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筑波山麓で育った板谷波山 生誕150年記念展

執筆者のアイコン画像三輪知広(記者)
2022年05月18日 (水)

日本の焼き物を現代的な芸術として確立した、陶芸家の板谷波山の生誕150年記念展が、故郷の茨城県筑西市で開かれています。

重要文化財や未公開作品公開

20220519m_1.jpg昭和5年に茨城県筑西市で生まれた板谷波山は、東京で創作活動に打ち込みましたが、ふるさとから見える筑波山にちなんで「波山」と名乗りました。作品は皇室にも納められるなど、当時の日本を代表する陶芸家として活躍し、昭和28年には、陶芸家として初めて、文化勲章を受章しました。

ことしが、生誕150年にあたることから、故郷の筑西市では3つの会場が連携して記念展を開催しています。

しもだて美術館では、初公開の作品や約100年もの間、一般に公開されていなかった作品など、各地の美術館や個人が所蔵している120点余りが展示されています。

20220519m_2.jpg泉屋博古館東京が所蔵し、国の重要文化財に指定されている「葆光彩磁珍果文花瓶」は、波山が釉薬を研究して生み出した、まるでベールに覆われたような独特の淡い色合いが特徴で、モチーフになっている桃やぶどうなどの果物からは気品を感じさせます。

作品名に付けられている「葆光」とは、波山が考案したもので、波山の研究者で、記念展を監修した学習院大学の荒川正明教授は、「光を包みかくすこと」、「自然のままの光」という意味が込められていると解説します。

人物像に焦点を当てた展示

板谷波山記念館では、ふるさとの人たちに思いを寄せ続けた、波山の人物像をテーマにしています。

20220519m_3.jpg「観音聖像」は、日中戦争や太平洋戦争の戦没者の遺族に贈った観音像で、波山は読経をしたうえで、1体1体に祈りをささげて仕上げました。また、波山自身で遺族を探し、すべての人に届けようと名簿を作り、286体を贈りました。会場には、今回のために、それぞれの家庭から借り受けた64体が展示されていて、像の姿勢が違うものや線香の煙で色が変化したものも見られます。

像を納めた箱には、波山の気遣いがわかるエピソードも伝えられています。波山が作ったものだと証明する朱印と署名があり、戦争で大黒柱を失った遺族がお金に困った場合には、できるだけ高い価格で売却して、生活費にあてられるようにと価値を保証したのです。

このほか、波山が80歳の人に19年間にわたって毎年お祝いとして贈った、持ち手の部分がハトをモチーフにしたつえも、年代ごとに展示されています。

最大級の作品や傑作も公開

20220519m_4.jpg廣澤美術館の注目作品の1つは、波山最大級の作品、「彩磁蕗葉文大花瓶」です。

高さが77.5センチあり、ふきの葉に彫り込まれた葉脈が、立体感を生み出すとともに葉のみずみずしさを表現しています。いくつもある葉のなかには、虫に食べられて穴が開いているように表現されているものもあります。草花を愛し、深く観察した波山ならではの緻密さを、うかがい知ることができます。

企画展を監修した学習院大学荒川正明教授
過去最大級の板谷波山の作品展がふるさとで開かれたことは貴重なことです。多くの人に、波山の卓越した技術や高い芸術性に触れてもらいたいと思っています。


板谷波山の生誕150年記念展は6月19日まで開かれています。

 

 

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