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「未公表のPFAS漏出事故があった」アメリカ軍・横田基地の現役職員が告発

「PFASの漏出事故があったにも関わらず、それが公表されていないのはおかしいと思って。米軍基地は説明責任があると思いますし、私たち市民にとっては知る権利がある。それでNHKにコンタクトしました」

去年、私たちのもとに1通のメールが届いた。アメリカ軍・横田基地の現役職員・A氏からだった。

私たち取材班は、一部の物質で有害性が指摘されている化学物質「PFAS」の環境汚染について取材してきた。横田基地に近い東京・多摩地区の地下水からは国の暫定目標値を超えるPFASが検出されており、横田基地が汚染源の1つである可能性を指摘する専門家は少なくない。

ただ、アメリカ軍側に取材を申し込んでもなかなか回答が得られず、実態がつかめずにいた。そんな状況の中、真実を知ってほしいと連絡をくれたのがA氏だ。

「軍事機密ではない環境汚染については、きちんと公開して市民に説明するべき」。
現役職員が初めてカメラの前で証言した。

(報道局 政経・国際番組部ディレクター 渡邊覚人)

情報を募集しています

PFASの汚染源や健康被害の実態について取材しています。伝えたい情報をお持ちの方は、以下の「クローズアップ現代・スクープリンク」よりお寄せください。

PFASとは?一部で「発がん性」や「子どもの成長」への影響懸念も

焦げ付きにくいフライパン。
服のはっ水スプレー。
食品の包み紙。

人工的に作られた有機フッ素化合物の総称=PFAS(ピーファス)は、私たちの生活の中で身近に使われている。

“水や油をはじく”という特性があり1940年代から利用が広がった。航空機の火災時などで使われる「泡消火剤」や「半導体」、「自動車の部品」にまで用いられ、現代社会の暮らしを支えてきた。現在、PFASは1万種類以上あるとされる。

しかし、PFASの一部の種類は、自然界に放出されるとほとんど分解されないまま残り、生物に取り込まれると体内に蓄積しやすいことが分かってきた。“永遠の化学物質”(フォーエバー・ケミカル)とも呼ばれ、今も環境中に残っていることが問題になっている。

管理のあり方が国際的に議論されるようになり、PFASのうち古くから使われてきた「PFOS」が2009年から、「PFOA」が2019年から、「PFHxS」は2022年から、国際条約(ストックホルム条約・POPs)で製造・使用・輸入が禁止された。

その健康影響のリスクについて、去年12月、WHO(世界保健機関)はPFOAとPFOSについて発がん性評価を引き上げた。

PFASと健康影響との関連について、海外の研究では「脂質異常症」や「腎臓がん」「抗体反応の低下」「乳児・胎児の成長・発達への影響」などが指摘されており、国際的な関心が高まっている。

PFAS含む泡消火剤を大量に使用していた アメリカ軍・横田基地

国が環境中に含まれるPFASの暫定的な目標値を定めたのは4年前。それ以降、環境省や自治体が汚染状況の調査を進めてきた。そのなかで、国分寺市や立川市など、東京の多摩地域の地下水から高濃度のPFASが検出。専門家と市民が血液検査を実施するなど、住民の間に不安が広がっている。

汚染源の1つである可能性が指摘されているのが、アメリカ軍・横田基地。アメリカ軍が航空機火災などに使う「泡消火剤」にPFASが含まれていたためだ。アメリカ本土でも問題視されていて、現在、アメリカ軍は原料にPFASを含まない泡消火剤への切り替えを進めている。

ただ、かつて基地から漏出したPFASが、今も周辺の土壌や水源を汚染している可能性が危惧されている。

クロ現は去年4月、PFAS汚染と横田基地の関連について報じた。
(▼下の画像をクリックすると放送内容をテキストで読めます)

追跡“PFAS汚染” 暮らしに迫る化学物質(2023年4月10日放送)

その後の去年7月、アメリカ側は「横田基地内で、これまでに3件、PFASを含む泡消火剤の漏出があった」と日本側に情報を提供。さらにこの3件とは別に、泡消火剤が基地内に漏れ出たケースがほかにも4件あったことが、NHKがアメリカ空軍に対して行った情報公開請求で新たに発覚。実態が少しずつ明らかになりつつある。

