茨城県の伝統工芸品、笠間焼は国内需要の縮小に伴い、海外への販路開拓が課題となっています。
しかし去年、まさに海外に打って出ようとしたやさきに新型コロナウイルスに直面。
イギリスへの現地視察が中止になってしまいました。
一時は危ぶまれた海外展開ですが、実はいま、コロナ禍を逆手に取った取り組みが進められています。
(放送2021年9月30日)


【オンラインで進む海外産地との交流】

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焼き物の絵付けの下地作りの工程を実演する笠間焼作家の福野道隆さん。
笠間焼の産地とイギリスの陶芸産地とをオンラインで結んだ技術交流会です。

笠間焼協同組合が去年から進めている海外販路開拓プロジェクトの一環で行われました。

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画面の向こう側にいるのは、イギリスで陶芸を学んでいる学生たちです。
17世紀から名をはせる歴史的な産地にある大学で、一流の陶芸家を目指しています。

幾何学模様などの繊細な絵付けや色合いを強みとする福野さんは、陶芸家を志す学生たちに向けて、表現したい色を出す方法などを丁寧に説明しました。


【コロナ禍で発想転換 オンラインへ】

もともと協同組合の海外販路開拓プロジェクトでは、笠間焼作家のイギリス視察などが計画されていました。
しかし、コロナ禍で急きょオンラインでの交流に切り替えることになったのです。

交流会の中で学生からは、福野さんが何から作品の着想を得ているのか、日本の文化がどう影響しているのかなど、たくさんの質問が飛び交っていました。

「芸術家本人と話をすることができ、とても刺激的だった。彼がどのように作品を作っているのか、作品の質感をどのように表現しているのかを知ることができた」(参加したイギリスの学生)

コロナ禍で始めたこうしたオンラインでの交流。実は今回で7回目を数えます。

当初は意図していなかった形での交流ですが、協同組合では、世界的にも有名な産地とこうした交流を重ねることで、海外展開に向けた足がかりにつながっていると手応えを感じています。

「きょう授業を受けた方はもう笠間というものが頭のどこかに引っかかっていると思う。知名度ということでいうと、ある程度こうした取り組みを続けていくことで、イギリスにアピールできると思う」(笠間焼作家 福野道隆さん)
 

【顧客との作品づくりにもオンライン活用】

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さらに、オンラインを活用して、海外の顧客と作品づくりを進める窯元も出てきています。

創業50年目を迎える窯元、向山窯です。
工房とオンラインでつながっている先は、中国・上海で日本人が営むコーヒー店。
いま、海を越えてコーヒーのドリッパー作りを共同で進めています。

もともと銀行の紹介で、笠間焼を店で使用・販売したいという上海のコーヒー店と知り合いましたが、時はコロナ禍。

質感や手触りが重視される陶器では、対面以外での商談は難しいと考えていた窯元ですが、やむをえずオンラインの活用を試みることになりました。

しかし実際に始めてみると、顧客の要望をその場ですぐに反映できることや、相手が海外でも気軽に何度も打ち合わせができることに気がつきました。

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「回数が多くなると、お客さんのお考えをよくくみ取ることができる。いらしていただくよりも伝わるのかも知れないという感覚がある」(向山窯 販売担当 蜂須賀あき子さん)

完成した試作品は上海に送り、実際に手に取って仕上がりを確かめてもらいます。

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「実際に手に取ると自分がイメージしていたそのものというか、それよりもいいものができあがっていた。驚きも大きかったですし、うれしかったです」(Rumors Coffee 店主 中山恵一さん)

コロナ禍でやむをえず始めた今回の取り組み。
窯元では、いま、国境を越えたものづくりの可能性を実感しています。

「こだわりのものを作りたい人のために、こだわりのものを提供したい。 オンラインを使うことによって簡単に海外の人と商談を進めていくことがこれからできるのではないか」(向山窯 販売担当 蜂須賀あき子さん)

海外に限らず国内でも、こだわりを持った顧客とまさに隣にいるような感覚で一緒にものづくりが進められる。
作品づくりのあり方そのものが、今後変わっていくかもしれません。


取材:平山佳奈 記者

 

 

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