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“ブラック霞が関”の働き方は変わるのか?現役官僚たちの本音を聞きました

「2024年問題」などで注目を集めている”働き方改革”。

しかし、その政策を担う官僚たちの働き方は改善するどころか、勤務の上限を超えて働く人の割合が過去最高になるなど、深刻な問題を抱えています。

民間企業では労働基準法が改正され、残業時間に罰則つきの上限が設けられましたが、官僚は公務員という仕事の特殊性から、その法律が適用されないのです。

番組では、現役の官僚たちに取材。

過酷な働き方の実態に加え、官僚の長時間労働が、政策や外国との交渉など、私たちの暮らしにも影響を及ぼしていることが見えてきました。

(クローズアップ現代 取材班)

【関連番組】NHKプラスで6/18(火) 夜7:57 まで見逃し配信👇

基準を超えて働く官僚の割合 過去最高に

霞が関の中央省庁で働く国家公務員・官僚は約28万人。

内閣が決めた方針のもと、政府の一員として、社会の課題解決のため政策や法案を考え、税金を使って実行に移します。大臣が国会で政策を説明するための答弁を作ったり、政策を国民に周知したりするなど、私たちの暮らしを支える重要な役割を担っています。

一方で、官僚の過酷な労働環境は“ブラック霞が関”とも呼ばれ、問題視されてきました。

最新の調査では、超過勤務の上限を超えた職員の割合は全体の9.9%と、過去最高。過労死ラインとされる1か月 100時間以上の残業をした職員はおよそ5500人に上っています。(2022年度・人事院)

辞職者の増加 一方で志望者数は過去最低に・・・

こうした中、増えているのが辞職者です。

人事院によると、2022年度に官僚を辞めた人は6000人近くで、2015年度と比べておよそ1.4倍に増加(地方公務員への出向などを除く)。

さらに、「官僚離れ」も深刻です。

昨年度の試験の申込者数は、総合職・一般職ともに、現行の試験制度となった2012年度と比べて、それぞれおよそ3割減少しています。

人事院が25年ぶりに立ち上げた有識者による諮問会議では、いまの状況が続けば「国家の衰退につながりかねない」と警鐘を鳴らしています。

番組に寄せられた50件以上の声

クローズアップ現代の情報提供窓口「スクープリンク」で、官僚の働き方について意見を募集したところ、50件以上の声が寄せられました。

“国会期間中に朝6時から29時まで勤務”(40代・男性官僚)

「唯一無二のやりがいのあると言える仕事だが、国会や事件事故などで深夜の業務になった時、勤務間インターバルが全く考慮されないのが非常に辛く、今後さらに年齢を重ねた時にこのまま勤められるかが不安。大臣レクや会見対応のために朝6時に出勤し、夜は予算委員会の総理答弁や想定問の作成で官邸との調整が29時ごろまで続き、そのまま帰れず机に突っ伏して翌日の勤務、ということも」

“時短なのに100時間近くの残業も”(30代・女性官僚)

「時短勤務だが、社会的に注目の高い課題を担当しているため、100時間近くの残業をした月もあった。夕方は子どもを保育園に迎えに行くため、早朝や土日に残業している。


社会的に注目が高まると、国会での質問や、政治家から資料の要求、説明の依頼が増える。政治家の地元からの要望書への回答作成や陳情者への対応もなぜか官僚がすることも多い。子どもとの時間が削られ、家族の幸せを思うとこのような働き方を続けていくのには限界がある」

現役官僚4人に働き方や本音を聞いてみた 

今回、取材班は、寄せられた声をもとに官僚たちを取材。

現役の若手官僚4人による座談会を開き、働き方の実態や、本音を聞きました。

現役の若手官僚 座談会

現役官僚座談会「官僚の働き方の実態は?」

30代、女性官僚のAさんは若手としての危機感を訴えます。

Aさん(30代・女性官僚)

