「こころ旅」火野正平さんの宮崎旅 最終日は宮崎神宮がゴール

俳優・火野正平さんが相棒・チャリオ（自転車）に乗って日本全国を走る「こころ旅」。
今日28日は宮崎市赤江の「緑松公園」から「宮崎神宮」への旅。
お手紙のエピソードをもとに皆さんの「こころの風景」を訪ねます。
＜25日(火)日南市、26日(水)串間市、27日(木)宮崎市、28日(金)宮崎市神宮＞

小学校1・2年生のころ、宮崎神宮の中の剣道場に通っていました。もう辞めたいと弱音ばかりの毎日でしたが、ある日、帰り道に何ともいえない香りがして行ってみると、藤が咲いていました。その香りは鬱々としていた私を慰めてくれました。
その後引っ越しで剣道は辞めることになり、藤も見れなくなりました。時は経ち、2019年4月。あの剣道場と藤が見たくなり、宮崎市に行きました。宮崎神宮の境内に入ると、藤の香りが漂い、藤棚では大きな白藤が輝くばかりに咲いていて、その香りに身も心も洗われるようでした。
その広場に大きな2本のヤシの木がありました。宮崎でヤシは珍しくありませんが、この2本は唐突にそこにあり、不思議に思いました。そして剣道場を探しましたが、それらしき建物がありません。社務所で伺うと、剣道場は藤棚と同じ広場にあったが、老朽化で2006年に解体されたとのこと。残念でしたが、そこで解体当時の道場の写真が載った記事を拝見しました。
玄関に門構えのような2本のヤシが写っています。あのヤシは道場がなくなって門構えの役割を失ったため、唐突に立っているように見えるのだと思いました。ヤシを目安に、ここが入口、ここが竹刀置き場、ここで練習したなあと歩き、ふと顔をあげたとき1本の木が目に入りました。
練習に疲れ果て、見上げた道場の窓から確かにこの木を見た気がします。当時いつも使っていた境内の裏口を思い出し、行ってみると、石垣と石の門柱に強烈な見覚えがありました。
入口で靴を脱ぎ、裸足で板の間に飛びあがって座礼をし、ドタドタ着替えに走る足音、いろんな音や景色が一気に蘇ってきました。人の建てたものは朽ちても、木々や石達は場所の記憶を宿したまま残ってくれていました。宮崎を旅するなら藤香る神社の境内で子どもたちを見守ってきた木々、元気な2本のヤシの姿などご覧いただければ幸いです。