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宮崎で大量発生のガ「キオビエダシャク」驚きの生態に迫る

  • 2022年08月29日

(2022年7月の取材をもとに記事を構成しています)

(投稿者)野村悦子さん(宮崎市)
庭木が「キオビエダシャク」の被害を受けました(涙)この被害はいつまで続くの?

視聴者の疑問に答える「てげ探」。今回は宮崎市内で最近見かけるようになった「キオビエダシャク」と呼ばれる<ガ>の話題。投稿者は生け垣のイヌマキが食害にあってしまったそうです。なぜ大量発生しているのか?いつまで被害は続くのか?根本的な対策は?などを徹底取材しました。

被害にあったイヌマキの木

宮崎市にある投稿者・野村さんのご自宅に伺って庭木として育てているイヌマキ、通称「ヒトツバ」の被害を見せていただきました。

7月上旬に「キオビエダシャク」の幼虫が大量発生して、手前側の葉が食べつくされ、むき出しになった枝をすべて切り落としました。元々は奥側のように手前もふさふさに生えていましたが、現在は手前から見ると殺風景な感じになっています。

イヌマキの特徴は?

「キオビエダシャク」の幼虫はイヌマキの葉が大好物です。しかし、イヌマキの葉には毒があり、ふつうの虫は食べることができません。そのため宮崎では害虫がつきづらい庭木として重宝されてきました。そんな葉っぱを「キオビエダシャク」はなぜ食べることができるのでしょうか?

新谷喜紀教授(南九州大学・昆虫生態学研究室)は、「キオビエダシャク」の幼虫についてイヌマキの毒素を毒と感じない、解毒するか体内に毒を蓄えられるような仕組みを作ったからだと考えられると答えます。さらに芽の根元まで食べ尽くすので、新しい葉っぱが出てこなくなる被害も発生し、造園業者には、例年にないほどの駆除の問い合わせが殺到しているといいます。

「キオビエダシャク」が増えるメカニズム

亜熱帯・東南アジア原産の「キオビエダシャク」はイヌマキの葉が大好物。そして、そのイヌマキには毒があってほかの虫が食べないので、エサを独り占めできます。どんどん食べて体に毒をため込むことで鳥などから食べられない。つまり天敵から狙われなくなるのです。

では鳥はどうして見た目だけで、毒をもっていると分かるのか、先ほどの新谷教授に伺いました。

新谷喜紀教授(南九州大学・昆虫生態学研究室)
毒を持っている生物はだいたい色が派手です。例えばハチは黄色と黒で目立ちます。1回ハチに刺されたことがある鳥はもう一生経験したくない思いをしていますので、こういう色を見たら、トラウマがよみがえってきて、食べたり・襲ったりしなくなるのだと思います。

幼虫が食べられることなく成虫となって大量の卵を産み、1か月半から2か月後にはふ化して、また成虫となって産卵する。これを1年間繰り返すことで現在の大量発生につながっています。しかし、例年は亜熱帯の虫なので寒さに弱くて、毎年冬になると多くの個体が死んでグッと数が減るといいますが、今年は何らかの理由で越冬できた個体や卵が多かったのだと言います。

新谷教授は、越冬できた理由は分からないとしつつ、長期的な視点で考えると、地球の温暖化が何らかの影響を与えているのではないかと言います。

新谷喜紀教授(南九州大学・昆虫生態学研究室)
本来の生息場所ではない九州南部に自力で飛んできたのか、イヌマキの苗木にくっついて入ってきたのか分かりませんが、温暖化によって東南アジアよりも寒い九州南部に入りこんでも住むことができた。人が環境を変えたせいで、こういった外来種問題が起こっていると考えられます。今後はこういった被害が毎年発生するものだと思って、最適な駆除をしながら、庭木のイヌマキを守ることが大事だと思います。

動き出した自治会。その対策とは?

投稿を寄せてくれた野村さんが住む地域では、自治会をあげて対策に取り組んでいます。自治会長が中心となって「キオビエダシャク」の情報を呼びかけるビラを配っています。地域で卵や幼虫を見かけたら、すぐに情報を共有して早期の駆除につなげることが狙いです。

個人での対策には限界があるので、こうして地域で力あわせて早め早めに手を打つことは大事になります。また、薬剤を広範囲にまくには機材も必要ですが、自治体によっては、ご近所などのグループ単位で貸し出しを行っているところもあります。

新谷教授によると涼しくなる秋に、また大量発生する可能性があるということですので、こうした対策も上手に活用して早めに駆除を進めていきましょう。

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