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有機一筋40年! 誕生 “宝の肥料”そのヒミツ… 宮崎/えびの市

ベジ価値UPキャンペーン
  • 2023年02月27日

    宮崎県えびの市の農家・本坊照夫(もとぼう・てるお)さん(72)。散布するときに農薬を吸い込んで体調を崩したことがきっかけで農薬や化学肥料を使うのをやめ、その後40年間有機栽培で作物を育てています。いま化学肥料の価格が高騰する中で、本坊さんが作る「地域資源を使った有機肥料」が注目を集めています。いったいどんなものが材料になっているのでしょうか? アナウンサー・内藤雄介

    県内有数の農業のまち、えびの市です。本坊さんはおよそ13ヘクタールの広さで、年間50種類ほどの野菜と米を作っています。

    注文殺到の有機野菜

    有機栽培の野菜を求めてSNSを通じて全国から注文があり、月間800~1000箱を出荷しています。北海道からも注文があるそうですよ。

    積まれた野菜入りの箱
    出荷を待つ野菜たち

    味の決め手が明らかに

    本坊さんが野菜の味のカギとなるものを見せてくれました。山の中を進んでいくと・・・。

    手作りのたい肥が山と積まれた堆肥舎(たいひしゃ)が!東京ドーム2.5個分の農地にまく分を自ら生産していているほか、そのたい肥の良さが評判を呼び、販売も手掛けています。

    重機で上下をひっくり返すこの作業を「切り返し」といいます。たい肥をかき回し空気を入れることで発酵を促進させます。その過程で発熱するため、このような湯気が上がるんです!

    納得できるたい肥ができるまでに35年かかった!と話す本坊さん。ベースとなっているのは牛糞で、これは一般的なたい肥と大差ありません。しかしそこに、オリジナルのいろいろな材料が混ぜ込まれているといいます。

    これが“本坊流”たい肥のもと!

    材料探しに同行させてもらいました。まず見せてくれたのはこちらのキノコ。でも大事なのはキノコではなく、本坊さんの後ろのトラックの荷台にあるもの。

    これ実は、キノコ農家が栽培に使っていた菌床です。下の写真の赤丸部分、キノコが植わっているところ(種菌を接種する培地)です。使い終えたあとの菌床を譲りうけているのです。

    しかし、これをそのまま混ぜ込むのではありません。まずはいったん、畜産農家が乾燥させて牛舎に敷き詰めます。牛の寝床を整えるためです。一般的に敷料は「おがくず」を使うことが多いのですが、菌床でもほぼ同様の環境ができるそうです。

    本坊さんは、敷料として牛たちの廃棄物が混ざった「菌床」をたい肥のベースにしているんです。本来捨てられるはずだったキノコの菌床が牛舎で再利用され、さらには堆肥へ。地域資源が見事に活用されています。

    他にはこんなものも混ぜられています。稲のもみ殻、刈り取った竹から作ったパウダーなど、どれも地域で得られるものばかり。

    さらに!おととしから新たに加えたものがあります。それがこちら!カニの殻です。

    福岡県久留米市の水産加工業者から、いわば廃棄されるはずだったごみをタダでもらって加えているんです。本坊さんはこうしたものが加わることによって、たい肥の発酵が活発になったり、土の中の微生物の活動が促されたりすると考えています。

    険しかった開発の道のり

    いまやオリジナルのたい肥で全国から野菜の注文が来るまでになった本坊さんですが、ここまで来るのには苦労があったといいます。思うようなたい肥ができなかった時代が長く、せっかく植えたコメが害虫や病気で全滅したこともありました。
    納得いくような野菜がなかなかできず、生活は苦しくなる一方。妻の千代子さんは、一枚35円の揚げ豆腐すら、買いたくても買えないくらい追い込まれたこともあったと振り返ります。

    本坊照夫さんと、妻の千代子さん

    千代子さん

    「生活がどうしようもなく苦しい時もありました。でも夫がとにかく良い土づくりに一生懸命だったので、それを支えたいと頑張ってきました。いま、ようやく夫のやってきたことが報われる時代になって、私もとても嬉しく思っています」。

    最近では、本坊さんの元で農業を学びたいという地元の若い人たちも出てきました。本坊さんは自分の農法をもっと多くの人に伝えていきたいといいます。そして「自分と同じ苦労をさせたくない」と、自らが35年かけた土づくりのノウハウを惜しみなく人に伝えています。

    左から北原悠希さんと北原政二さん ともに26歳です

    地域に広がる資源の有効活用

    使われていない資源を活用した肥料づくりは、広がりを見せています。小林市須木の夏木政和(なつき・まさかず)さん(73)です。本坊さんからたい肥を買って野菜を育てているうちに、その肥料のあまりの力強さに感銘を受け、自分でも肥料を作りはじめました。

    夏木さんが作っているのは「腐葉土」。小林市須木といえば、栗が有名です。

    夏木さんはこの栗の枝を選定してチップにし、1年寝かせたものを畑にまいています。「資源を無駄にしないことが私の喜びです」と夏木さんは語ります。

    肥料の国産化が真剣に議論される時代

    今月(2023年2月)、農林水産省は国内のたい肥などの活用に向けた協議会を設立しました。
    その背景には化学肥料の原料の高騰があります。主な原料であるリン酸アンモニウムや塩化カリウムなどは、ほぼ全量を海外に依存していますが、ウクライナ侵攻などの影響で輸入価格は上昇しています。

    本坊さんは、こうした状況や、国が「みどりの食料システム戦略」を打ち出したことで、ようやく自分のやってきたことが間違っていなかったと実感するようになりました。

    目標は有機農業の市づくり

    本坊さんに今後の夢を聞きました。

    「えびの市を有機農業のまちにしたい。えびの市は畜産が盛んなので、牛ふん以外にも使われていない鶏や豚のふんなどの畜産資源がたくさんあります。これをうまいこと生かしてもっとすごいたい肥を作りたい。そのやり方を次の世代に伝えていって、永続的にえびの市が存続できるようなまちづくりをしていきたい」。

    えびの市を有機農業のまちに
    左 筆者(内藤雄介) 右 本坊照夫さん

    取材を終えて、本坊さんから聞いたこんな言葉が印象に残りました。
    「農業の基本は土づくり。元気な土から、元気な野菜が育ち、それを食べる地元の人が元気になる。えびの市がそういったまちになれば全国からえびの市に人がやってくる。野菜作りが地域の活性化にもつながるなんて最高じゃないですか」。
    生き生きと話す本坊さんを見て、信念をもって何かに取り組むことの大切さを改めて学ばせていただきました。

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      • 内藤 雄介

        NHK宮崎 アナウンサー

        内藤 雄介

        2002年入局。静岡-岡山-神戸-広島-東京アナウンス室で勤務。趣味は走ることと日本茶を飲むこと。現在、宮崎暮らしを満喫中!

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