宮崎 災害 防災 | 忘れられた!?明治の竜巻被害
- 2022年11月21日
宮崎小学校に残る 災害を"今"に伝える石碑
県内で起きた過去の災害を振り返り、これからの備えにつなげようという「宮崎県災害アーカイブ」
今回ご紹介するのは、宮崎市の宮崎小学校に残っているある石碑です。
この石碑について調べてみると、宮崎県の人々にとって、
切っても切り離せない、ある災害のことがわかってきました。
小学校のグラウンドの片隅にある、その石碑。
全部漢字で書かれていて。その内容は何となくしかわかりません。
学校に通う生徒たちに、石碑について聞いてみました。
あの石碑、いつからあるか知ってる?
小学生
「知りません」
「よくわからない石像」
「地震で亡くなった人の慰霊塔?」
石碑の由来はあまり知られていないようです。
そこで、今年の5月にこの石碑の調査を行った気象予報士・栗原ちひろさんに聞きました。
防災士としても活動する栗原さん。石碑をはじめ、県内の古い災害の痕跡を調査。
防災に活かす取り組みを行っています。
この石碑は何の石碑なんでしょうか?
はい、こちらは明治14年に起こった竜巻災害によって校舎が倒壊して16名の児童が犠牲になった、そういった悲しい出来事を伝える石碑です。
およそ140年前の竜巻の被害を今に伝えるこの「宮崎小学校招魂碑」。
栗原さんによると、竜巻の被害を記した石碑は全国的にも珍しいのだそうです。
栗原さんと当時の資料は残っていないか学校の資料室をたずねました。
すると、学校の歴史をまとめた巻物を発見しました。校舎を襲う竜巻を描いた水彩画です。
そこには、当時の生々しい状況も記されていました。
天中真っ赤となり
1本の竜巻があっという間に
校舎1棟のうち4分の1を残し
倒壊せしめたという。
さらに、被災当時、小学生だった子どもたちが
慰霊祭にあわせ再び集まった記念写真も発見しました。
記録によると、戦前までは慰霊祭などが行われていたようですが、時間の経過に伴い、
この悲劇を知る人も少なくなり、竜巻災害の事実を伝えるのは、この石碑のみになりました。
栗原さん
石碑っていうのは私たちが住んでいる地域で過去にどんな災害が起きたのか、
そしてどんな悲しい出来事があったのか、
そこからどのようにして復興してきたかと言うことを伝えてくれていると思います。
石碑からのメッセージを私たちが受け取って備えようって言うことをしていかないといけないんだなって思います。
宮崎県の竜巻発生数は全国で4番目
日本では年間どのくらいの竜巻が発生しているのか…それは年平均57件。
なかでも宮崎県は、日本で4番目に竜巻の発生が多い県です。
それは、なぜか。宮崎地方気象台の予報官・岩切等さんをたずねました。
これは1961年から2019年までに竜巻が発生した分布図になります。
宮崎県は沿岸部を中心に、竜巻が発生していることがわかると思います。
長い海岸線と広い平野が広がる宮崎県の沿岸部。
海から流れ込んだ風が陸地にぶつかり、竜巻のもととなる渦を発生しやすい地形だと言われています。
さらに、県内で竜巻が発生しやすい条件もあります。
竜巻は1年中起きるんですが、特に台風に伴う竜巻が、宮崎県では多いです。
台風は9月くらいをピークに一番接近・上陸する過去の統計もありますから、
当然竜巻の発生数確認数も多くなります。
延岡市で18人が負傷、500棟以上の建物に被害が出た2019年9月の竜巻。
この時、宮崎からは離れてはいましたが、台風が九州の西を北上していました。
さらに、3人の死者を出した2006年9月の竜巻も、台風が東シナ海を北上する最中に発生したものでした。そして、この竜巻。夏だけではなく冬も注意が必要でなんです。
これは月別の竜巻確認数を示したグラフです。9月をピークに夏場に多く発生していますが、
11月、12月の発生件数も少なくありません。
宮崎でも平成3年11月、日南市で竜巻が発生し、5人のけが人がでるなど被害がありました。
竜巻の備えはどうしたら良いの?
宮崎の人たちにとって、身近に起こりうる災害、それが竜巻です。
過去の災害を振り返り、油断することなく、備えを高める必要があります。
実は、竜巻の進む速度は時速90kmにもなると言われており、
なるべく早く”予兆”に気づくことが大事です。例えば…
①真っ黒い雲が近づいてくる・急に冷たい風が吹く
②突然、ひょうや雨が降る。
③気圧が下がり、キーンと耳鳴りがする
などが、竜巻の予兆と言われています。
では、竜巻が実際に来た場合どうしたらいいでしょうか。
屋外⇒プレハブなどではなく、コンクリートなどでできた頑丈な建物に避難してください。
屋内⇒窓がなく頑丈なトイレやお風呂に逃げ込むとより安全です。
みなさんの身の回りにも、こうした過去の災害を伝えるものがあるかもしれません。
ぜひ、探して、防災に役立ててほしいと思います。
私は8月に宮崎に異動してきたのですが、住む場所が変われば、身近な災害の種類も変わります。今回ご紹介した石碑のように、こうした過去の災害を伝えるものは身の回りにないか探し、防災に役立ててほしいと思います。