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学校の働き方改革!宮崎の"部活動指導員"の効果と課題

  • 2022年04月28日

(投稿者)都城市・60代男性
「教員の働き方改革について。知り合いが教員で時間外労働や部活動顧問などが負担になっています。教員の仕事量を減らすにはどうすればいいですか。」

学校の先生の働き方改革。昔から休日出勤・時間外業務が多いのが問題になっています。後編は残業の大きな要因となっている部活動の取り組みをお伝えします。「部活動指導員」で残業は減らせるのか、効果と課題を取材しました。

部活動指導員の効果とは?えびの市・飯野中学校

部活動指導員に会うために向かったのはえびの市。飯野中学校の軟式野球部を訪ねました。2020年、部活動指導員に任用された奥拓也さんです。本業は学校の近所のタイヤショップのオーナー。ご自身も2人の息子さんも飯野中の野球部の出身です。

午後4時30分、店の営業中ですがバットを持って中学校に向かいます。4年前から務めていた外部コーチに比べ、指導する時間が増えたと言います。部活動指導員の時給は1,600円で、最大週5日。土日には練習試合の引率を任されることもあります。

部活動指導員の奥拓也さん
学校のほうから強い要望があって部活動指導員になりました。学校の先生たちが仕事が多いので、そこをカバーできないかということで。やっぱり外部(コーチ)だと入れるところに制限があるので、部活動指導員になれば学校生活までしっかりと見ていける。それが部活動の練習にも活きてくると思います。

一方、野球部の監督の阿蘇品先生の姿は職員室にありました。部活動の顧問以外にも、生徒指導を受け持っています。放課後の練習は指導員に任せ、ほかの業務に集中出来るようになったと言います。

野球部監督の阿蘇品先生
今までは学校が終わって部活に出て、部活が終わったあと職員室に帰ってまた仕事だったんですけど、現在はちょっとしたことをやってから部活に出ようとかそういった時間の使い方ができるようになりました。まだ娘が小さいので、娘と過ごす時間を確保できるようになったのは、ものすごくありがたいことだと感じています。

そばで練習を見てくれる部活動指導員に生徒からは「平日に阿蘇品先生が来れない時に来てくださって、ノックやバッティングの指導もしてもらって、自分たちの実力もついてきたと思います」という声もあがっています。

部活動指導員の奥拓也さん
飯野中学校には自分もお世話になったし、息子たち2人も世話になったし、何かしらの形で学校に還元出来ている。それは自分にとっても嬉しいことなので続けていきたい。

そばで練習を見てくれる部活動指導員に生徒たちの信頼も高まり、部活動指導員と顧問の連携が部の活性化に繋がっています。

部活動指導員の導入には人材確保が課題

ただし、現実には部活動指導員はなかなか普及していません。昨年度は126校ある県内の公立中学校のうち、部活動指導員が配置されたのは44校・60名にとどまっています。なぜ配置が進まないのか。NHK宮崎では県内の全市町村の教育委員会にアンケートを実施したところ、多くの市町村からあがったのが「競技を指導できる人材を確保できない」という懸念の声でした。

人材確保という課題を解決するためには、募集の間口を広げる必要があると専門家は指摘します。

まちと学校のみらい 妹尾昌俊さん
1つ目は時給をはじめ処遇面・条件面。勤務条件で本業と調整ができるような兼業・兼職がしやすいような勤務条件になっているかの見直しが必要。
2つ目は部活動指導員にあまりにも技術的な指導力だとか理想を高く求めすぎてないか。まずは生徒の安全管理だとか見守りをきちっとしてくださいと少しハードルを下げた方が部活動指導員のなり手は増えるだろうなと思っています。

さらに、今は部活動指導員を任用するのに学校が持ってる人脈に頼っているという実情があります。しかし、学校の人脈だけだと担い手を見つけるのは難しくなります。県教育委員会は来年度から人材を確保するために、県のスポーツ協会から指導力のある人を紹介してもらう制度を運用したいとして改善を図ろうとしています。

将来的には部活動を「地域移行」する提言案も

部活動指導員に加えて、国はさらに「教員の働き方改革」を加速させようとしています。それがスポーツ庁が示した「休日の中学校の部活動を地域のスポーツクラブや民間事業者のほか保護者会などに段階的に移行していこう」という提言案です。つまり部活動を地域に移行させるというものです。地域の人たちが部活動の運営を担うようになるとこれまでの部活動とは姿が変わってきます。

専門家も部活動の在り方そのものを見直す時期にきていると指摘しています。

まちと学校のみらい 妹尾昌俊さん
保護者ないし社会は教員の頑張りに余りにも頼り過ぎてきた部分があると思います。学校が部活動をやって当たり前、教員がやって当たり前っていう発想をもう少し自由にして、地域で子どもたちの豊かな学びを支えていくという発想に転換することが大事です。生徒の意見はなるべく受け止めつつも、人手も時間も限られているので、できる範囲でやっていくということになると思っています。 

部活動を180度変える。と言うほどの大改革ですが、学校や市町村からは「部活動に対する新たな方針は理解できるが、どのように地域の実情に合わせて実現すればいいのか」という戸惑いの声も多く聞かれました。

こうした中で改革を進めていくためには、私たち一人ひとりが部活動を担っている教員の負担にしっかりと目を向け、改革の必要性を共有することが重要だと感じました。

NHK宮崎では、みなさんの身近な疑問やお悩みをお待ちしています、次回もお楽しみに!身近な疑問・お悩みはこちらから https://www.nhk.or.jp/miyazaki/tegetan/index.html

  • 松本 佳子

    宮崎局・PD

    松本 佳子

    2019年入局

  • 外谷 海人

    宮崎局・PD

    外谷 海人

    2021年入局

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