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ピアノシューズ開発! 主婦から経営者へ

執筆者のアイコン画像沼田亮輔(ディレクター)
2023年07月12日 (水)

茨城で働くことを考える「しごとバ!」

今回の主人公は龍ケ崎市で会社を経営している倉知真由美さんです。倉知さんはピアノ演奏用のシューズを開発し販売する事業を行っています。もともと主婦だったという倉知さんは娘を思う気持ちからシューズを開発することになりました。経営や靴の開発について全く知識のなかった倉知さんが経営者となって靴を販売するまでの思いを取材しました。

 

 

娘のためにシューズを作ろう!

ゲーム会社で働いていた倉知さんは、22歳で出産を機に退職し、主婦になりました。娘の美悠さんは幼いころからピアノを習い始めます。美悠さんの悩みはピアノのペダルが踏みにくいことでした。

倉知美悠さん
足が疲れるとか、踏みにくいとかをよく思うようになって、母に相談していました。もうちょっといい靴ないのって言っていた感じです。

娘の相談を受けた倉知さんはピアノ演奏用のシューズを探しましたが見つけることができませんでした。そこで娘のために自らピアノを演奏しやすい形の靴を作ることができないかと思い立ちました。

倉知真由美さん
ひたすら木を削っていました。娘が学校に行っている間にホームセンターに行きます。そこで木を削って夕方になると家に帰って家の仕事をします。そんな毎日を送っていました。

20230712n_1.jpg良い靴の形がなかなか見つからないなか、美悠さんがある発見をします。木の模型をつま先側においてペダルを踏むと踏みやすいというのです。倉知さんは、このピアノシューズのアイデアで特許がとれるのではないかと考えました。

 

地道なデータ収集に励む

倉知さんは特許の専門家である弁理士に協力してもらいながら、詳しいデータ収集に取り組みました。かかとの位置をどのようにするのが最もペダルを踏みやすいのか、さまざまな大きさの上履きで試作品を手作りし、ピアニストなどに実際にペダルを踏んでもらってデータ化していきました。ペダルの高さによっても踏みやすさが変わるので、娘の美悠さんも学校のピアノのペダルの高さを測定するなどして親子で協力しながら作業を行っていました。

 

倉知美悠さん
ピアノのペダルの高さを測定する意味はよくわかっていなかったです。今になって母から説明を聞いて自分が何のために測定していたのか理解しました(笑)

地道なデータ収集が功を奏し、倉知さんは2014年に見事特許を取得することができました。

厳しい現実に直面

倉知さんは、取得した特許に基づいてピアノシューズを生産し、娘と同じ悩みを抱える人たちに広く届けようと決意します。

しかし、本当の苦労はここからでした。当時、経営や靴の生産工程についてほとんど知らなかった倉知さんは靴メーカーから相手にされなかったといいます。

倉知真由美さん
靴工場に問い合わせメールを送りましたが、返事がありませんでした。返事がないので電話をしてみるとあなたはどこの会社の何部ですかと聞かれました。ただの主婦ですと答えると会社なり個人事業主でないと契約もできませんと言われ、現実を知りました。

主婦から経営者へ

そこから倉知さんは靴の生産について徹底的に調べ始めました。靴を作るためにどのような工程が必要で、どのような費用がかかるのか、生産を継続するためにはどれくらいの利益を見込む必要があるのか、販路をどう開拓するのかといった知識を学んでいったといいます。同時に事業計画書の作成方法や行政の補助金の制度について、中小企業診断士などの専門家に教えてもらう日々を過ごします。

 

20230712n_2.jpg勉強を続けながら詳しい資料を作成し、100以上の靴メーカーにあたり続けました。そして2015年、倉知さんはついに東京の靴メーカーの協力を取り付け商品化に成功しました。

ピアノシューズは徐々に評判を呼び、今では愛用者が全国で延べ1万人にのぼっているといいます。

 

「恥をかくほどレベルUP!!」

倉知さんに仕事場で大切にしていることを聞きました。

倉知真由美さん
私は靴工場を動かすための知識や経営の知識もありませんでした。そんな人には誰も耳を傾けてくれません。何も知らないときは恥をかくことがあたりまえなのでそれを恐れずに突き進むというのが大事かなと思います。恥をかきながら、失敗をしながらだんだんレベルが上がっていったなと何年かしてからわかりました。

20230712n_3.jpg

 

取材を終えて

倉知さんのものづくりへのこだわりとピアニストを尊敬する気持ちが取材中にひしひしと伝わってきました。今回のリポートでは、倉知さんと一緒に仕事をしている靴メーカーや弁理士などの人たちにも取材しました。その誰もが倉知さんのピアノシューズへの強い思いや人柄にひかれて応援し、協力している姿が印象的でした。周囲の人たちと思いを共有して仕事を進めている倉知さんを私も見習っていきたいと思いました。

 

 

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