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解散命令請求~“2世”たちの思いは

安倍元総理大臣への銃撃事件から1年3か月。旧統一教会をめぐる高額献金や「霊感商法」の問題を受けて、文部科学省は教団の解散命令請求に踏み切りました。教団側は「請求は遺憾で、信教の自由のみならず、人権にとって深刻な事態だ」などと政府の対応を批判し、裁判所での審理で争う姿勢を示しています。裁判所が今後、国と教団双方の主張を聞いて命令を出すかどうか判断することになります。

解散命令が確定すれば、教団は宗教法人格を剥奪され、税制上の優遇措置を受けられなくなります。

一方、宗教法人として解散した場合でも、宗教上の行為が禁止されるわけではありません。引き続き信者が教義を信仰し、不当な勧誘などを行わなければ献金を受けることもできます。

親が信者であるがゆえにさまざまな問題に直面してきた“宗教2世”たちにとって、この解散命令請求はどんな意味を持つのでしょうか。

(クローズアップ現代取材班 社会部記者 細川高頌)

社会との分断おそれる“宗教2世”

解散命令請求が出された日 電光掲示板を見上げる田中さん

『私たちにとってきょうが問題を解決していくスタートラインです』
両親が信者だという“宗教2世”の田中悟さんです(30代・仮名)。
10月13日。旧統一教会の解散命令請求のニュースを伝える電光掲示板を静かに見つめていました。

本人は3年前に信仰を離れた「元信者」ですが、韓国での教団の「合同結婚式」で出会った両親は今も熱心な信者で、田中さんは信仰をやめた事実を両親に伝えられずにいます。

田中さんと両親

田中さんが幼いころから両親は教団に多額の献金を続けていたといいます。
家庭はいつも困窮していたということです。

田中さん

「絵の具は新しいものは買ってもらえず、音楽の時間に使うリコーダーも他人のお下がりで、子どもながらに自分の家は他の家庭よりも貧しいと感じていました。恋愛も教義に反すると言われて制限されていましたが、当時は強制されているような気持ちではありませんでした。私たちは信者として理想的な姿だったと思います」。

両親からは「早く就職して家計を支えてほしい。就職しやすいように専門学校に進んでほしい」と言われました。

やりたいことや遊びも我慢して勉強を続け、上位の成績で専門学校に入学。授業料は全額免除になりました。

しかし、両親は必要がないはずの奨学金の手続きをして献金に回してしまいました。その奨学金のほぼ全額を田中さんが返済したといいます。

二人の妹が大学に通うための学費も田中さんがアルバイトで工面したということです。

田中さん

「今思い返せば、学生時代にやりたいことはたくさんありました。でもあの頃は、親の願いどおりに生きなければならないと思っていました」

進路や結婚など、人生のさまざまな局面で親の信仰による制約を受けてきたという田中さん。

それでも親の心情を考えると、教団や教義を否定することには複雑な思いがあるといいます。

田中さん
田中さん

「親は50年以上信仰を続けてきたので、それを否定したら生きる意味を失ってしまうでしょう。親にとっての幸せは死ぬまで信じ続けることなので、信仰は尊重したいと思っています」


田中さんは信者たちの多くが、親しい人を亡くすなどした悲しみやつらい体験、社会での生きづらさを抱えていると感じています。それぞれが宗教にすがらざるを得なかった理由にも目を向けてほしいと話しました。

田中さん

「信者や家族が社会から分断されているこの状況が、解散命令請求でさらに進まないことを願っています。信者たちも勇気を出して、外の世界との相互理解を目指してほしいです」

“解散命令請求は決してゴールではない。
社会にも教団にも居場所を失った信者や2世が出てきたとき、何ができるだろうか”


