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変わる名門 旭化成柔道部 “必要な部”であるために 

  • 2022年10月20日

10月、体育の日に延岡市で開かれた市民運動会。

そこにことし初めて参加したのが、旭化成の柔道部。団体で日本一18回の名門です。
普段自分たちが取り入れているトレーニングメニューを子どもたちと一緒に楽しむ、
屈強な選手たち。

❝柔道が好きな人たち”以外と接点を持つのは、
創部70年で初の試みとのことですが、何があったんでしょうか?

延岡市内に練習拠点を構える、旭化成柔道部。

「バーン!!!」
 

道場の外まで鳴り響く、畳を打ち付ける轟音。
柔和なムードから一変、選手たちは、厳しい稽古を続けています。

今回部に参加を呼び掛けたのは、5年前にフィジカルコーチとして招かれた、守田誠さんです。
これまで、柔道・競泳などさまざまな競技の選手のトレーニングを担当。
オリンピックでは、4大会連続で“教え子”がメダリストになりました。

しかし過去には、自身が所属していた企業のスポーツ部が”実績を残しながらも廃部”になるのを、何度も目の当たりにしてきました。

部が「市民との関わりが薄い」ことを知り、「地元にファンを作らないことには、会社からも“必要ない”と判断されてしまう」と考えるようになったのだそうです。
 

本当に“ただスポーツをやっていればいい”という時代ではなくなったんだなと。“勝てばいい”“結果を残せばいい”という形では、これからは生き残っていけない。社会の中で認めてもらえないと。

そこで守田さんは、”柔道に触れたことのない”子供たちを、
道場に招くプロジェクトを立ち上げました。

飾り付けも体験プログラムも、選手たちが考えます。準備の様子を覗いてみると・・・
紙花ひとつ作るにも、「自分、不器用なんで…」と悪戦苦闘しています。

そこには、キャプテン・王子谷剛志選手の姿も。
世界大会で2度の優勝を誇る部の中心選手です。

飾り付けする王子谷選手

これまで子どもと接する機会は、「柔道教室くらいしかなかった」そうです。
 

いままでは結果を求めていて、視野が狭くなるところがあって、結果的に、
自分自身だめだったという部分もあったので。体験であったりこういう交流で、“土台の部分”を作っていきたい。

迎えたプロジェクト当日。
道場に、地元の保育園児たちがやってきました。もちろん柔道を見るのは初めてです。

選手たちが飾った風船に 喜ぶ地元の保育園児

早速はしゃぐ園児たち。
選手たちの思惑通りに、飾りつけでは気を引けた様子です。ところが・・・。

選手たちが❝自慢の技❞を実演してみせたとたん、その音、迫力、大きな選手たちの姿に、
笑顔が消えちゃいました。中には、泣いてしまう子も。

キャプテンの王子谷選手、すかさず駆け寄ってなだめます。

よかった…なんとか泣き止んでくれました。

初めて見るとやはり、”威圧感”や”恐怖感”を持たれてしまうので、
親しみを持ってもらえるように。❝応援される❞柔道部でありたい。
応援される部が結果を出すことに意味があると思っています。

少しずつでも延岡の人たちとの接点を作っていきたいと、新たな一歩を踏み出した旭化成柔道部。この先は、まず来年度、市内の中学校の体育の授業に選手たちを派遣することも計画しているとのこと。今後どんなつながりが生まれるのか、取材を続けたいと思います。 

  • 佐藤壮平

    宮崎放送局

    佐藤壮平

    この夏、異動で北海道から宮崎にやってきました!

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