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茨城の看護師目指す高校生 福島県の被災地で受け取ったもの

東日本大震災13年 現地を学ぶ高校生たち
  • 2024年03月06日

茨城県取手市にある県立高校では毎年、希望する生徒を対象に福島県で震災と原発事故について学ぶ研修を行っています。参加した中には、被災地で活動する看護師になりたいという決意を固めた生徒もいます。
当時の記憶がほとんどない生徒たちが被災地を訪れ何を受け取ったのか、密着取材しました。
(NHK水戸放送局 記者 小野田明)


記憶ない震災学ぶ

茨城県立取手松陽高校は、東日本大震災を自分ごととして考えてもらおうと、震災について学ぶ取り組みを2021年に始めました。毎年冬休みを使って被災地を訪れていて、今年度は1年生から3年生の17人が参加しました。

生徒たちは震災に関する記憶がほとんどないため、被災地を訪れる前にニュースを見たり本を読んだりして事前学習を重ねてきました。

茨城県立取手松陽高校の生徒たち

この日は、震災当時学校に勤務していた元教師の男性から当時の状況を聞きました。

震災当時、取手松陽高校に勤務していた大滝修さん

(取手松陽高校元教師 大滝修さん)
私は2年4組から世界史の授業が終わって渡り通路を歩いているときでした。揺れで立っていられませんでした。体育館への渡り廊下が揺れて、両側から壁が少しずつ崩れていきました。救急車を4台呼び、過呼吸で呼吸できない生徒もいました。

 

震災を学ぶ意味を考える生徒たち

当時は2歳から5歳だった生徒たち。震災からの時間もたつなかで、お互いの考えを出し合いながら自分たちが学ぶ意味も考えます。

生徒

当時は“防災をしないといけない”となっていたのに、十何年たつとそういう意識が薄れてきている感じがします。過去を変えることはできなくても、過去から未来を変えることをしないといけないと思います。

生徒

私の家は農家です。作物の被害もあったという話を父から聞いたので、現状として福島の農家の方々は農作業などどうしているのかという疑問があります。

 


災害支援ナース目指す

この取り組みを通して進路を決めた生徒もいます。1年生の時から参加を続ける3年生の倉持郁香さんは、前回の被災地訪問をきっかけに、災害時に活動する「災害支援ナース」を目指すようになりました。

取手松陽高校3年 倉持郁香さん

(取手松陽高校3年 倉持郁香さん)
小さいころから看護の道に進みたいという思いがありましたが、福島県の伝承館にいった際に、当時の災害支援ナースの方々がひっきりなしに患者さんを運んでいるパネルを見て、人生で最も強い衝撃を受けました。

冬休みに福島県へ

東日本大震災・原子力災害伝承館

2023年12月22日。倉持さんたちは復興を目指す福島県へと向かいました。被災地を初めて訪れるという生徒も多く、東日本大震災・原子力災害伝承館では展示物を見たり、職員の説明を聞いたりして、自分たちが知らない震災と向き合います。
 

津波で流されたポスト

(伝承館職員)
津波によって流されてしまったポストは約100キロの重さがあります。
基礎ごと流されてしまったわけで津波の恐ろしさを物語っています。

災害支援ナース 目指すきっかけ

多くの展示があるなかで、倉持さんはある写真の前で足を止めました。「災害支援ナース」を目指すきっかけとなった写真です。

災害支援ナース目指すきっかけの展示
災害支援ナース目指す 倉持郁香さん 

(倉持郁香さん)
目の前の患者さんがいるので、家族をおいていきながらも一生懸命仕事に取り組んでいる使命感に胸を打たれました。今までは患者さんが病院に来てくれて、診察の手伝いなどをするのが看護師の役割だと思っていましたが、この写真を見て、みずから駆けつけることも看護の1つだと気づかされました。私もみずから駆けつけられる看護師になりたいと思いました。

被災地で聞きたかったこと

震災を学んでいなかったら知らなかった災害支援ナースという存在。それを目指す上で倉持さんは今回の訪問で、被災した人にどうしても聞きたいことがありました。

伝承館の語り部に話を聞く倉持さん
倉持さん

私たちが被災者の方にどう接したらいいのだろうと。

語り部

いちばん大変だったのは、人のつながりがなくなったしまった、つまりコミュニティを失ってしまったこと。建物は作り替えることができるけど、人の心をつなげるのは非常に難しかった。コミュニケーションをはかれる、関心を持ってくれる、忘れないよと。そういうものを形にできれば最高かな。

津波被害を受けた浪江町請戸地区で

(倉持郁香さん)
とても貴重な経験になりました。災害時の対応や当事者の人にしか分からないこともあると思うので、そういう人たちの心のケアも学んでいきたいと思っています。この3年間の経験をいかして被災者の方々の心に寄り添っていける災害支援ナースになれたらと考えています。

福島訪問後 能登半島地震が発生

報告会の様子(画像提供:取手松陽高校)

今年1月に発生した能登半島地震。災害支援ナースを目指す倉持さんは、現地でどういった支援が行われているのか、自分なりに情報収集をしていました。

生徒たちはその後、取手市内で行われた福島研修の報告会で、被災地で受け取ったものを同世代の高校生に発表しました。倉持さんが伝えたのは語り部の男性から聞いた「被災者との接し方」でした。

(倉持郁香さん)
今は自分にできることが少なく悔しいですが、知識と経験を積んで、被災した人たちを支えられる人材になりたいです。

ことしの春からは大学の看護学部に進学する倉持さん。新たな一歩を踏み出すなか、そのきっかけとなった震災と、これからも向き合い続けつづけたいと話していました。

  • 小野田明

    水戸放送局 記者

    小野田明

    生徒たちが訪れた福島県双葉町出身です。これからも東日本大震災と向き合い続けます。

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