ページの本文へ

NHK宮崎WEB特集

  1. NHK宮崎
  2. 宮崎WEB特集
  3. 【期待と不安】小林とえびの高原を結ぶ県道1号線が限定解除へ

【期待と不安】小林とえびの高原を結ぶ県道1号線が限定解除へ

  • 2022年11月10日

【小林市とえびの高原を結ぶ観光の大動脈はどうなる?】
宮崎県は4年前に噴火した「硫黄山」近くの県道1号線の通行止めを限定的に解除すると発表しました。
県内の周遊や鹿児島からの観光ルートの確保で期待の声があがる一方、防災の専門家からは懸念も示されています。取材した記者が解説します。

限定的な通行止め解除

硫黄山では噴火のあと、火口域の外側の県道1号線のすぐそばからも活発な噴気が上がるようになっていたことから、宮崎県は噴気孔をう回する新たなルートの整備を進めてきました。実際に噴気孔ができたのは硫黄山の山頂から500m離れた赤い丸の場所。県は噴気孔をう回する新たなルート(青い線)を整備しました。

赤い丸が噴気孔。青い線がう回ルート

先月、噴気を避けるため、湾曲していた道路を直線でつなげるルートの整備が終わり、県は今後、火山ガスの濃度が基準を上回らなければ今月26日に4年9か月ぶりに通行止めを解除すると発表しました。

ただし、火山ガスへの警戒などから当面のあいだ通行できるのは、土曜日と日曜日の午前9時から午後5時の間のみとし、夜間や平日は通行止めが続きます。また、通行できるのは屋根がついた車に限られ、オートバイや自転車、歩行者は通れません。途中での駐停車も認めないなど、変則的な運用となります。

周遊ルートの開通

小林市から直接、えびの高原に上がれるようになることで、宮崎市などからえびの高原を訪れやすくなることはもちろん、鹿児島から訪れた人が小林市側に下って宮崎県内を観光してくれることなどが期待されています。

観光客からは「県道1号線」の再開を歓迎する声が聞かれました。

(宮崎市からの観光客)通れるようになると便利がいいですわ。観光客も増えると思います。
(鹿児島からの観光客)不動池のほうを通っていく景色がいいなと思って。来るたびに思うけど通れないから寂しいなと思っていた。

須田淳さん(えびのエコミュージアムセンター)
宮崎県や鹿児島県の観光地が繋がることになるので、より充実した旅行になると思う。(アクセスが悪くて)今まで足が遠のいていた方々にもより近く感じられるようになって、えびの高原が今後も多くの方でにぎわうのかなと期待している。

専門家からは懸念の声も

今回の再開は▼土日の日中のみ、▼屋根のついた車だけ という変則的な運用ということもあり、火山防災の専門家からは懸念の声もあがっています。

井村 隆介 准教授(鹿児島大学)
全体として見れば県道1号線が、噴気地帯を横切っていることや火口域のすぐ近くを道路が通っているという状況に変わりはない。

火山ガスの濃度が上がった場合や、火山性地震が増えるなどして噴火警戒レベルが「2」以上に引き上げられると県道は通行できなくなりますが、本当に噴火の前にレベルの引き上げができるのか、その保証はありません。

実際に、8年前(2014年)の御嶽山の噴火では噴火警戒レベル「1」のまま突然、噴火が発生し、登山者63人が犠牲になったという例もあります。

井村 隆介 准教授(鹿児島大学)
土日に限って通行を認め観光客を集めるのは防災の観点からはあまり良いやり方とは思えない。『行政が通行を認めているから安全』と捉えるのではなく、突然の噴火や火山ガスなどリスクがあることを知った上で通行するかどうか判断してほしい。

宮崎県として観光振興と安全のバランスをギリギリで図った結果と言えますが、県道1号線を利用する私たち自身が自らの安全をしっかりと確保する必要があると感じます。

  • 松井嚴一郎

    宮崎局・記者

    松井嚴一郎

    宮崎生活6年目。

ページトップに戻る