「ロボットで社会を変えたい!」学生起業家のチャレンジ しごとバ!01
沼田亮輔(営業部)
2022年04月20日 (水)

『しごとバ!』について
リモートワークの普及や週休3日制の導入、兼業や副業の増加など働き方が多様化する時代、「茨城県で働く」ってどうなんだろう?将来のことを考える学生のみなさん、これからの働き方に悩む社会人のみなさん、その周囲にいる家族や友人のみなさんと一緒に令和の「茨城県での働き方」を考えたい!そんな思いからこの企画はスタートしました。
働き方が多様化する時代だからこそ、まずはたくさんの選択肢を知る必要があるのではないでしょうか。そのなかで自分がしてみたい仕事、自分に向いているかもしれない、そう思える仕事を選ぶことができればその人にとってこれ以上幸せなことはありません。
『しごとバ!』では茨城県内の様々な仕事場とそこにいる素敵な人々を紹介していきます。みなさんと一緒に「茨城県での働き方」を考えるうえで参考になるヒントを見つけていきたいと思っています。
在学中に起業!大好きなロボットで変えたいものは
1回目に取り上げるのは筑波大学大学院に通う起業家、樋口翔太(24歳)さんです。
樋口さんは去年、ロボットを開発するスタートアップ企業を設立しました。
人手不足が深刻にも関わらず、なかなか自動化の進まない食品工場にも導入しやすいロボットの開発を、仲間とともに進めています。狭い作業場でもロボットを使えるよう小型化を実現し、課題のコストも従来の3分の1にまで削減しました。今年の7月に予定されている工場への本導入を目指し、現在も日々ロボットの改良に取り組んでいます。
全力投球のリーダー
樋口さんは大学院への進学を機に仲間と共に事業をはじめました。一緒に事業を進めている後輩の岡村さん、樋口さんってどんなリーダーですか?
出会った当初から後輩である僕の意見もきちんと聞いてくれました。代表や後輩という立場に関係なく一緒に議論して、納得するまでとことん話し合ってくれます。
樋口さんはリーダーとして一緒にみんなのアイデアを高めあってくれる存在であると話してくれました。とても良い雰囲気のチームで仕事をしているのが伝わってきます。
高専時代からの仲間である佐藤さんからは樋口さんの熱い一面を聞くことができました。
よく一緒にご飯に行っていました。会うたびにロボットへの熱い思いが伝わってきましたね(笑)高専時代からなんでも全力で取り組むのが樋口翔太でした。全力投球な樋口と一緒にやれば何か面白いことができるんじゃないかと思って私も参加しています。
同期の佐藤さんだから話せる樋口さんの意外な部分も…。
実はちょっと抜けているところがあります(笑)大学院出願時に提出する書類をどうすればいいのかということで慌てていたことがありました。意外にもぎりぎりになって行動する一面も。そういう部分はお互いにカバーしあいながらここまできましたね。
リーダーの熱い思いが仲間に良い影響を及ぼし、チームでお互いに助け合いながらここまで進んできたことが伝わってきました。
“自分たちが作りたいもの”ではダメ?
樋口さんは現在の会社を立ち上げる以前にもスタートアップ企業に参加していたことがあります。しかし、開発を中心に行っていたため、代表として事業のアイデアを検討するという経験はそれほど多くありませんでした。そのため、お客さんの“ニーズ”を理解することに苦労したといいます。
お客さんが本当に求めているものを作るというよりは自分が作りたいものを作ってしまっていました。
研究費やロボットの実践の機会を得るために樋口さんたちは様々なコンテストへ参加します。1年間で19のコンテストや助成金などに応募し、10の採択や受賞がありました。
コンテストへの参加は資金や実証実験などの場を得られるだけでなく、事業のアイデアや技術へのアドバイスを得ることのできる貴重な機会にもなりました。こうした場に参加することで多くの人の目にとまり、ニーズの把握など次の計画につながっていったといいます。さらにコンテストに参加することで短期的な目標を設定することができるという利点もありました。
好反応=ビジネス成功、とはいかない
様々なコンテストを通じて実践の機会を得ることで自分たちが進むべき方向性が見えてくると話す樋口さん。その中の1つにつくば市での実証実験への参加がありました。
樋口さんは外食産業における単純作業を削減したいという思いから飲み物を無人で提供できるロボットを開発。つくば市で実際に無人カフェの実証実験を行いました。実験は成功し、お客さんからも好意的な反応が多かったといいます。