「とにかく若手の方に業務がものすごく集中する。『これがいつまで続くんだろう』みたいな危機感を、若者は感じている。長時間労働だったり業務の負荷が大きくて、健康を維持するだけで精一杯みたいなところも・・・。20代まではなんとかがむしゃらにやってこられても、結婚や出産をするというライフイベントが重なってくると、子どもを育てながら業務に携わることが出来なくなって、辞めていっちゃった同僚は多くいます。特に女性はそうだなと」

子育て中という30代の男性官僚のBさんも、仕事と家庭の両立が難しい状況を打ち明けました。

Bさん(30代・男性官僚)

「表現が適切かわかりませんが、妻から『平日は母子家庭みたいだ』と言われます。ほとんど育児も家事もできず、土日も疲れて寝ちゃうときもあった。コロナに関わる業務のときが一番大変で、土日も含めて出勤して、夜も遅くまで仕事。当時は学校も休みになって、家族が家に閉じこもっている中、自分1人いないという状況で、本当に迷惑かけたなと思っています」

外国との交渉を担当する30代の男性官僚のCさん。業務量の多さに疲弊しているといいます。

Cさん(30代・男性官僚 国際交渉を担当)

「国際関係の調整をする部署にいるんですが、国際調整というのはあくまで追加の仕事であって、通常業務もやる必要がある。そういった中でテレビ会議で国際会議をするために朝早く出勤をしたりですとか、あるいは深夜にテレビ会議をつなぐために残業をしたりとか、そういったことをしながら昼は変わらず業務をしていますので、正直体が2個ないと仕事ができないところを何とかだましだまし働いているというような状態

20代の男性官僚のDさんは、法律をつくる仕事に関わる際、長時間労働になった経験を語りました。

Dさん(20代・男性官僚)

「法律改正をするときなどは、実際に法律改正の条文を作って、それを国会に提出するという形になるんですけれども、条文策定のときは連日深夜2~3時まで、内閣法制局と条文の調整をするというのが続いて、年末年始も場合によっては出勤して対応するとか、そういう働き方はいまだに続いている。内容が間違っていないか1字1字読み上げて確認するために土日出勤したこともあります」

日本の官僚は人手不足?

働き方の課題として指摘が多かったのは、人手不足です。

日本の人口1000人あたりの国家公務員の数は、欧米と比べて少ない2.9人となっています。

▼フランス 23.3人
▼イギリス 6.3人
▼アメリカ 4.4人
▼日本 2.9人

なぜ、日本では国家公務員が少ないのか。背景の1つにあるのが定員を減らしてきたことです。

国家公務員の数は法律で上限が決められていて、平成の初期には約80万人でしたが、いまは約28万人。国立大学の法人化や郵政民営化に加え、人件費の抑制などを理由に、総数が抑え込まれてきたのです。

その一方、「業務量」の目安となる財政支出は増加傾向にあり、職員1人1人にしわ寄せがいく形になっています。

Bさん(30代・男性官僚)

「やらなきゃいけない仕事はどんどん増えてきているんですけど、それに伴って省庁の定員が増えているかというと、むしろ現状維持か減らすような方向になっている。実は私の同期も3分の1以上が退職をしていまして、辞めた人の代わりを補充はできていないので、残された職員に負担がどんどん重くなっていくと。そうするとまた仕事がしんどくなって退職を考え出すという、非常に負のスパイラルになっているんじゃないかなと思います」

Cさん(30代・男性官僚 国際交渉を担当)

「それでいうと、私のところも中途採用で民間の方に来ていただいて、辞めていった方、あるいは増えていく仕事を埋めようとしているんですが、なかなか追いついていかない現状です。役所には、年に何%人数を減らして業務を効率化しなければいけない機構定員要求というものがあるのですが、そろそろ見直していかないと、限界が来てしまうんじゃないか」

Aさん(30代・女性官僚)

