重度障害者を受け入れ 娘のためのグループホーム
つくば支局 浦林李紗(記者)
2022年04月05日 (火)

脳性まひなどの重い障害のある人たちが医療的なケアを受けながら暮らせる、茨城県内では初めてのグループホームが、4月から、牛久市に開設されることになりました。
開設したのは、みずからの娘が重度の知的障害という、つくば市の女性です。グループホーム開設に向けた思いを取材しました。
看護師が常駐 医療的ケアも
牛久市に、重い障害のある人のためのグループホームが完成しました。
重度心身障害者グループホーム「olu olu」(オルオル)です。
障害者が住み、日中はデイサービスや特別支援学校に通うことができます。入居できる10床の個室のほか、短期入所のための部屋も1部屋用意されています。
また、看護師や介護士などが常駐し、入居者は痰の吸引など医療的なケアも受けることができます。
3月25日、開設を前に、関係者向けの内覧会が開かれ、利用を予定している障害者や家族も訪れました。脳性まひのある41歳の女性の母親は、次のように話しました。
施設から自宅まで車で15分くらいのところなので、もし何かあったら手を差し伸べられます。みなさんに感謝しています。
知的障害のある娘のために
グループホームを開設したのが、つくば市に住む、越戸利江子さんです。
開設の動機は、知的障害のある18歳の娘、志乃葉さんでした。
障害区分では最も重い『6』です。体は大きいですが、発達年齢は1歳半くらいだということです。
志乃葉さんは、障害の影響で、みずからの体を傷つける自傷行為を繰り返してしまいます。1人でトイレに行くことも難しいため、自宅では常に家族の見守りが必要です。
本来であれば在宅でずっと自分の家族と一緒に生活したいという気持ちがあるんですけど、それだと本当に家族が疲弊してしまって限界になってきてしまう。
自宅近くで暮らせる施設を
茨城県内には障害者のための入所施設はありますが、志乃葉さんのような重い障害のある人を受け入れられる施設は限られるといいます。
病院のケースワーカーさんから『絶対に入所したほうがいいですよ』と勧められるんですけど、『どこがあるんですか?』と相談すると、だいたい、他県の山奥だったり、人里離れた場所に何年も待って、空くのを待たなきゃいけない状況
重い障害のある人たちが自宅近くで暮らし、家族も気軽に訪れることができるようなグループホームがほしい。
自ら施設を設けようと決心した越戸さん。ノウハウを学ぶために一時期、社会福祉協議会で職員として働くなど準備を重ねてきました。
施設は利用者にとって居心地のいい空間にしようと、好みに合わせて個室の壁紙の色を決められるようにしました。また、利用者の家族が自由に施設に宿泊できるよう布団を用意する予定です。
やっとスタートライン
娘のための施設をつくろうと思い立ってから10年余り…。施設の完成披露セレモニーで挨拶した越戸さんは、開設に向けた思いを語りました。
私の長年の夢でした。ホームを建てるため協力していただいたすべてのみなさんに感謝の気持ちを伝えたいです。
やっとスタートラインに立てたと思っています。本番はこれからです。まわりのみなさんに助けてもらって、支え合いながらホームで末永く生活できるように全力で取り組みたいです。
越戸さんは、挨拶で多くの協力に感謝と話していましたが、社会福祉協議会の同僚たちが励ましてくれたり、地域の人たちが理解し協力してくれたりしたことが、開設への大きな後押しになったということです。
娘のために施設を作りたいという越戸さんのその情熱が多くの人の心を動かして実現に至ったのだと思います。