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絶滅危惧種!?宮崎市に”豆腐屋”は何軒ある?

  • 2022年11月21日

視聴者の疑問に答える「てげ探」。番組に質問が寄せられました。

子どものころ、近くに豆腐屋があり、ラッパを吹きながらおじいちゃんが朝早く売りに来ていました。
その豆腐は温かく醤油を垂らして食べるとまあ、おいしいこと。ということで、宮崎市に今でも豆腐屋は何軒あるのでしょうか?

滑川アナ

以前、取材で出来たての豆腐を食べた時、すごくおいしかったのですが、
自宅近くには豆腐店はないですね。

柳原記者

見かけないですよね。私も豆腐店で直接買った記憶がありません。
これを機会に取材してみたいと思い、街で調査してきました。

街で聞き込み調査開始!

まずは、駅前で情報収集。

柳原記者
NHKなんですけど、今お豆腐屋さんを探していまして。

街の声
お豆腐屋さん?この辺にはあんまりないですがね。
私はちょっとわからない。
豆腐屋っていうのは今ないもんね。

手がかりを得られずに苦戦していたところ。

高校生

車が周っていますね。豆腐屋さんの。

柳原記者

どのあたりで周っていましたか?

高校生

東口の方で見ました。

わらにもすがる思いで行ってみると、タクシー運転手の姿が。
早速、聞き込みです。

柳原記者

街のお豆腐屋さんを探していまして、どこにあるかご存じですか?

タクシーの運転手

Jリーガーの伊野波っていう、豆腐屋さんが大島にあるんですど、
そこは有名ですね。伊野波豆腐という軽トラックみたいなやつで販売している。

ついに有力な情報をつかみ、豆腐店が移動販売しているという地域に向かいました。

ようやく見つけたこちらの豆腐店。
週5日、移動販売を行っているそうです。

柳原記者

スーパーで買うお豆腐とは違いますか?

買い物中の女性

んー違いますね。なんて言うのかな?

伊野波専務

味とか?

買い物中の女性

愛情。ねっ!

伊野波専務

愛情もいっぱい詰まっていますよ。

昔はコンビニ並みの数の豆腐屋が!?

豆腐店の現状について詳しく聞こうと、後日、店舗も訪ねました。
1955年創業のこちらの豆腐店では、豆乳をおからと分離させて煮ることで
なめらかさを出す「生絞り製法」にこだわってきました。
今も出来たての豆腐を直接売っています。

購入客

おいしいわね、最高よ!できたての豆腐を食べてご覧なさい。
においがぷんぷんする。大豆の豆の匂いがよくしますよ。

地元出身で元サッカー日本代表の伊野波雅彦選手の親族が
経営する店としても知られていると言います。

柳原記者

伊野波選手も豆腐をよく食べていたんですか?

伊野波専務

食べていましたね。

柳原記者

体にも良いからあの強靱な体は?

伊野波専務

豆腐からだと思います。

宮崎市内に豆腐店がどのぐらいありそうかも尋ねてみました。
返ってきたのは「地域にあった店の多くは姿を消してしまった」という答えでした。
工場で大量生産された豆腐が流通するようになり、価格競争が激しくなったためだと言います。

伊野波専務

食文化で、毎日使う豆腐なので残していきたいと思っていますが、
今ではだいぶ減って。市内だったらどれくらい(残っているん)だろう。

正確な店の数を知ろうと、全国規模の業界団体にも取材しました。

平川理事

データが残っているのが昭和35年に、(全国に)5万軒強あったというふうに聞いています。
5万軒強というと、コンビニ並み、今のコンビニ並なんですけど。
戦後間もないころ、食が十分に行き渡っていない中、動物性の肉とか、そういうのが手に入りにくい中で、植物性のタンパク源としても豆腐っていうのがすごく重宝されたのではないかというふうに思ってます。

しかし、業界団体によると、今や、豆腐の製造業者は全国で5000軒ほどと、
かつての10分の1に減少。県内でも激減し、保健所から製造許可を得ているのは
一昨年の時点で80軒余りだと言います。
市町村別の数までは把握していないそうですが、ヒントをもらいました。

平川理事

おそらく宮崎市内だけであれば、保健所的には把握しているとは思うので
大体教えて頂けるではないかとは思いますね。

厳格な衛生管理が求められ、製造販売にも許可が必要な豆腐店。
その件数は行政なら知っていそうだということが分かりました。

保健所に資料の情報公開を請求し、およそ2週間後、市役所に向かいました。
そして・・・。ようやく豆腐店に関する情報を手に入れることが出来ました。

今回、宮崎市内で豆腐の製造許可を受けている事業所の一覧を入手しました。
許可を得た事業所は10か所あることが分かりましたが、実際に稼働しているのかや、
昔の豆腐店と同様に店頭で販売しているのかが気になったため、1軒ずつ電話で確認しました。
その結果がこちらです。

宮崎市内にはスーパーの直営などを除くと、7軒の豆腐店があることが確認できました。
取材に対し、「絶滅危惧種になった」と寂しげに話す店主もいました。

こうした状況について、豆腐を使った料理を出している
郷土料理店からは残念がる声も聞かれました。

地元の素材にこだわり、名物料理の冷や汁を提供するこのお店も
「地域の豆腐店は欠かせない存在だ」と話します。

前田省子さん
郷土料理店
おかみ

やっぱり地元のものを使って地産地消でという気持ちでやっています。
私たちも手作業のお仕事をしているので、そういうものをお客さんに食べて頂きたいです。

逆境に負けない!若者が営む豆腐屋

こうした厳しい環境の中であえて起業し、豆腐店を始める
若者もいると聞き、取材してきました。

去年12月、都城市に店を構えた前田 勇樹さんです。
以前、豆腐工場で責任者をしていましたが、個性のある豆腐を作りたいと独立しました。
目指すのは大量生産の豆腐との差別化。その日の湿度や大豆の状態に応じ、
水やにがりの量などを細かく調節しながら作っています。

前田勇樹さん

その日によって豆乳の濃さも変わってくるので、
手作業だと調整ができます。

原料の大豆にもこだわっています。
地元の食品メーカーや宮崎大学の研究者などが共同でブランド化した
都城市の在来種「みやだいず」を使っています。

前田勇樹さん

良さは香りと甘みが強いですね。
やっぱり都城の大豆と言うことで、地域に根付いた大豆を
使えたらいいなということで使っていますね。

 

地元産の希少な大豆を使った豆腐は1丁250円。
スーパーや量販店などの豆腐より割高ですが、
出来たての豆腐を求めて早朝から買いに来る客もいます。

買い物客

気持ち的になんか落ち着くというかね。
作っているところで買うというのが一番いいね。

 

前田勇樹さん

地域の人と顔を合わせて、コミュニケーションとりながら販売できるのが
強みですね。この地域に根づいたものとして、ずっと長らく続けていけたらなと思いますね。

私も正直、これまで豆腐はどれを食べてもそれほど大きな違いはないと思っていましたが、
今回の取材で出来たての手作り豆腐を食べてみて、大豆の香りが強く甘みが感じられるものなど、
豆腐にも個性があってほんとうにおいしいと感じました。

大豆や燃料の価格高騰もあり、経営環境が厳しさを増す中、
今後は個性豊かな街の豆腐店をささやかながら応援したいなと思いました。

  • 柳原 章人

    宮崎コンテンツセンター

    柳原 章人

    前任地は上海支局。日本語(関西弁)、英語、中国語の3か国語を話せます。

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