しかしながら、外食産業へのロボットの導入にはいたりませんでした。
お客さんからはいいねと言ってもらえました。しかし、この技術がビジネスとしてまわっていくほど求められているのかというところを検討した結果、自分が目指しているような社会に大きなインパクトを与えるレベルに達するものではないかもしれない、ということを感じました。
「自分たちがやりたいこと」と、「相手のニーズに応えること」の大きな違いに突き当たった樋口さん。この経験が次の目標へと展開します。
ちょうどこの時期、自動化が遅れている食品工場での人手不足の課題を知ったのです。
食品工場の方からもっとこっちをやってほしいという声を聞きました。単純作業を自動化するという意味では求められている他の場所があるということを学びました。
外食産業向けから食品工場向けのロボット開発へ方向転換することを決めました。
大好きなロボットで念願の世界一
新潟県出身の樋口さん。幼いころから工作が大好きでしたが、特にロボットに夢中になったきっかけは小学校5年生のとき、ロボットを使ったサッカーの大会に出場したことでした。
数少ないお年玉を使って限られた中でいかにロボットをくみ上げられるかということをひたすら考えていました(笑)

中学校を卒業後、ロボットにについてより深く学ぶため新潟県の長岡高専に進学します。
長岡高専時代の経験が現在の起業家としての自分に大きく影響していると語っています。
中学校を卒業後、すぐに実家を離れて高専の寮に入ったことでより自由な考え方が身についた気がしています(笑)
また、高専での起業家教育が大きく影響しています。起業家教育のプログラムや部活に参加していたことで起業家という選択肢が見えてきたように感じています。
高専時代も小学生のころから出場していたロボットのサッカー大会に出場。
高専5年生のときには世界大会で見事優勝を果たしました。

ロボットで社会課題解決へ、きっかけは“バイト”と“農業”?
樋口さんはロボットの技術で社会にある課題を解決したいと思うにいたった2つのきっかけがあると語ります。
1つ目はロボット大会に出場していた時から行っていた飲食店でのアルバイトの経験です。皿洗いや仕分け作業など繰り返しの単純作業を行う中で、自分が得意としているロボットの技術で自動化できないかとぼんやり考えていたといいます。
もう1つは高専時代に関わったトマトの自動収穫ロボットについての研究です。実際に農家の方にヒアリングしたり、参考文献を調べたりしていく中で人手不足が予想以上に深刻だと感じ、農家の課題に強く当事者意識を抱きました。
この2つの経験から自分の好きなロボットで社会課題になっている問題を解決することができるのではないかと感じたことが今に繋がっていると振り返っています。
さいごに
大きな目標に向けて目の前のやるべきことを取り組み続けることが重要だと思います。短期的な目標を作って、次のやるべきことに取り組んでということを繰り返していくと自分がやっていくべき方向性が見えてきます。自分の強みを生かしながら目標に到達していけるようにあきらめずに常にやり続けることが重要です。
取材を終えて
樋口さんの失敗を失敗ととらえないで常に挑戦を続けている前向きな姿勢が印象的でした。私も目の前の面倒なことや嫌なことから逃げ出したくなることもあります。しかし、その中でも常に自分の中の目標を忘れないでいることが重要なことなのだと改めて気づかされました。目の前の小さなことをやり続けることが結果的に大きな目標の達成に近づいているということは今後も忘れないでいたいです。まずは私も自分の中の大きな目標を見つけたいと思います。