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男女の格差「宮崎」は政治で全国最下位 女性ゼロ議会の実態は?

  • 2023年03月09日

「都道府県版ジェンダーギャップ指数」として公表された男女平等の進み具合で、宮崎県は「政治分野」が47都道府県で最下位、「行政分野」が42位、「教育分野」が37位、「経済分野」が23位と、全体として厳しい結果となりました。
なぜ宮崎で、女性の政治参加が進まないのか?
女性議員が1人もいない宮崎の<女性ゼロ議会>に話を聞きました。

政治への女性参画 宮崎県は全国最下位

上智大学の三浦まり教授らの「地域からジェンダー平等研究会」は、市町村議会の女性議員の数や自治体や企業の管理職に占める女性の割合などの統計資料をもとに、都道府県ごとの男女平等の進み具合を調査し、「都道府県版ジェンダーギャップ指数」として公表しました。

その結果、宮崎県は「政治分野」が47都道府県で最下位、「行政分野」が42位、「教育分野」が37位、「経済分野」が23位と、全体として厳しい結果となっています。

特に深刻な「政治分野」の順位を押し下げる要因となったのが、女性の議員が1人もいない市町村議会の多さで、全26市町村のうち門川町、都農町、高原町、美郷町、日之影町、五ヶ瀬町、椎葉村、西米良村の合わせて8町村にのぼります。なお、8つの議会のうち門川町は、先月、選挙が行われ、3月9日から女性議員がゼロから1人となります。

三浦まり 教授

人口は男女ほぼ半々で構成されているときに、半分の人たちが入っていないということがいかにいびつかということを考えてほしいです。女性議員がいないことによって「見過ごされてしまう政策がある」と考えないといけないと思います。

【女性ゼロ議会】を記者が直撃

女性の議員が1人もいないことをどのように感じているのか、五ヶ瀬町議会に話を聞きました。
この日は新年度予算案について議論が行われていましたが、町議会議員7人全員が男性となっています。そして、向かいあう行政側も居並ぶ幹部すべてが男性でした。

五ヶ瀬町議会では平成に入って以降、女性の議員は1人しか生まれておらず、立候補したのもこの1人だけだということです。女性議員が1人もいない状況で女性の意見は十分に反映されているのか。甲斐政國 議長に疑問をぶつけました。
議長は「確かに女性議員はいた方がいい」としたうえで、次のように話しました。

甲斐政國 議長

議会報告会であるとか町内巡回をやって町民と話す機会があるので、女性の意見そのものは聞けていると思います。女性議員がいないからまったく女性の気持ちが反映されていない議会とは言えないとは思います。

「女性議員はいないが、女性の声はきちんと吸い上げている」甲斐議長はそのように話しました。同じように思っている議員の方は宮崎でも多いかもしれません。
一方、調査を行った上智大学の三浦教授は女性議員がいないことで見過ごされている問題もあるのではないかと、「生理の貧困」の問題を例に説明してくれました。

三浦まり 教授

若い女性が生理用品の話を中高年の男性にできるかといったら恥ずかしくて無理ですよね。性の問題・妊娠出産など身体に関わることを男性に相談するのはやはり難しい。男性の側が「自分たちに言ってこないから問題ない」というならば、いかに多くの問題が見えていないかを示している発言だと思います。

町の人の声は?

こうした状況をどう思っているのか?有権者である町の人に話を聞きました。

やっぱり女性の議員がいれば何でも相談にのってくれる気がする。男性はちょっとあれかなーと思ったり。

女性だったら女性のことが分かるから(女性議員がいたら)助かると思います。

立候補してほしい女性は何人かいるが、女が出ても・・・という感じがある。

なぜ女性議員が増えないのか?

先ほどの甲斐議長が強調していたのは女性に対して「常に門戸は開いている」という点です。

甲斐政國 議長

私たち議会の側が「女性は議会に来なくて良い」とか「来たらだめだ」とか言うことは一切なく、来ていただけるなら歓迎する。女性の側に議員になろうと手を挙げる勇気って言ったらおかしいかもしれないけど、その決断をされていないことがひとつの原因かなと思う。

また、先ほどの新年度予算案で、町の幹部すべてが男性だった行政の小迫幸弘町長にも話を伺ったところ、女性職員の管理職登用について、甲斐議長と同じ趣旨の話をしていました。

小迫幸弘 町長

管理職は幅広い業務を把握し、これまでの経験則をもって行政を次のステップにもっていく仕事で労力が必要です。女性職員は管理職になりたいのかな、そうでもないんじゃないかなと思う。

こうした「女性が手を挙げてくれない」という主張について、三浦教授はこのように話します。

三浦まり 教授

性別による役割分担がはっきりしていて子育てや介護が女性の役割とされる中、加えて政治活動もとなると、それができる女性はかなり限定されてしまう。議会としてできることはたくさんあるのに、それをしないで女性のなり手がいない、と待っているだけではいつまでたってもゼロ議会の解消はできない。

他の県では動き出している議会も

女性が立候補しやすい環境をつくろうと、議場での質問を体験する「女性模擬議会」を開くなどの取り組みがあります。「すべての市町村議会に女性議員がいる」という県も香川県や栃木県など6府県にのぼっています。

また「行政分野」の1位は県が先頭に立って女性管理職の登用を進めている鳥取県。「教育分野」の1位は女性の4年制大学の進学率が男性を上回った高知県でした。

「地方だから都市部より女性の社会参加が遅れているのは当たり前」という認識は正しくないことが分かります。それぞれの分野で1歩ずつ歩みを進めていくことが大切だと思います。

  • 山本華子

    宮崎局・記者

    山本華子

    2021年入局
    宮崎市出身。生理の貧困など女性に関わる問題を取材

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