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人口1万人 小さな町で始まる"まちづくり"都農を世界の真ん中へ

  • 2023年07月19日

宮崎県都農町に商店街に活気を取り戻そうと新たな手法でまちづくりに取り組む移住者がいます。
小・中学生も、おじいちゃんも、おばあちゃんも僕なんかも本当にやろうみたいなのが、まちづくりでは一番大事
人口1万人の町を取材しました。

全国で直面する人口減少

まずは、こちらのグラフをご覧下さい。都農町の人口の推移です。

1995年に1万2000人を超えていましたが、2020年には1万人を切りました。2040年になると、6000人台まで減少すると推計されています。およそ50年の間で、人口が半分ほどに減るという改めて衝撃的な予測です。

こうした人口減少に伴って課題となっている1つが、町の中心部、特に商店街の衰退です。多くの店が閉まり、人通りがめっきり減っています。 今、都農町では商店街に活気を取り戻そうと、新たな手法でまちづくりに取り組む移住者の男性がいます。どんな活動なのか、取材しました。

人口一万人の町で挑戦

都農町で中心部の活性化に向けて、月に1回ほど開かれている“みちくさ市”です。 町内の飲食店や生花店が出店し、毎回、地元の人たちでにぎわっています。

イベントが開かれた広場には、もともと八百屋や鮮魚店が並ぶマーケットがありましたが、閉店する店が相次いで取り壊され、それにつれて街のにぎわいも失われていきました。
街市は地元のまちづくり団体などが今年1月から毎月1回ほどのペースで開いていて、今後は広場を改装してふだんから人が集まるような場所にしていこうと計画しています。

“みちくさ市”の会場で、地元の人たちと空き地の活用について議論する男性がいました。長年、東京で不動産開発会社を経営したあと、3年前に都農町に移住した中川敬文さんです。まちづくりを事業とする会社を起こし、この“みちくさ市”など、町のにぎわいを生み出す活動に力を入れています。

中川さんに移住直後の都農町の印象を聞いてみると

中川敬文さん

もう何もないっていう感じで、それに尽きますね。アンケートに対して(町に)元気がないという人が若干多かった。元気がないと答えた人の理由で一番多かったのが、商店街とか中心地のにぎわいが薄れてるという答えでした。

空き家や閉店した店が並ぶ中心部の商店街。人口減少が加速する中、2年前には町内唯一の高校も廃校になりました。中川さんは町の委託を受け、高校跡地に、子どもの遊び場や飲食店、それに高齢者施設などが入った複合施設を建てる計画を進めています。

東京で20年以上都市開発に携わった経験を生かし、まちづくりに取り組む中川さんですが、都農町では新たな手法に挑戦しようとしています。

主役は子ども

中川さんが目をつけたのはなんと中学生。“つの未来学”と題し、総合的な学習の時間を使って年間15時間、中学生とまちづくりに取り組んでいます。この日は、人通りが少なくなった町の中心部でフィールドワークを行いました。

テーマは商店街の再生です。何があったら、自分たちが行きたい場所になるのか。生徒たちは商店街を思い思いに歩きながら考えました。

中川敬文さん

まちづくりは子どもが発火点だと思ってて、子ども参画のまちづくりと言ったら、都農町という風にしたいと思っています。

このカリキュラムの最後には町長に提言を行うことになっています。「自分のアイデアが実現するかもしれない」と、生徒たちにも熱が入ります。

中学生

フィールドワークでこんなところに良いところがあったんだとか、いろんな新しいものが見えました。

中学生

直接、自分たちの町を自分たちで考えられるのはいいなと思います。町を活性化できるような提案ができたらいい。

中川敬文さん

町にとっては、高校が無くなって、職場もそんなに無いので、中学生が出ていくのは間違いないんですけど、どうやったら戻ってきてもらえるかがどこの自治体も重要で、私は自分が作ったベンチがあったら座りに来るんじゃないかと思うんです。まちづくりの体験ではなくて、参画をする当事者になるのがいいのではないかと思っています。

逆転の発想

さらに、中川さんは、中学生が加入する地域のクラブとして「まちづくり部」も立ち上げました。
生徒たちが試作を繰り返しているのは“みちくさ市”で出品するジュースです。 アイデイアを出し合った結果、好きな色を選べるカラージュースを販売することにしたのです。取材した日には、色の最終調整を行っていました。

授業が始まった当初、まちづくりに興味を持った生徒に中川さんが具体的な活動を促しても部活動が忙しく、実現しなかったといいます。それならばと、逆転の発想で、中学生がまちづくりに関われる地域クラブを作りました。

みちくさ市の当日。中学生たちの出店には次々と客が訪れました。最終的には100杯の売り上げを達成。ふだんの人通りのない場所がうそのような盛り上がりを見せ、町ににぎわいを生む楽しさを体感しました。

中川敬文さん

小中学生も、おじいちゃんも、おばあちゃんも、僕なんかも本当にやろうみたいなのが1万人の町のまちづくりでは一番大事なのではないかと思う。子どもが当事者になっているのは日本一を目指したいです。

若者も次々“まちづくり”に

中川さんの会社は、町内で空き家やトレーラーを活用したユニークなホテルの運営も行っています。
そのホテルの支配人を務めているのが、今年3月に東京大学法学部を卒業したばかりの吉良倫太郎さんです。国の省庁や大企業ではなく、中川さんの会社に入社しようと、都農町に移住しました。

ホテルの支配人を務める吉良倫太郎さん

吉良さんは地方創生に関心があり、学生時代に全国各地のまちづくりを見て回って結果、都農町に魅力を感じたそうです。中川さんと一緒に若い世代を主体としたまちづくりに携わっています。

今後、広大な敷地を持つ都農高校跡地の活用など、どんな展開があるのか。中川さんたちが若者や子どもたちと一緒に進めるまちづくりに引き続き注目していきたいと思います。

  • 松井嚴一郎

    宮崎コンテンツセンター記者

    松井嚴一郎

    県政担当3年目

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