そう話す田中さんの表情から、この先への危機感が伝わってきました。

”親とたもとを分かつ”ことを選んだ2世

荷物を積み込む杉本さん

解散命令請求を1つの契機に、信仰を続ける親と“たもとを分かつ”決断をした2世もいます。

杉本勝さん(仮名・40代)です。

信者や2世たちが置かれた状況を知ってほしいと、今月、初めてカメラの前で取材に応じました。

両親は、杉本さんが小学生のころ、自宅を訪ねてきた信者に伝道されて教団に入信しました。

先祖代々で所有していた土地を売り、息子である杉本さんに消費者金融から借金をさせてまで献金を続けてきたといいます。

杉本さん夫婦と両親

自身は教団と距離を置きながら、妻子とともに両親と同じ家で暮らしてきた杉本さん。

教団への献金をやめるようたびたび両親に話してきましたが、解散命令請求を前に『これ以上はもうやめてほしい』とこれまで以上に強く説得しました。しかし、杉本さんの思いは届きませんでした。

杉本さん

「親は収入があればこれから先も献金を続けると言いました。激しい言い争いになってしまいました。母からは『子どもには迷惑などかけない。縁を切ってもいい』とまで切り出されました」

「このままでは家族がみんな共倒れになってしまう」

今月、杉本さんは両親の元から離れることを決意し、引っ越しをしました。

愛情込めて育ててくれたことへの感謝の気持ちは今も強く、苦渋の決断だったといいます。

杉本さん

「信仰を引き継げず、親に対しては、心のどこかで申し訳ないという気持ちもあります。教団のことを除けば家族仲は良好でしたし、両親とこの場所でずっと暮らしていけると思っていました。親が過度な献金をやめない限り、被害を受けるのは子どもやその家族なんです」

生い立ちに悩む2世 家族のこれからは…

吉田さん

両親が信者の吉田亮さん(20代・仮名)。

「合同結婚式で出会った2人の子ども」という自らの生い立ちと境遇に悩み続けてきました。

吉田さん

「両親は(教祖の)文鮮明氏が決めた相手どうしで結婚しました。自分は文鮮明氏の意図によって造られた。自然発生的な愛でなく人工的に造られたクローンのような存在に思えてしまうんです。命の価値って何だろう。自分が生まれてきた意味はなんだろうと…」

吉田さんは10年ほど前、同じ教会に通う信者が家族を亡くした際、「祈りのため」などとして多額の金銭を要求されていたことから不信感を抱き、信仰をやめました。しかしその後も、教えに背く事への罪悪感から逃れられず、地獄に落ちるという脅迫観念に襲われることがありました。

去年の夏に取材を始めたころも、安倍元総理大臣の命を奪った山上徹也被告の境遇に自らを重ね合わせて心の調子を崩し、薬が手放せない状況でした。

吉田さんにとって教団は自分の苦悩を生んだ根源であると同時に、決して断ち切ることができない存在でもあるといいます。

吉田さん

「私の名前には文鮮明が選んだ漢字が使われています。信仰から離れても自分の名前を見るたびに教団とのつながりは一生無くならないのだと絶望的な気持ちになるんです」

吉田さんと、40年間信仰を続けている父親

吉田さんはこれまで「両親に何を問うても正面から答えてもらえない」と歯がゆさを感じてきました。

解散命令請求が近く行われる見通しだと報じられていた今月。

「教団のあり方が厳しく問われている今なら、父親も向き合ってくれるのではないか」。

ふるさとに戻り、父親に胸の内を明かしました。

吉田さん

「俺の命って1世の教義の実践のために生まれてきたのだと思わざるを得ない。人工的に生まれた命で、だから自分の命にはそれほど価値がないと思っちゃうわけ。そのあたりはどう思う?」。

父親

「確かに結婚のきっかけは教団だよ。でも、夫婦になるということや子どもを育てるということが本当に嬉しかった。楽しかった。幸せだったよ」

吉田さん

「自分のルーツを知った子どもの苦悩を想像できなかったのかと思う」

信仰をやめた自分、信仰を続ける両親。

教団との関わりの中でバラバラになってしまった家族をどうしていくのか、父に問いました。

吉田さん

「昔から家で問題が起きると“どうすれば解決できますか”と教区長に聞きに行っていたでしょ。教団の教えがなくては進めないような気がしていたんじゃないの?みんなどこに行けば良いか路頭に迷っている状態だと思う。私たち家族はどこに向かえば良いの」

