茨城県出身で元横綱・稀勢の里の荒磯親方。
ことし5月に開かれた日本相撲協会の理事会で、現在所属している田子ノ浦部屋から独立し、新しい部屋を持つことを認められました。
「荒磯部屋」の準備状況と今後の予定、そして親方が目指す相撲部屋とは。
荒磯親方に聞きました。(2021年7月1日放送)

【原動力は弟子たち】

『あの稀勢の里が、地元・茨城に自分の部屋を開く』
元稀勢の里・荒磯親方は、茨城の英雄、スターと言って間違いありません。
コロナ禍で久々のうれしいニュースに、さっそく親方にリモートインタビューをお願いしました。
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まず、部屋を開くことを決めた経緯を尋ねると、親方はみずからスカウトした3人の弟子の存在について触れました。
「弟子がことし3人入りまして、僕としても3人のために、新しい部屋を作ろうという決断をしました。
それまでは部屋をやろうという予定はなかったんですけども、弟子が3人決まるってから、私もドンドンやる気が出てきて、『部屋をやってみよう』という気持ちがね、あふれ出てきたんです」
「茨城は広い敷地が確保できますし、そして何よりも現役のときに熱心に応援していただいた方もたくさんいますので、後押しもたくさんあってですね、茨城県内で部屋を開くことを決断しました」(荒磯親方)

県民としてはうれしい一方、国技館がある両国からは距離があり、大変なのでは?
しかし親方は、茨城だからこそのメリットがあると強調しました。
「移動の負担はデメリットですけども、そのデメリットを超えるメリットがある。
去年1年いろいろと勉強させてもらって『理想の部屋』というものを考えたんですけども、やはり広い土地をたくさん利用したいと。
そして現役中にいろいろとバックアップしてもらった後援会っていうものがありましたから、そこの皆様の後押しというのが、新しい部屋にも必ず必要だと思うんですね。そういうところもあわせて、デメリットを超えるメリットがある」(荒磯親方)


【土俵が2つ?「荒磯部屋」の構想とは】

新しい「荒磯部屋」は、1700坪という広大な敷地に建てられます。
これまでの姿にとらわれない「理想の部屋」のアイデアを、熱意を込めて語ってくれました。
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「自分のやりたいこととして、土俵以外での稽古というものを非常に大切にしてるんですね。敷地が広いと、土俵周りの稽古でも広く場所を使えますし、これからどんどん部屋の力士が増えていくと、やはり土俵が1つでは効率が悪いということもあるんですね。ですから、新しい部屋には、土俵を2つ作ります。それが普通の相撲部屋とは違うことですかね」
「それと、普及活動にも力を入れていきたい。土俵が2つあると、わんぱく相撲や中学・高校生の力士が、われわれの横で稽古ができる。一緒に稽古ができるよさがあるんですね。ですから早く新型コロナが収まって、子どもたちとも一緒に稽古をできれば、部屋としてはかなり盛り上がるのかなと思いますよね」(荒磯親方)

これまでの相撲部屋にはない、「土俵を2つ作る」「地域の子どもたちと一緒に稽古する」という荒磯親方のアイデア。
これには、親方が去年1年かけて学んできた知識が生かされています。
じつは親方、引退後に早稲田大学大学院のスポーツ科学研究科で学び、「新しい相撲部屋経営のあり方」というテーマで修士論文も書いています。(※論文は学内のみの公開で、一般には公開されていません)
「Jリーグの鹿島アントラーズも、複数面のグラウンドを持っているという話を聞きました。こっちでジュニアの選手、こっちでトップの選手というふうに一緒に練習すると。そうするとジュニアの選手たちが、トップ選手を見て目標にしやすいんだっていう話を勉強させてもらいまして、いろいろ参考にしたっていうのはあるんですね」
「ラグビーやアメリカンフットボールのことも、大相撲と比べたりして。そういうふうに比べたりするということも、なかなか今まで考えたことがなかったんですが、そうするともう頭がすごい柔軟になって、毎日毎日脳みそのマッサージされるようなそんな感じで、毎日学ばさせていただきました。
そうすると、自分はやっぱり相撲だけしかやったことなかったので、こり固まったような考え方とかもね、すごく柔らかくなってきたと思いました。大学院で学んで、それがまずいちばんよかったことかなと思いますね」(荒磯親方)
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大相撲の伝統を大切にしながらも、新たな発見や学びを柔軟に取り入れていこうという荒磯親方。
部屋の後援会によると、季節のお祭りを開いたり、観光ツアーを受け入れたりと、部屋の敷地を使った地域との交流のアイデアもたくさん出ているということです。

【“あいさつと掃除”伝統も大切に】

どんなことを大切にしながら若い弟子たちに向き合っていきたいか、親方としての指導方針も聞きました。
「大切にしたいのは、大相撲で昔からやってきたことですね。前の先代鳴戸部屋もそうですし、今の田子ノ浦部屋もそうですけど、まずはあいさつの重要さ。やっぱりあいさつをしっかりできない、そうすると自分の心も乱れてしまうんですね。あいさつは、自分の心をしっかり整えて、周りにもものすごくいい影響を与える。あいさつをして悪く思う人は誰もいないと思いますし、そうすると部屋の環境もものすごくよくなると思うんですね」
「そして、2つ目に掃除ですね。自分のしこ名の『稀勢』ということばはお寺の方からもらったんですけども、このお寺の大切な修行というのは掃除なんですね。掃除をすると精神が統一され、周りがきれいになるとあらゆる運気が回ってくると、そういうふうに言われてるんです。自分も先代鳴戸親方にはずいぶん指導されましたから、あいさつと掃除、この2つをやるということが、相撲が強くなるためのまずひとつなのかなと思いますね」(荒磯親方)

その上で荒磯親方は、親方として力士の見本にならなければという覚悟も示しました。
「力士はどうあるべきかというものを、しっかり教え込むのも自分の仕事だと思います。曲がった道、それた道に行った時に正しく修正するのも親方の力だと思うんですね。ですから、力士を育てるにも、やっぱり自分がしっかりしないと、部屋もまっとうに進まないと思うんです。力士の見本になるように指導していきたいと、そういうふうに思います。」(荒磯親方)

【繰り返した“地元への思い”】

日頃から、「茨城の人たちの応援があったから横綱になれた」と話している荒磯親方。
インタビューでも「応援してくれる人たちがいる茨城で、部屋を開きたかった」と、繰り返し地元への思いを語っていました。
その言葉からは、地元・茨城への感謝の気持ちがにじんでいました。
「茨城の相撲人口を増やしたい、茨城からまた関取、力士を育てたいという気持ちも、ものすごくあります」(荒磯親方)
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「やっぱり自分は、あの優勝したときの牛久のパレード(※平成29年、初場所の優勝と横綱昇進を祝う祝賀パレード)がいまだに忘れられないんですね。
茨城の方にたくさん応援してもらったので、またああいうふうに応援されるような力士を育てたいと思いますし、ああいう力士を一日でも早く、送り出せるように頑張りたいとそういうふうに思いますね」(荒磯親方)

「荒磯部屋」は8月1日付けで正式に設立されますが、建設工事はこれからで、しばらくは筑波大学の道場を借りて稽古を行うということです。部屋の完成は来年5月の予定です。
親方の熱い思いと斬新なアイデアで、どのような部屋ができあがっていくのか。
これからも取材していきたいと思います。

取材:髙橋康輔 アナウンサー
   田淵慎輔 記者

 

 

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