崎のブランドポークを使った冷凍食品を増やしていければいいなと思います。
手軽に食べられるものでないと、販売が難しいので

アンテナショップの店内

店に並ぶのは、大原さんが宮崎に帰ったときに、物産館でいいなと思ったものや、宮崎の食品メーカーが香港で売ってみたいと県人会に相談してきたものです。県人会は親睦の場だけでなく、ビジネスのつながりを作る場にもなっています。

私が扱っている量は全く多くはないんですけど、私がアンテナショップに並べることで、同業者の人たちが見て、そこから商談が始まったりもありますので、香港のアンテナショップに並べているだけでもチャンスはあると思います

多彩な商品を陳列

宮崎の人の香港のオアシスになりたい

いつの間にか宮崎を香港でプロデュースする存在になっていった大原さん。
大原さんは「人と人をつなぐのが好きで、商売を大きくするというよりは、宮崎の人と香港の人を商品を通して結び付ける仕事をしていきたい」と言います。

宮崎の人の香港でのチャレンジを支えたいっていう思いがあります。自分も香港に来たばかりの時、誰も知り合いもいなくて寂しかったし、不安だったので、宮崎から香港に来る人たちのオアシスになれたらいいなと思っています

「新しいことが知れるので、苦労よりも楽しさが上回りますね」
「だからぜんぜん難しく考えていないというか・・・」

世界大会を機に 宮崎と海外 海外と海外のつながりに期待

大原さんは、世界大会では「私たちと同じように世界中で宮崎を愛している人たちとネットワークを作って、今後の活動や交流がもっと活発になるきっかけとなることを期待したい」と話します。

とにかく宮崎が大好きで、宮崎愛だけで始めた仕事です。
たくさんいろいろな協力して支えてくださる方のおかげで、私の仕事は成り立っています。宮崎にお世話になった方がたくさんいるので、恩返しができればと思っています。宮崎の人から頼まれたら、何かちょっとでもお手伝いが出来たらと思うんで。

今回の取材を通して、個人の思いと、県人会などのネットワーク、そしてビジネスが一つになり、互いの力になっていることを感じました。これからさらに宮崎に縁を持つ世界の人たちがつながり、1人1人の暮らしや生き方がより豊かになり、コミュニティーが活性化していくことに期待を持ちました。
(この記事は2023年10月放送の「てげビビ!」を再録・編集したものです)

  • 土橋大記

    宮崎放送局コンテンツセンター アナウンサー

    土橋大記

    リポーターとして国内外の農林業や農政・食糧問題などを取材

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