フィンランド大使 茨城の生徒たちに語ったことは
住野博史(記者)
2022年06月17日 (金)

みなさんは、フィンランドと聞いて何を思い浮かべますか?
サンタクロース?ムーミン?
こう問いかけたのは、フィンランドの駐日大使。
先日、茨城県の高校を訪れ、教育やジェンダー平等について語りました。いま深刻な危機に陥っている「ウクライナ侵攻」についても触れました。
そして、生徒たちからも真剣な問いかけがありました。
ジェンダー平等「日本は改善の余地あり」
高校生たちに国際的な視野を身につけてもらおうと、鹿嶋市にある清真学園高校を訪れたフィンランドのペッカ・オルパナ駐日大使。
大使がまず語ったのは、フィンランドの先進的な教育やジェンダー平等について。
フィンランドでは授業時間が短く、宿題も少ない分、子ども主体で創造的な思考力を身につけることができることなどを話しました。そのうえで、大使が強調したのは、日本のジェンダー平等の遅れについてでした。
1つだけちゅうちょなく言えることは、日本の社会がジェンダー平等に本当に取り組む必要があること。残念ながら日本がまだまだ改善の余地があることは、誰もが認めなければいけないことだと思います。
フィンランドでは首相など政界のトップが女性で占められるなど、ジェンダー平等が進んでいることを説明したうえで、日本のジェンダー平等について、こうアドバイスしました。
誰もが社会に参加して自分たちの持っているものを発揮しなければ、やはり幸せになれない。日本もフィンランドも、実に人口の半分は女性です。しかし日本の場合は、残念ながらまだ生かされていない人材がたくさんいることを感じます。日本には有能な女性がたくさん、いるはずです。その子たち一人一人が力を発揮すれば、日本はもっと幸せになるのではないかと感じます。
「ある問題」にも言及
そして大使は、いままさに進行中の「危機」についても話しました。

日本とフィンランドの間には、1つ国があります。それは、ロシアです。
実は、ロシアと約1300kmにもわたって国境を接しているフィンランド。
同じくロシアの隣国、ウクライナへの侵攻を目の当たりにしていました。
「フィンランドも、こうした事態に備えるべきなのではないか。」
そうした声が高まり5月15日にフィンランドのニーニスト大統領とマリン首相がそろって会見。
NATO=北大西洋条約機構への加盟申請を正式に明らかにしたのです。
キーワードは「強さ」と「柔軟性」
長年、軍事的な中立を保っていたフィンランドが加盟申請を行った理由は何か。
大使は、フィンランドの「強さ」と「柔軟性」を強調しました。

ここ2年間、まさに私たちが持っている強さや柔軟性がますます大切になっていると思います。1つはコロナ感染という問題があり、最近ではロシアのウクライナ侵攻という問題があります。この2つにおいても、強くあること、そして柔軟性を持っていることがとても大切です。
この「強さ」と「柔軟性」とは、どういうことなのか。
講演後、大使が説明してくれました。
『強さ』と『柔軟性』というのはつまり、統治がきちんとしていること、民主主義であること、透明性があること、信頼があることを意味します。NATO加盟を申請するという決断に至るまでに、民主主義が機能し、政治に透明性や信頼があったからこそ、フィンランド国民の間で合意をすることができました。こうした合意形成はもちろん平時も大切ですが、今のように難しい時期でもこうした合意ができることはとても大切なことだと考えます。
生徒たちの反応は
講演を終えたあと、講演を聞いた生徒たちに話を聞いてみました。
本当に貴重な機会を設けていただいたと思っていて、外国の大使の話はすごく印象的でした。
フィンランドはすごく国民が団結できているし、政策を決めるうえでもすごくいい国だと思いました。
フィンランドは直接的な危害は少ないと思いますが、日本もどうなるかわからないので、グローバルな視点を持って日々生きていきたいと思いました。
取材を終えて
フィンランドには、民主主義という下地があるからこそ、国民の間で納得のいく合意をすることができる「強さ」と、状況が変化すれば臨機応変に国民にとっての最善策を取ることができる「柔軟性」があるのだと感じました。
それと同時に、いまの日本には同じような「強さ」と「柔軟性」のある民主主義は根づいているのだろうかと考えさせられました。
今後も、さまざまなバックグラウンドを持つ人々への取材を行いながら、多角的な視点からいまの日本に必要なものは何なのか、考え続けたいと思います。