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焼酎蔵のウイスキー 老舗酒蔵が目指す次の百年 こだわりとは?

  • 2023年05月29日

日本産のジャパニーズ・ウイスキーが海外で注目を集めるなか、延岡市の老舗の焼酎蔵が同じ蒸留酒であるウイスキー造りに挑んでいます。
100年以上続く老舗酒蔵が直面した危機と、次の100年を見据えた新たな挑戦とは?

老舗焼酎蔵の挑戦

延岡市にある明治38年(1905年)創業の老舗の焼酎蔵です。そばを流れる祝子川の地下深層水と流域で育てられた麦を使い、こだわりの焼酎を作っています。

その焼酎蔵が3月に発売したのがウイスキーです。原料としては珍しい国産の米を使っています。

伝統を守ってきた老舗で、次の100年につながるような新しい酒造りを目指して、同じ蒸留酒であるウイスキー造りに挑むことを決めました。

焼酎づくりの様子

突然絶たれた販路

なぜ、焼酎蔵がウイスキーを作ることになったのか?きっかけは新型コロナウイルスでした。
工場長の古賀慶次さんによると、当初新型コロナが流行り出したころは、一時的に売り上げが4割から5割ほど落ち込む月もあったといいます。

出荷していた焼酎は、ほとんどが飲食店に卸されていたため、緊急事態宣言などの影響で多くの飲食店が休業すると販路が狭まり、窮地に立たされたのです。そこで、日本国内だけではなく、本格的な海外輸出に乗り出すことを決意しました。

古賀慶次さん

新型コロナのときは率直に不安、何とかしないといけないなという思いが一番でした。日本国内にしか今まで目を向けられていなかったですけど、今回こういったことを機に海外の輸出ですとか、そういうことに目を向けられるようになりました。

焼酎蔵のウイスキー

海外への販路を開拓するなか、蔵を訪れたアメリカのバイヤーが興味を示したのが、たるで貯蔵した焼酎でした。同じ蒸留酒で、たるで熟成するウイスキーを作ってみてはどうかと、提案されました。
近年、アメリカや中国などで人気が高まっている「ジャパニーズ・ウイスキー」。古賀さんたちは海外での可能性を感じ、新たに挑戦することにしました。
こだわったのは、焼酎づくりのノウハウを生かしたウイスキー作り。文献を片っ端から読んで製造方法を勉強し、それを実現できる方法を1年がかかりで検討したと言います。

通常、ウイスキーは専用の設備で作りますが、古賀さんたちは焼酎の設備だけで作ることにしました。
ウイスキーの蒸留器はアルコール度数を高めるのに適した構造である一方、焼酎の蒸留器は香りや風味を引き出すのに特化しています。ウイスキー造りでも焼酎の蒸留器を使えば、より香り高い原酒ができ、従来にない個性豊かなウイスキーができあがると考えたのです。

古賀慶次さん

僕たち(焼酎蔵)が目指すなら、海外の真似をして作ったウイスキーよりも、自分たちの培ってきた技術で作るウイスキーを作りたいと思いました。それが日本のウイスキーと謳えるんじゃないかと。

延岡を蒸留酒文化の発信地に

本格焼酎造りに使う設備で作られたウイスキー。できあがったものがこちら

古賀さんによると「国産米の甘さと、アメリカンオークの樽のフレッシュでスパイシーな香りが特徴で」だということです。

焼酎の設備と技術で作られたウイスキー。国内で発売すると、すぐに予約で埋まるほどの人気となりました。そして、年内には、いよいよアメリカと中国に出荷する予定です。

古賀慶次さん

ものごとが目まぐるしく大きく動いた3年間だったと思います。コロナがなければ、新たな考え、新たな商品は生まれなかったのかなと。僕たちが延岡から県外、世界に打ち出していくことによって、また地元にいい影響を与えらえるような、そんな蔵になっていきたいと思っています。

  • 玉木絢子

    宮崎局・記者

    玉木絢子

    2019年入局
    延岡支局で県北のできごとを取材中

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