宮崎SDGs 食品ロスを減らして孤食を防ぐ 綾町スマイルカレー
- 2022年12月23日
野菜の価値を上げようという取り組み。今回も自然生態系農業の町・綾町のみなさんの活動です。
野菜作りの過程でどうしても出てしまう、出荷出来ない野菜。そんな捨てられる運命の野菜たちに、地域の交流を生み出す存在としての価値が生まれています。
活動に取り組むボランティア団体「綾スマイルカレー会」の皆さんの1日に密着しました。
これ全部捨てられる野菜!
たくさんの野菜を前に話し合うメンバーのみなさん。「何を作ろうかな~」という声が聞こえてきそうです。実はこの野菜、すべて捨てられてしまうはずだった野菜なんです。
なぜ捨てられるの?
「綾スマイルカレー会」の野菜集めに同行してみます。
朝9時。メンバーの一人、長峰栄子さん(74)は、自分の職場、綾町で採れた農産物や加工品の直売所、「綾手づくりほんものセンター」のバックヤードに向かいました。そこにはたくさんの青々とした野菜が。実は葉物野菜が多く出回る今の時期、大きさを調整するため、育ちすぎた外側の葉を何枚かはがして、廃棄しているそうです。スタッフとして働く長峰さんは、この食品ロスが気になっていました。今回はこの外葉を分けてもらいます。
さらに綾町内を移動して、農業用ハウスを訪ねます。待っていたのはニンジンです。
このニンジンは「有機JAS認証」を受けたものですが、割れてしまったり、形が不ぞろいなものが一定数できてしまうそうです。
ニンジンのほか、大根と白菜を譲ってもらいました。ちょっと曲がってしまった大根。白菜は虫食いの穴が目立つという理由です。綾町の野菜は、自然と共生する形で無農薬や減農薬で作られているものが多いので、どうしても虫食いの穴ができてしまいます。少しの穴なら良いのですが、たくさんあると出荷しにくくなるといいます。それでも農家の方は「味は全く変わりませんよ」といいます。
出荷できない ブロッコリー・ネギ・豚肉
次に訪ねた農家ではブロッコリーを頂きました。
ブロッコリーはちょっと黄色っぽいですよね。緑のプチプチしたところは「花蕾(からい)」といって花のつぼみなんですが、収穫時期を少しでも逃すとその花が開き始めて、黄色くなってきてしまいます。このくらいなら味や食感にはほとんど変化はないそうですが、出荷はできなくなってしまうそうです。
ねぎも生育過程で曲がってしまったものは規格外となり出荷ができません。10本に1本くらいの割合でどうしてもこうしたものができてしまうそうです。「もったいないよね」と農家のみなさん。少しでも使ってもらえるのはありがたいそうです。
さらに、規格外品の豚肉もいただきました。これは、子育てを終えたお母さん豚の肉だそうで、一般的には市場にあまり出回らないものだそうです。
献立づくりスタート
午前10時。この日の会場、立町公民館に野菜が集まりました。ほかのメンバーもそれぞれ持ち寄って、机からはみ出さんばかりの量です。
カレーは必ず作りますが、そこに添える副菜はその日に集まった野菜から考えます。みなさん、とっても楽しそう!
1人暮らしのお年寄りや、育ち盛りのお子さんに食べてもらうことも考えて、食べやすく、栄養たっぷりの献立を考え、作っていきます。いつも約80人分作るそうです。カレーを煮込む鍋はこの大きさ!玉ねぎを炒めるのも一苦労です。
できあがったメニューはこちら
午後5時30分ごろ、今日のメニューが完成しました!
この日は、旬の野菜がたっぷり入った「綾スマイルカレー」に、副菜として、ポテトサラダ・大根とにんじんのなます・白あえ・にんじんシャリシャリの4品です。
この日は農家さんから葉物野菜を沢山いただいたので、お弁当とは別に、レタスはお土産に持ち帰ってもらうことにして、お客さんを待ちます。
お客さんの反応は?
この日一番乗りのお客さんがやってきました。ご近所に住む仲良し3人組。
毎月は来れないけど、(開催してれば)楽しみにしている。1人暮らしだとなかなかカレーは作らないので、レトルトカレーになっちゃう。ボランティアの皆さんは料理が上手なので、カレーも美味しいです。持ち帰りだけど、近所との交流の場ができて、廃棄される野菜も利用されていいことだと思う。
小さい子どもがいるお母さんもやってきました。
初まった3,4年前。話を聞いてすぐ来ました。この子が産まれたばっかりで家事が大変だったので、月に1回、子どもたちとゆっくり夕食の時間がとれるのはとても助かりました。
子どもたち、私のカレーはあんまり食べないんですけど、ここの公民館カレーはすごく楽しみにしていて、おかわりしたいって言って食べてます。捨てられちゃう野菜で作ってるとは思えなくて、すごくおいしいです。
「スマイルカレー」のこれから
コロナの終息が見通せないため、いまはお弁当の形で配っていますが、4年前にこの活動を始めたときは、公民館に集まったみんなでカレーを食べていました。
(※取材後の2023年7月から町内の公民館での会食が再開されました。)
代表の長友順子さん(75)は、食べている人たちの笑顔が見られるその時が戻ってきてほしいと願っています。今後の目標を伺いました。
子育てが忙しい親御さんだったり、お年寄りだったりの憩いの場になればいいなとも思っています。地域のために住民同士が交流を図れる場所にしていきたいですね。
廃棄野菜に、地域交流の要という新しい価値を見出した長友さんたち。「綾スマイルカレー会」の取り組みは続きます。
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