“未公表の漏出事故は、さらにある” 現役職員が詳細を語る

「米軍の情報公開は、まだまだ不十分。PFAS汚染の事実が知られるべきだ」

去年4月のクロ現放送のあと、私たち取材班の元へ連絡をくれたのが、冒頭のA氏だ。“横田基地に勤務する日本人” “多摩地域の住民”以外の素性を明かせないこと、軍事機密に関わることは話さないことを条件に取材に応じた。

PFAS漏出の懸念となっている「泡消火剤」の使用実態について、A氏が語った。

「消火訓練は定期的に行われていて、以前はPFASを含む泡消火剤を使って行われていました。近くにため池があって、その水と泡消火剤と混ぜたものを使っていました。屋外で行われていたので、普通に漂流水として流れていったり、地下に浸透していったりしていると思います」

A氏によると、PFASの環境汚染が次第に国際的な問題になる中、横田基地内でも泡消火剤の取り扱いは慎重になっていったという。

ところが去年1月、重大な漏出の事案が起きた。

「当時は1月下旬だったので、水道のパイプが凍結して破裂してしまった。そのパイプにはPFASが含まれている可能性がある水が入っていると分かっていたので、基地の兵隊たちは本当に対応が早く、なるべく外に流れでないように対応はしていました。その後、検体をとって分析をして、PFOSとPFOAが検出されたと聞いています」

私たちが独自に入手したアメリカ軍の資料にも、この事案について記載があった。2023年1月に敷地内で泡消火剤が漏れ出したこと、日本の目標値の5万倍を超えるPFASが検出されたことが記されていた。

しかしこの事実は、防衛省が現時点で把握している7件の漏出事案には含まれていない。

“日本の行政機関は、もっと徹底的に調査をすべき”

A氏は、情報を公表しない米軍の姿勢はもとより、日本の行政機関による実態究明が不十分だと感じているという。

米軍基地に身を置いていると、日本の行政が米軍をかばっているように感じられます。しかし、そうした姿勢は逆に米軍側にとっては不信感を持たれてしまうし、結局、下に見られてしまっているんではないかと。結果的に健康影響の不安にさらされているのは日本の国民なのに、日本の行政があまりにも無関心すぎるというか、気がつかないふりをしているのが問題を悪化させているように感じます。


米軍基地はフェンスで囲われているだけなので、漏出事故が起こったら当然外に流出する、水資源を汚染する。だけど米軍基地の中で何か起こっても日本政府は把握しない、誰も把握できないというのは問題だと思っています。環境問題は、透明性がないと誰も気がつかないうちに汚染が広がってしまう。そういったことがあってはいけないと思います。

防衛省は私たちの取材に対し
▼現時点でPFASの検出と在日米軍との因果関係について、確たることを言うことは困難だ
▼立入り調査については、自治体からの要請などを踏まえ、相談しながら対応していく。具体的な要請がなされた場合には、関係省庁で連携し、アメリカ側に伝えていく。
と回答した。

取材後記

横田基地のすぐ隣には、青々とした畑が広がっている。地元の農家が長年耕してきた大切な場所だ。

しかしここにもPFASの汚染があるかもしれない。私たちは農家の協力を得て土を採取。専門の機関で分析を行った。

すると、最大で1キログラムあたり13万4000ナノグラムのPFASが検出された。土壌については国内の基準はないものの、以前、沖縄県の普天間基地周辺の土壌調査で検出された7300ナノグラム(沖縄県が2022年12月12日に実施。PFOSとPFOAの合計値)と比べても驚くほど高い値だった。

農家

「非常によくない。将来的なことも含めて考えないといけない。怒りをどこにぶつければいいのか。農業を専業でやっている人は大変になってくるんじゃないか。野菜に影響がないと良いけど……」

農家に結果を伝えると、無念そうにつぶやいた。

PFAS汚染は、確実に起きている。しかし汚染源を突き止めなければ、汚染の拡大を防ぐことはできない。

PFASの問題は安全保障ではなく「環境」の問題だ。今後、アメリカ軍と日本政府がしっかりと連携し、住民の不安を取り除く対策が求められる。目を背けたり、先延ばしにしたりすることはもう許されない。

情報を募集しています

PFASの汚染源や健康被害の実態について取材しています。伝えたい情報をお持ちの方は、以下の「クローズアップ現代・スクープリンク」よりお寄せください。

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