給食の牛乳で目指せ!"脱プラ"
三島早織(キャスター)
2022年05月13日 (金)

4月から使い捨てのプラスチック製品の削減を企業などに求める法律が施行されました。
こうしたなか、茨城県内の学校給食で、脱プラスチックを目指した新たな動きが出ています。給食の牛乳で、ストローを無くすことを目指した取り組み、その第一歩を取材しました。
給食の風景に変化が!
「手を合わせて下さい、いただきます!」
古河市立古河第一小学校の6年生、給食の時間です。子どもたちは、いつも使っているあるものを、使っていません。
それはストローです。
子どもたちは、200ミリリットル入りの牛乳パックの口を手で開けて、そのまま口をつけて飲んでいます。ストローは別に用意されていて、牛乳のストローを使用するかどうかは、子どもたちが選択できます。
子どもでも開けられるストローレス容器
子どもたちがストロー無しで牛乳を飲めるようになったのは、4月から給食の牛乳の容器が新しくなったからです。
1000ミリリットルや500ミリリットルの牛乳パックは、皆さん手で開けてコップに注いで飲んでいると思います。しかし、これに比べ、給食で出される牛乳の200ミリリットルの容器は小さいため、指で引っかけて開けるのが難しいのです。
このため、新しい容器は、手で開けやすくするための工夫がしてあります。
それが、口をつける部分の下にある折り目のようなもの。押し込むと隙間ができて、子どもたちでも簡単に開けられるようになっているのです。あとは飲み口を引き出すだけ。
私も実際に、ストローレス容器で牛乳を飲んでみました。

乳業メーカーの決断と心配
古河第一小学校に牛乳を配給している古河市の乳業メーカーです。古河市やつくば市などの学校に1日22万3千本の牛乳を供給しています。
この乳業メーカーでは4月から学校給食用の牛乳をすべて、大手製紙メーカーが開発したストローを使わなくても飲める容器に変更しました。その理由を、小川澄男専務はこう話します。

SDGsを私たちも一生懸命考えるようになって、プラスチックなど減らせるもの減らしたいなと思いました。ストロー1本あたり0.5グラムぐらいプラスチックが削減できます。それが積み重なれば大きな削減になるということで、できることからやろうと思いました。
この乳業メーカーの学校給食の牛乳のストローをすべて廃止できれば、年間21.5トンのプラスチック削減につながります。ただ、ストローをいきなりやめる決断をするのは、実際には簡単ではなかったといいます。
乳業メーカーでは、半年前から、会議を繰り返し、検討を重ねてきました。子どもたちの口に入るものを届けるメーカーとして一番心配だったのは、衛生面に問題があるという指摘が寄せられることでした。社員の皆さんからは、次のような意見が出されました。

・この時代に直接口を付けて飲むことに抵抗はないのかなと正直思いました。
・栄養士さんにストローレス容器のことを説明しに行ったときに、家庭では直接口をつけて飲む機会が少ないことから、教育の中で飲ませることをだいぶ懸念されていました。
検討を重ねた結果、乳業メーカーでは容器を採用する一方で、当面はストローも配布し、子どもたちや保護者の反応も見ながら、少しづつストローを減らしていくことにしたのです。
乳業メーカーもびっくり!子どもたちの反応は
ストローレス容器は子どもたちに受け入れられるのでしょうか。古河第一小学校で取材しました。
この学校では去年からSDGsの学習に力を入れていて、週に1回程度、環境問題について学んでいます。この日は、自分たちが環境のためにできること、続けられることをテーマに話し合いました。

・プラスチックじゃなくて、紙のストローを何回か使ったことがある。
・プラスチックの使用を減らすことは大事。
学校ではまず6年生の児童を対象にストローレス容器について説明し、ストローを使うか使わないかは、子どもたちが自分で考えて決めることも伝えました。
そして、給食の時間。この日、クラスの全員がストローを使いませんでした。子どもたちは容器に直接口をつけて、ごくごくとおいしいそうに牛乳を飲んでいました。
子どもたちにストローレス容器で牛乳を飲んだ感想を聞きました。
別の男の子:前よりちょっと飲みにくくなった。
女の子:ゴミを減らすのに自分も参加できているので、地球の環境をよくするボランティア活動みたい。
学校側は、子どもたちは、給食の前によく手を洗っているため、ストローを使わないからといって衛生面のリスクが高まることはないと考えています。
さらに、給食で脱プラスチックについて学ぶことで、教育上の効果も期待できるといいます。
学校側は、まずは6年生の保護者に文書を送って、ストローレス容器が導入されたことを説明したということです。
古河第一小学校の横濱元己校長は、次のように期待を語りました。

いよいよ学校の給食にもSDGsの取り組みが導入されるようになったというのが正直な感想です。ぜひこれを機会に子どもたちにも環境を考えてもらって、学習に十分生かしていきたいです。保護者にも、家庭でもこれをきっかけに“脱プラ”について考えてほしいとお願いしました。
この日、乳業メーカー専務の小川さんも給食の様子を見学していました。
小川さんは、容器を導入する前、ストローを使わない児童は1クラスあたりの1割程度かな、と考えていたそうです。しかし、予想以上に子どもたちがストローを使わずに飲む姿を見て、こう話しました。
ストローなしで飲んでいる子どもがほとんどで、びっくりしました。地球環境を守るために減らせるものは減らしていかなければならない。私たちの子ども、孫の時代のためにやっていかなければならないと思います。
今後は学校側から「ストローはいらない」という声がでしだい、ストローの配布をやめていき、メーカーとしては将来的には「ストローゼロ」を期待したいとしています。
ひとくちに脱プラスチックといっても、実際に進めていくにはさまざまな心配や課題が立ち塞がります。それでも、一歩一歩踏み出していくことが大切だと感じました。