筑波大蹴球部 危機直面でクラウドファンディング
つくば支局 平山佳奈(記者)
2022年06月27日 (月)

筑波大学蹴球部 “ある問題”に直面
現在、日本代表として活躍する三笘薫選手をはじめ、Jリーグ創生期を支えた中山雅史さん、井原正巳さんなど、日本のサッカー界を背負う人材を数多く輩出してきた、筑波大学蹴球部。
いま、部員の選手生命にも関わる“ある問題”に直面しています。
背景にあるのは、国から国立大学に支給される資金「運営費交付金」の減少です。
国立大学の主な収入源となっているものですが、全国的に年々減少傾向が続き、筑波大学でも令和2年度は平成16年度と比べると50億円も減っています。
資金不足の中、それを乗り越えようと始まったプロジェクトを取材しました。
人工芝の老朽化
筑波大学の蹴球部は、伝統ある強豪クラブで、今はおよそ200人の部員が所属しています。
そんな蹴球部がいま直面しているのが、グラウンドの人工芝の老朽化です。

芝と芝の境目が完全に溝になってしまっています。芝ももともとは長かったのですが、今は完全にすり切れて短くなっています
さらに排水機能も低下し、おととし行ったグラウンドの性能テストでは、日本サッカー協会が求める基準値を下回り、安全性が低いと診断されました。
このままでは大学リーグの公式戦も行えなくなるかもしれないと危ぶまれています。
3年前、2年前と比べると、去年やことしのほうが捻挫の数や、ひざの大けがの数も増えています。本当に張り替えないと、安全なグラウンドでサッカーができないという状況になってしまっています
芝の張り替えには、最低でも8000万円かかります。
さらに、質のいい芝を使ったり、排水機能を強化する工事をしようとすると、1億5000万円から2億円は必要になるといいます。
クラウドファンディング始動
そこで立ち上げたのが、クラウドファンディングで寄付を呼びかけるプロジェクトです。
第一ステップとして掲げたのは、目標額1000万円。
サッカー界で活躍しているOBに、部員みずからコメントを依頼して、ホームページにアップしています。
6月16日、OBで日本代表の三笘選手が久々にグラウンドを訪れました。
部員は、このチャンスを生かそうと、寄付を呼びかける動画を撮影しました。

いい環境でプレーさせてあげたいとすごく感じています。けがをしてしまって選手生命を絶たれるということもあるので、本当にいち早く直していくべきだと思います

集まれば集まるほど、よりクオリティーの高い人工芝だったり、水はけのよくなる工事だったりと、よりよい工事ができます。できるだけ多くの方からのご支援をいただいて、よりよい環境にしていきたいと思っています
筑波大学男子駅伝 クラウドファンディングで成果
実は、このクラウドファンディングを活用した取り組みで、成果を出している部活もあります。
筑波大学陸上競技部の男子駅伝チームです。
おととし、箱根駅伝への出場を26年ぶりに果たしました。
6年前から始めたクラウドファンディングで、これまでに集めたおよそ3000万円の寄付が、出場につながったといいます。
ハードな練習のケアに欠かせないと購入したのが超音波治療器です。

長い距離を走るので、足の疲労はすごくて、筋肉がすぐに痛んでしまいます。自分が痛めている部分に対して、超音波の振動を与えてケアしています
さらに、1台30万円以上する有酸素運動ができるトレーニング用のバイクを3台購入したほか、選手の体のメンテナンスのため、外部からスポーツトレーナーを呼ぶための人件費などにも充ててきました。
栄養バランスのとれた食事を作ってもらうため、管理栄養士資格を持った学生に支払うアルバイト代も確保しました。

(資金がなくても)部活動自体はできますよ。ただ箱根駅伝に出場するような、厳しいハードなトレーニングを積み重ねていくということは、何らかの回復を手助けするものがないと難しいのです。それを可能にするのがクラウドファンディングによる支援だと思っています
これまでお金をかけられなかったところに投資をすることで、箱根駅伝への切符をつかんだのです。
国公立という面で、費用面ではやはり私立に劣ってしまうところがあるのですが、皆様方からのサポートがあるおかげで、僕らは箱根駅伝という大きな目標に対して、すごく充実した練習を行えています。本当にありがたいと思っています
大学の資金不足は、筑波大学に限られた話ではありません。
そうした中で、何とか新しい活路を見いだそうという取り組み。
選手たちの思いが、より多くの人に届いてほしいと思います。