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大きな木を切りたい!林業を目指す19歳

  • 2022年12月26日

生産量全国1位 一方の悩み「担い手不足」

31年連続日本一になっている、宮崎県の杉の丸太の生産量。
その杉を育てる林業は、県を代表する地場産業です。

一方、その林業を支える担い手の不足が課題となっています。

昭和50年には8400人ほどいた県内の林業従事者。令和2年には2400人ほどにまで減少。
下げ止まりはしているものの、およそ50年で林業に携わる人は大幅に少なくなりました。

県が設立した「みやざき林業大学校」

美郷町にある「みやざき林業大学校」

そんな中、県が平成31年4月に開校したのが、美郷町にある「みやざき林業大学校」。
令和3年までに61人の修了生を輩出、林業の即戦力を育成しています。

今年度の生徒は21名。1年かけ、座学と実習を行い、必要な知識や技能を学びます。

みやざき林業大学校の学生たち

伐採に挑む 19歳の女子学生

橋谷万緒さん(19)

木が大好きという、橋谷万緒さん(19)。都城出身です。
高校の職業実習をきっかけに林業に興味を持ち、今年、入学しました。

今目標にしているのは、”一人で”木を伐採すること。
重さ5.5キロのチェーンソーを、硬い木の中心まで差し込む腕の力がないと、
木を切ることはできません。

橋谷さんが伐採する木

橋谷さんがこの日切るように指示されたのは、同級生が切っているものより2まわり近く細い木。
にもかかわらず、最後の段階で木を切り倒すことができませんでした。
原因は、木の芯までチェーンソーを入れる力がなかったこと。

指導教官に代わってもらい、ようやく伐採することができました。

橋谷さんの代わりに伐採する指導教官
橋谷さん

とても悔しかったです。
自分で切ることができると思ったけど、先生に代わってもらって。

命のリスクを伴う現場で 見守る指導教官 

指導教官:甲斐良一さん

橋谷さんの指導教官、甲斐良一さんです。
林業大学校の開講準備から現在まで、学生の育成をけん引してきました。
甲斐さんが特に気をつかうのは、伐採などを行う、現場での実習です。

県内の林業の現場では、今年(2022年)10月までに、77件の事故が発生。
5名が亡くなっています。甲斐さんは、実習の際は、生徒たちの安全を確保しながら、
指導にあたるといいます。

甲斐さん

一つ一つの機械の使いかたをしっかり覚えてもらえるよう、しっかり指導していきたいと思っていますね。伐採などの現場での実習は、ちょっとしたことで大きな怪我につながるので、とても気をつけて指導をしています。

見守られながらもう一度 ”一人で”伐採に挑む

指導教官に見守られながら、もう一度切るチャンスを得た橋谷さん。
次は足をしっかりと地につけ、チェーンソーを構え、木に向かいます。

決まった方向に倒れるように微調整しながら、チェーンソーの刃をいれていきます。
切り込む幅は、短くても長くてもいけません。木の太さに合わせ、自分の目で確かめながら、
切り混む幅を調整することをが求められます。この幅を間違えると、倒れる方向が変わってしまう、
繊細な作業です。

伐採するためのチェーンソー

今回は一人で伐採できました。ちょっと橋谷さんも嬉しそうです。

木を切り終えた橋谷さん

今までなかなか切れなかったから、満足しています。今までで一番大きな木でした。

「次はもっと大きな木を切りたい」そんな思いを胸に、毎日足や腕の筋トレを1時間以上かけて、
行っているそう。今後は春の卒業までに、実習や座学を重ねながら就職先を探しています。

林業家になるため…学ぶべき幅広い知識

一口に林業と言えど、さまざまな種類の仕事があります。
そのため橋谷さんを含め、みやざき林業大学校の学生たちは、林業の幅広い知識を学びます。

たとえば特殊な重機や作業車の資格を取得するのもその一つ。
チェーンソーを扱うための資格、伐採した木をつかみ、移動させるための機械(グラップル・スイングヤーダ)を操作する資格など、在校中は最大17種類の資格を取ることができます。

スイングヤーダの操作

そのほか、「狩猟免許(わな猟)」や、⼩型クレーンで荷をつり上げ、
⽔平に運搬するための資格「⼩型移動式クレーン運転」、
フック付きのロープで、⽊材などの荷を掛けたり、外したりするための資格「⽟掛技能」など、
様々な資格が含まれます。

また、木の伐採だけでなく、木を育てるための「造林」の実習もあります。

造林の実習

さらにしいたけの栽培も林業の一つ。原木を切り出し、栽培する実習もあります。

しいたけ栽培の実習

1年をかけ、多くのことを学ぶ学生たち。
春には県の森林組合や、民間の林業関係の企業などに、就職することになっています。
宮崎の林業を支える重要な人材として、今後の活躍に期待です。

  • 佐々木帆南

    宮崎局 ディレクター

    佐々木帆南

    宮崎の森で、木の匂いってこんなにいいものなんだと驚きました。

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