定員はついているんですけど実員がこないということがどこでも聞かれるようになっていて、本当に仕事が回らなくなってきているなと感じています。若い方々が入ってこない魅力のない組織になりつつあるんじゃないかと危惧していて、このままここにいて大丈夫だろうかという不安感が組織の中にまん延しているような気もします」

大きな課題は国会対応

さらに官僚たちの業務をひっ迫させているのは、国会への対応だといいます。

国会で、議員からの質問に対する大臣の答弁を作成する官僚。

こうした国会での審議は、政府の行政運営をチェックする役割を担っています。

充実した審議のために質問は事前に省庁側へ送られますが、この「質問通告」が遅くなると、答弁作成が深夜までかかるというのです。

以前に比べると改善されているといいますが、それでもまだ負担は大きいといいます。

Dさん(20代・男性官僚)

「国会対応も、質問通告が遅くなると、役所の中で分業していても深夜2~3時まで答弁を作成してから、朝7~8時に大臣への説明に間に合うように登庁するとか、そうした働き方になるケースもまだある」

Bさん(30代・男性官僚)

一番困るのが結局質問の日程。委員会(審議)の日程自体がなかなか決まらないときは、日程が決まるまで質問が出ない形なので、予定が立てづらい。我々も1月ぐらいにはこういう法案を出しますというのを一覧にして国会の方にお示しをしていますので、あらかじめのスケジュールは、お互い組んでそれで審議を進めていくということもできるんじゃないかと思います」

さらに、国会対応にかかわる霞が関の慣行も負担になっているといいます。

Cさん(30代・男性官僚 国際交渉を担当)

「朝の4時~5時に、答弁の資料に付箋を貼るような作業を、残業代の単価が(1時間)2~3000円の人や、補佐の方だと4000円ぐらいのような方がやっている。さすがにコスト意識がなさすぎるんじゃないかなと」

Bさん(30代・男性官僚)

「国会の答弁を委員会当日の朝、大臣に説明をするという場合は、まだ紙を使って対面でやるというのが一般的なやり方になっている。朝の答弁の説明もオンラインでできるようになると、特にお子さんがいる職員とかは非常に助かるんじゃないかな」

官僚が政治家の“下請け”になっているのではないかという声も上がりました。

Bさん(30代・男性官僚)

「国会議員の先生が地元の団体の方と面会をされると、その時に要望書をもらうので『要望書に対する回答を作ってほしい』という依頼ですとか、地元の会合に出るのでそのあいさつ文を作ってほしいという依頼はありました」

Dさん(20代・男性官僚)

「若手感覚だと最近は内容というよりは納期だと思いますね。やっぱり締め切りがすごく早いというのが多い。なかなか下請けみたいな感じで大変。(連絡があってから)10分後20分後からオンラインで(対応を求められる)みたいなこともありますし、それに毎回苦しめられています」

官僚の長時間労働 私たちの暮らしへの影響も懸念

官僚の働き方は、私たちの生活にも直結しているといいます。

懸念を示したのは、本当に国民に必要とされている政策が実現できているのかということ。

Aさん(30代・女性官僚)

「官僚をやっていていま一番不安に思っているのは、本当に役に立てているのかっていう疑問を若手はみんな抱えているような気がしていて、国民の皆さまに本当にいいサービスが提供できているのかということは常に不安に思いながらやっている」

Dさん(20代・男性官僚)

「どうしても今の働き方だとずっと日中、霞が関のオフィスに張り付いていないといけない。そうすると世の中で何が起きているのか、政策を実際に活用する人たちがどういう考えを持っているのか触れることが難しい状況があって、国民の方々から見ても政策が使いづらいとか、なんでこういう政策なのかと思うところがあると思う。社会課題を解決するために知恵を出すというところ、政策を立案するというところ、課題をしっかり把握するというところに、全精力を傾けられない」

Bさん(30代・男性官僚)

