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【まとめ】宮崎 串間市民病院の運転資金12億円を違法借り入れ

  • 2022年06月29日

串間市が市民病院の運転資金として金融機関から借り入れていたおよそ12億円が地方財政法に違反する借金だった問題。これまでの経緯や今後の対応などを詳しく解説します。

なぜ12億円の借り入れが違法だったのか?

地方財政法に違反すると指摘されたのは、串間市民病院の運転資金などとして串間市が2021年度までの5年間に行ったおよそ12億円の借り入れです。
大半の返済期間が10年となっており、年度をまたぐ借金は「地方債の起債」にあたりますが、串間市は地方財政法が定める県との協議を行わず、同意も得ていませんでした。そもそも総務省の基準では運転資金の借り入れは「地方債の起債」の理由として認められておらず、県は串間市に対し、返済済みの分を除くおよそ9億円を早急に金融機関に返済し、法律違反の状態を是正するよう求めています。

【6月7日】返済は市の貯金「財政調整基金」を取り崩す予定

返済にあたっては市の貯金にあたる「財政調整基金」を充てるとみられています。串間市の基金の残高は今年度末の見込みで13億円で、返済後は4億円ほどしか残らない計算です。
串間市民病院は病床の稼働率が低下し、9年前から赤字経営が続いていて、最も多い時には1年に3億円を超える赤字を計上していました。本来であれば一般財源で穴埋めをしたり、病院経営の改革を行ったりすべきところを違法な借り入れで問題を先送りしていたことになります。

串間市は6月7日の取材に対し「担当者の認識に誤りがあった」と説明しており、「それ以外はコメントできることはありません」と話しています。

【6月10日】串間市長 市議会で謝罪も詳しい説明はなし

島田俊光市長が10日に開かれた市議会の冒頭で「地方財政法上の不備がある状態になっていることを重く受け止めています。市民に大変な心配をかけ、深くおわび申し上げます」と謝罪し「経営健全化に努め支障のないように取り組んでいきたい」と話しました。

その後「今月中に不備のある状態を解消するため、予算化に向けた準備を進めている」と述べ、市の貯金に当たる「財政調整基金」の大半を取り崩すことになる見通しです。また、市民病院の運営については「経営健全化に努め、運営に支障のないように取り組んでいきたい」と話しました。

今回の問題について、串間市からいまだ詳しい説明はありません。
10日の議会終了後に島田市長に話を聞きましたが「説明のための資料を集めないといけないので、資料を精査しながら検討しているところです。資料ができしだい臨時議会を開いてもらって今月中に結論を出したい」と述べるにとどまりました。

市民からは地域にとって必要な病院との声

70代女性「院長が交代し病院も変わると期待していたのでびっくりしています」

60代男性「担当者の勉強不足だと思います。人のやることなので恥ずかしいですが仕方ない。私も2か月に1回、血圧の薬をもらうために病院に通っていて、地域にとってなくてはならない病院です」

60代女性「串間市に大きな病院は1つしかなく、隣の日南市の病院に行くには時間がかかります。市民病院を残すためにも市は財政についてちゃんと考えてほしい」

市民病院をめぐる不当な借り入れが明らかになりましたが、串間市民からは「地域にとってなくてはならない病院だ」などとして、病院の健全な経営を求める声が聞かれました。

【6月27日】一括返済予算案が串間市議会で可決

串間市は27日臨時の市議会を開き、法律上の不備がある状態を解消するため、市の貯金に当たる財政調整基金を取り崩して9億2060万円を捻出し、当初の予定を繰り上げて一括して返済する予算案を提出し、賛成多数で可決されました。

島田俊光市長は答弁の中で「今回の問題は市民も不安に感じている。不備のある状態を是正した上で、県とも連携して対応していきたい」と述べました。今回の9億円余りは市から病院への「貸し付け」という扱いで、今後10年かけて返済していく計画となっています。
これについて、議員からは赤字が続いている病院が本当に返済していけるのか疑問視する声が出たほか、市民病院は「地方公営企業」に当たるにもかかわらず、いまだに経営健全化計画が示されていないことにも批判の声が相次ぎました。

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