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宮崎の高校生が日本一!五ヶ瀬で始まる新たな防災・減災とは?

  • 2022年10月31日

日本地理学会のポスターコンクールで、宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校が最優秀賞に選ばれました。研究のテーマは南海トラフ巨大地震で予想される県沿岸部の津波防災です。
日本一に輝いた宮崎の高校生たちの研究をご紹介します。

ポスターコンクールって?

コンクールは地理の専門家などで作る「日本地理学会」が半年に一回開催しているものです。今回は全国から23の高校の個人やグループから応募がありました。

審査ではまず高校生たちが地理について独自に調べたことをポスターにまとめ、その内容をインターネット上で生徒自身が発表します。審査員の専門家たちはそれらの動画をみて、内容を判定します。五ヶ瀬中等教育学校からは高校2年生の4人がグループで応募し、地図上にさまざまな情報を重ねて分析するGIS(Geographic Information System=地理情報システム)を使った調査結果を発表しました。

ポスターには宮崎の津波の浸水が予想されるおよそ700地点を分析し、現地を調査した結果、延岡市と日向市の2つの地区では高齢者などが津波が到達する前に避難することが難しい現状が記されています。こうした内容が評価され、東京の高校とともに、最優秀賞にあたる「会長賞」を受賞しました。

GIS(地理情報システム)って何?

分析に欠かせないのが宮崎県が独自に開発した「ひなたGIS」です。「GIS」とは交通量や人口など、さまざまなデジタルデータを電子地図上に重ねて分析する手法で、身近で使われているところだと、代表例はカーナビがわかりやすいです。

たとえば、地図上に浸水の深さごとに色分けした津波浸水想定エリアを反映させ、そこに避難場所のデータを重ねると、避難場所が津波で浸水するかが一目でわかります。これに人口データを重ねれば、人口の増減や高齢化率も把握でき、避難場所に到達するまでに必要な時間を把握することもできます。

津波浸水想定エリアの深さを色分け
浸水の深さに避難場所を重ねる

こうして分析を進めることで、逃げ遅れが懸念される高齢者が極端に多い地域や避難ルートが限定される場所が浮かび上がりました。さらに生徒たちはこうした現場に直接出向いて、避難ルートの確認や住民への聞き取り調査も行った結果、高齢者や障がいのある人が津波の到達までに避難することが難しい場所があることや、住民と行政との間で想定していた避難場所に食い違いがあることが分かりました。日本一に選ばれたポスターには、こうした調査結果が盛り込まれています。

台風での山間部防災も

さらに生徒たちは今後は津波だけでなく、台風14号でも大きな被害が出た山間部の防災についても研究を進めたいとしています。

坂元最さん(五ヶ瀬中等教育学校)
宮崎県はことしの9月に台風の被害を受けていて、自分たちが住んでいる町もスキー場が閉鎖されたり学校が被害を受けたりしていて、今後は山間部の土砂崩れや台風などの被害にも焦点を当てて研究を進めていきたいと思います

生徒たちの調査結果をまとめたポスターは、日本地理学会のホームページで公開されていて自由にみることができます。

学校が山奥⁉五ヶ瀬中等教育学校って?

コンクールで最優秀を受賞した五ヶ瀬中等教育学校は県立の中高一貫校で、四方を山に囲まれた場所に立地しています。全寮制で、生徒たちは宮崎の各地から集まってきており、大自然の中にいながら、最先端の教育を受けることができる学校です。

宮崎の中心部から車で約2時間20分

ポスターコンクールに関連する「地理」を教えているのは上田聖矢先生。2022年度から必修化された「地理総合」で活用が期待されるGISを独学で学び、5年以上前から授業に取り入れていた先生です。

このGISを取り入れた授業では、去年7月に静岡県熱海市で起きた土石流災害の直後に、現場の3D画像を生徒たちに見せ、土地のデータと地図を重ね合わせていきながら、最終的には身近な五ヶ瀬町に潜む災害リスクがあることを生徒たちといっしょに考えたりをしました。

宮崎の防災・減災

坂元最さん(五ヶ瀬中等教育学校)
今回のコンクールはなんとか4人で作り上げることができたので、会長賞を受賞できてとてもうれしいです。日頃から避難だとか、災害だとかについて、あまり考えたことが無いという人も多くいたので、こういうルートで避難しようかとか、考えたりできる機会になればと思います。

宮崎では地震や水害、さまざまな災害が起きうる恐れがあります。高校生たちのこうした取り組みを地域に還元し、データをうまく活用することが必要です。私たち自身も、自分が住む地域にどのようなリスクがあるのか、ふだんから意識しておくことが大切です。

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