東京オリンピックで初めて正式種目となった空手。
古河市出身で組手女子61キロ級の染谷真有美選手は、オリンピック代表に内定していましたが、オリンピックが延期となったため代表を選考し直すことになり、内定は白紙になりました。
4月の国際大会で結果を出し、再び代表の座をつかもうという染谷選手を取材しました。

【内定白紙は「予想内」】

年の瀬も押し迫った去年12月24日、染谷真有美選手の姿は道場にありました。
東京オリンピック代表の内定取り消しから半年。当時を振り返る染谷選手のことばは、落ち込みをみじんも感じさせない、前向きなものでした。
20210114_1.jpg
「ショックというよりは『予想内のことだからどんな状況でも必ず乗り越える』という気持ちの方が強くて。何が起こるか分からないというのは予想していたので、動揺するというよりは、再選考ならまた頑張ろうと、意外とすぐに切り替えることができました」(染谷真有美選手)

【目標は“姉妹でオリンピック”】

染谷選手は、空手を習っていた兄と姉の影響で、5歳で空手を始めました。
20210114_2.jpg
強い姉・香予さんを追いかけるように、めきめきと実力をつけていきました。
やがて日本を代表する選手の1人となり、東京オリンピックの内定をつかみ取ったのです。
「最初は日本一が目標でしたが、世界一が目標になり、空手がオリンピック種目になってからは最終的に東京オリンピックに姉妹で出場するというのがいちばん大きい目標になりました」(染谷真有美選手)

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で東京オリンピックは延期に。代表を選び直すことになり、染谷選手がつかんだオリンピックの切符は、取り消しとなってしまいました。

【心の支えとなったのは】

内定取り消しは「予想内のこと」と前向きに語った染谷選手。しかし、姉の香予さんから見た染谷選手の様子は、また違ったものでした。
「口では前向きだったんですけど、やっぱりつらそうなところもあって。それでも弱気なことを言わずに、しっかりと現実を素直に受け入れて、自分は次に何をすべきかといったところを見ていたので、それはすごいと思いました」(姉の香予さん)
20210114_3.jpg
【左:染谷選手 右:姉の香予さん】
練習も生活も共にし、互いを高め合ってきた2人。
香予さんは別の階級で代表選考に敗れて補欠となっていましたが、妹の染谷選手に、一緒にオリンピックまで頑張ろうと声をかけました。
「『頑張れ頑張れ』というのではなくて、『私自身も一緒に頑張る』というのが、いちばん妹の力になると思いました。自分のためにも妹のためにも一緒に頑張ろうと声をかけました」(香予さん)

染谷選手も「姉がいつも一緒にいてくれたから、どういう状況でも前向きな気持ちでいられた」と振り返ります。
「姉がまだあきらめないで一緒に頑張ると言ってくれたのが、いちばん大きかったです。そういう姉の姿勢を見ていたら、自分がどういう状況になっても、とにかく今できることをしようと思えた」(染谷真有美選手)

【得意の「突き」2人で磨く】

染谷選手が再びオリンピック代表に選ばれるためには、ことし4月にモロッコで開かれる国際大会で結果を出して、世界ランキングで日本人トップにならなければなりません。再び代表をつかみ取るため、染谷選手はこの半年間、得意技の「突き」の技術を磨いてきました。

ポイントは、後ろ足の使い方です。突きを繰り出す瞬間まで後ろ足のひざを曲げ、ひざをバネのように使って一気に「突き」を打ち込むことで、動きにむだがなくなり、スピードと威力がアップするのです。
この動きは、姉の香予さんがずっと研究していたものでした。
20210114_4.jpg
「姉が使いこなせるところまできていたものを、私に教えてくれている。少しずつできるようになってきたという実感が持てるようになってきていて、それがいちばん大きな成長かなと思います」(染谷真有美選手)

「真有美は教えてもらったことや、自分でこうだなと感じたことを体で素直に表現できる。それがセンスがあるといわれる部分だと思います。苦しいことやつらいことがたくさんあっても、それをその後も頑張り続けて成長するための糧にしている。そうやって積み上げてきた心の強さが技を作っている、気持ちで戦う部分が強いというのが真有美の空手の魅力だと思います」(香予さん)

【実戦で感じた手応え】

去年12月、練習の成果を試す機会がやってきました。約10か月ぶりの実戦となる、全日本選手権です。
20210114_5.jpg
スピードと威力を増した「突き」が、相手の首もとに決まります。動きにむだがなくなったことでスムーズに攻撃を繰り出せるようになり、次々とポイントを獲得。オリンピック代表をかけた4月の国際大会に向けて、手応えを感じることができました。
「しっかり自分の技を出して戦うことができて、久しぶりの試合を楽しめた。特にその日の調子がいいというわけではなくても練習の成果をしっかり出せているので、コンスタントによくなってきてるという実感があります」(染谷真有美選手)

【オリンピックへ 揺るがぬ決意】

東京の次のパリ大会では、空手は正式種目から外れることが決まっています。
オリンピックの舞台に立てるのは東京しかない。再び代表の座を目指し、染谷選手の決意は揺るぎません。
「金メダルを取ることが、自分がかなえたい夢。そのためだったらどんなに厳しいことも乗り越えて、最後のチャンスをしっかり自分のものにして、必ず夢を達成できるように頑張っていきたいです。オリンピックでは金メダルを目指します」(染谷真有美選手)

 取材:大野敬太 記者

 

 

RSS