父はしばらく考え込んでから言葉を絞り出しました。

父親

「まあ、それはこれから…これからじゃないかな。どんな信仰をしていても家族が家族であることは変わらないんだからさ…」

父との対話を終えた吉田さん。人生を狂わせてきた教団が岐路に立つ今、家族はどこに向かうのか。その答えはまだ、得られていません。

吉田さん

「これまで両親に自分の本音を伝えるのを避けてきました。悩みがあって想談してもこれまでは『神様の試練だ』と、教団の教義に基づいた答えしか返ってきませんでした。誰にも話さず、自分の中で解決しようとする癖がついていたと思います。今、自分の本音を伝えて、家族として再出発したかったんです。解散命令請求は、現役の信者や2世、脱会した人たちにとっても、大きな意味を持つんじゃないかと思います」

取材後記

旧統一教会をめぐる問題の取材を1年以上続けてきた私は、今回の解散命令請求が、教団の被害に遭ってきた人たちにとって少なくとも1つの「節目」になるのではないかと考えていました。

しかし、取材を通じて見えてきたのは、依然として被害回復の見通しが立たないどころか、さらに献金を続けようとする親との関係に悩む2世たち。自らの生い立ちや境遇に悩み、社会との分断がますます広がってしまうのではないかと不安を感じている2世たちの姿でした。

私たちがその背景に思いを巡らせ、どう向き合っていくのかも問われている。取材を通じて強く感じました。

この記事のコメント投稿フォームからみなさんの声をお待ちしています。

担当 クローズアップ現代 取材班の
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みんなのコメント(4件)

体験談
ひろ
30代 男性
2023年10月24日
元二世です。

信仰に疑問を感じ、脱会について、信頼していた年配の女性信者の方に相談した事があります。
返ってきた答えは
「あなたの両親がやってきた事が無駄になるのよ!全部台無し!辞めるなんて勿体無い!」

勿体無いって一体私の人生を何だと思っているのでしょうか。
私は深く絶望し、勇気を出して相談した事を後悔しました。
また、今後他人に統一教会の事を相談するのは辞めようと思いました。

統一教会二世に信教の自由はありません。
生まれた時から決められた道を歩みます。
辞める自由はありません。

解散命令は宗教二世の希望です。
自分の様に苦しむ人間が減ります様に。
子供達が自分の選んだ道を歩める様に願っています。
提言
酒飲みのおっさん
男性
2023年10月21日
現役信者からの投稿ばかりが紹介されているので反論します。
 統一教会が世間から恐れられるのは当然です。マインドコントロ−ルをかけられて全財産を奪われる。人生の貴重な時間を奪われる。青春を返せ訴訟が全て原告勝訴で終わったのを知ってますよね。
 自分がどうのこうの言う前に被害者がどのような状況になっているか考えて下さい。なぜ山上徹也が殺人犯なのに世間から同情されるのか、それらをちゃんと考えた上で自分がどうのこうの言うべきだと思います。
悩み
現在進行形
20代 その他
2023年10月18日
現役家庭連合宗教二世の者です。
現在、旧統一教会をバッシングする報道のみが横行し、精神的に大きな負担となっており、先日精神科にも罹りました。
旧統一教会の根底にある「他者の為に行動する」という理念を踏み躙られているようで、宗教の自由について人権を侵害されているようにも感じます。
信仰の拠り所を奪われることによって、生きる価値観を否定される現役二世信者の声は無視されるのでしょうか。
真の被害者は偏向報道によって、周囲から好奇の目を向けられる現役二世信者であり、その子供です。恨みを持っている元信者ばかりに話を聞くのではなく、現役二世信者にも意見を求める場が必要だと考えます。
小川さゆり氏などとの話し合いは当人達と教会間で行えば良い問題であり、メディアがいたずらに報道を過熱する必要ないとも考えます。
体験談
てるてるぼうず
20代 男性
2023年10月18日
現役2世です。
大学に入る前までは親の信仰に反抗していましたが、「あなたの人生はあなたが決めたらいいんだよ」の言葉をきっかけとして教義を学び、信仰を持つに至りました。
親が宗教を理由として子供を虐待することのない社会を作ることが、私の使命だと思い生きています。