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TXつくばエクスプレスを〝わが街〟に 誘致合戦 過熱の背景とは

執筆者のアイコン画像安永龍平(記者)
2023年01月27日 (金)

つくばエクスプレスを、ぜひとも、自分たちの地域に延伸してほしい。

茨城県内の自治体の間では、“誘致合戦”が、あの手この手で繰り広げられてきました。

今年度になって、突然盛り上がり過熱した誘致の動き。

その背景を取材すると、地域の抱える切実な事情と思いが見えてきました。

TXがもたらした“恩恵”

20230127y_1.jpg朝から多くの都内への通勤客で混み合うつくばエクスプレスの守谷駅。守谷市は、つくばエクスプレスが開業した2005年と比べ、若い世代の流入が増え、人口はおよそ3割も増加しました。

 

通勤客
通勤でTXが便利なので、守谷に移住しました。

 

20230127y_2.jpgさらに、守谷駅の周辺は戸建ての住宅や高層マンション、大型商業施設が次々と建設され、まさにつくばエクスプレスの“恩恵”による発展が続いているのです。

 

過熱する誘致活動

20230127y_3.jpgこの守谷市に続けとばかりに、茨城県内では、つくばエクスプレスの延伸を求める運動がさかんになっています。

 

20230127y_4.jpg茨城県は2050年ごろの構想としてつくばエクスプレスの延伸先に▼筑波山方面、▼水戸方面、▼茨城空港方面、▼土浦方面の4方面を挙げ、今年度中に1つに絞り込む方針です。

 費用負担をどうするかなど具体的なことは決まっていませんが、水戸市や石岡市、それに土浦市など延伸を目指す自治体は、茨城県に要望書を提出したり、署名を集めたりするなど、活発な動きを見せています。

 各自治体によるまさに“誘致合戦”が過熱しているのです。

 

延伸求める地域の切実な事情

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20230127y_6.jpg過熱する誘致合戦。その背景を取材すると、地域が抱える課題が見えてきました。

市内を経由し茨城空港への延伸を目指す石岡市。長谷川晴彦さん(80)は、JR常磐線石岡駅前の「御幸通り商店街」で産業火薬の卸販売会社を経営しています。昭和初期にこの商店街ができたときから店をだしている、最も古い店だといいます。

 

石岡市の商店街で会社経営 長谷川晴彦さん
閉まっている店が多くて残念ですね・・・。

 

20230127y_7.jpgかつての商店街の姿もよく知る長谷川さんは、商店街を歩きながら改めてこうつぶやきました。

長谷川さんは、商店街の仲間たちと、街のにぎわいづくりに取り組んできました。

 

20230127y_8.jpgこの日、仲間の土産物店の店主と話題にしていたのは、にぎわっていたころの石岡市でした。

 

長谷川晴彦さん
昔に比べたら全然違う。
商店街の仲間
昭和50年のころは、いちばん良かったよね。

 

20230127y_9.jpg古くは常陸国の国府が置かれ、城下町でもあった石岡。明治以降は商業が発展し、水戸市に次いで“県内第2の商都”といわれた時代もありました。

 

20230127y_10.jpgしかし、昭和50年代以降、郊外の大型商業施設のオープンが、中心市街地に大打撃を与えました。さらに人口減少。市の人口は年々減り続けています。

 長谷川さんは、活性化のために残された手は、つくばエクスプレスの延伸しかないと考えています。

20230127y_11.jpg石岡市の商店街で会社経営 長谷川晴彦さん
今のままで自力でどうにかするのは難しいと思っている。今の人口のままでは新しいお店を作っても、購買力はさほど無いだろうし、やっぱり人口が増えるような道筋がなければだめだ。

 

延伸とともに引っ張ってきたい活力

20230127y_12.jpg

長谷川さんは、この日、つくばエクスプレスの守谷駅を訪れました。およそ20年ぶりだといいます。

駅前のロータリーに降り立った長谷川さん。目をみはりました。

 

長谷川晴彦さん
すごいですね。

 駅周辺の発展ぶりに驚きを隠せませんでした。 

長谷川晴彦さん
私の知らない間にこんな街ができていたなんて。

 長谷川さんは、この活力を延伸の実現で引っ張ってきたいという思いを新たにしました。

20230127y_13.jpg石岡市の商店街で会社経営 長谷川晴彦さん
なんとしてもつくばエクスプレスを石岡へ、呼びたい。引っ張っていきたい。そして茨城空港につなげたい。ここにきてそういう思いがまた強くなりました。この街が自分の街になったらすばらしいなと思います。

 
つくばエクスプレスの延伸先は、事業費や地域経済への効果などを考慮した上で、県がことし3月下旬に目指す延伸先を決めることにしています。

(安永龍平 記者・山崎空見 ディレクター)

 

 

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