「これとこれをやってくださいという形で官邸から降りてくるとき、我々としては他のメニューを提示できるだけの時間的なゆとりも人的リソースもない状態でそれをやっているという形なので、国民にとってそれがやっぱりベストなのかなという検証ができていない」

Cさんは、人手不足で準備が足りず、外国との重要な交渉が不本意な結果に終わったと明かしました。

Cさん(30代・男性官僚 国際交渉を担当)

「2国間、あるいは日本対多国間の約束や取り決めを作る条文の中で、『この一文を入れなければ我が国にとって絶対に不利になる』というような場面であっても、非常にタイトに、あるいは少ない人で対応していく中で、その必要な一文が押し込めなかったというようなことも正直ないとは思っていません。それは多分10年後、20年後、日本が国際社会において不利になる原因になっていくような気がしていて。日本の国力がそういったところで下がっていってしまうんじゃないかと危惧しています」

“それでも私たちが働くのは・・・”

最後に、国民の皆さんに伝えたいことはどんなことか、官僚たちに尋ねました。

Dさん(20代・男性官僚)

「霞が関の働き方での様々な制約がある中でも、中の職員はそういう制約の中でできる限り良い成果を出そうと誠実に取り組んでいることは間違いないと思っています。霞が関の働き方の問題について関心を持っていただいて、社会全体で共有される問題になってようやく、実際に霞が関の働き方を根本的に解決するところにつながるんじゃないかなと思うので、まずは少しでも知っていただければ本当にうれしいです」

Bさん(30代・男性官僚)

「霞が関の職員って、みんなが多かれ少なかれ、世のため、人のためになることをしたいというふうに入ってきて、そのために政策を作るということに非常にやりがいを感じていると思うので、政策を作る時間をきちんと確保することが必要。


いま世の中どんどん変わってきていますので、本当は何がいいのかというのを必死にもがきながら考えている。ただやっぱりマンパワーが足りず、なかなか行き届かないところとかがあって、その辺が今後どう改善できるかというのは、我々自身も考えないといけないと思っています」

Aさん(30代・女性官僚)

「私自身はここの中で働いていて、もちろん道半ばで去っていった同僚もたくさん知っていますけれども、本当にとにかく公共のために、人の役に立ちたいと思って入ってきて、過酷な労働環境の中でも何とかやっているような現状じゃないかなというふうに感じています。本当にパブリックマインドが高い優秀な人が多いと私は思っているので、 そういった方々が生き生き活躍できるような組織に、 私自身もこれからしていきたいと思います」

専門家 “官僚の果たしている機能を社会の中で守らなければいけない”

千正康裕さん 元厚生労働省のキャリア官僚・『ブラック霞が関』の著者

「わたしの同僚だった職員を含め、この5年で、一生懸命仕事していた人、“エース級”と呼ばれるような優秀な官僚が辞めるようになっている印象を受ける。民間企業でも人手不足で転職しやすい環境だということもあるが、ワークライフバランスに悩んだり、官僚の仕事に疑問を感じたりして、辞めることを考える人が多い。


必要のない仕事であれば撤退してもいいが、官僚がやっている仕事自体は必要で、むしろ政策課題が複雑に絡み合うようになって、難しい仕事が次々出てきている。それに対応しきれず、逆に変な法律を作ってしまえば、企業や生活者も困ることになる。官僚は、公共のために政策をつくるという他にはない仕事で、そのやりがいも大きい。官僚が果たしている機能を社会の中で守っていくためにも、あり方の見直しが迫られている」

「官僚の働き方」に関する情報を募集しています

官僚の働き方の実態について、今後も取材を続けたいと考えています。

官僚の皆さんの働き方の現状や、抱えている課題、または改善案などを、情報提供窓口「スクープリンク」までお寄せください。

官僚の働き方の問題や今後のあるべき姿については、6月16日(日)午前9時~放送の「日曜討論」でも取り上げる予定です。

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