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"HPVワクチンは同世代に伝わっていない" 動き出した医学部生たち

「知らないまま後悔しないで」。いま医学部の学生たちが語り続けている言葉です。
伝えているのは子宮頸がんなどを予防するためのHPVワクチンについて。

小学6年生から高校1年生までが「定期接種」、今年度17歳から25歳になる女性は「キャッチアップ接種」の対象として、いずれも実質無料で接種することができます。

当事者世代自らが、「がんの予防」について同世代に情報を届ける動きが加速しています。

(鳥取放送局米子支局 記者 大山 雄介)

※11月8日NHK鳥取放送局「いろ★ドリ」に追加取材を行い記事を作成

子宮頸がんやHPVワクチンに関する記事一覧はこちら

「HPVは男女とも感染」 医学生による特別授業

「こんにちは」

鳥取県米子市にある中高一貫校。
2022年11月5日、鳥取大学医学部の学生3人が訪れ特別授業を行っていました。

医学部の学生による特別授業の様子
鳥取大学医学部 学生

「HPVは男女とも感染します。主に性交渉によって感染するんですけど、女性の80%が一生に一度はHPV感染すると推定されています」

鳥取県で初めて行われたHPVワクチンの特別授業。

中学3年生と高校1年生、あわせて50人あまりが参加しました。

大学生たちは生徒に近い年代。
鳥取大学医学部附属病院の谷口文紀 女性診療科長が監修した内容を、親しみやすい形で伝えようとしています。

鳥取大学医学部 学生

「ウイルス感染によってなるがんというのがこの子宮頸がんというものなのですが、このがんの原因は主に95%がHPV、ヒトパピローマウイルスの感染によるものです。
では、子宮頸がんはどのくらいの日本人がなるのか知っていますか?」

学生たちは、全国で年間2800人あまりが子宮頸がんで亡くなり、交通事故の死者よりも多いことを説明。そのうえで、どうすればこのがんを予防できるのか伝えます。

Vcanの説明資料より
鳥取大学医学部 学生

「HPVの感染を防ぐ予防方法にはコンドームというものもあります。
でも、それでは不十分です。もっと確率が高い予防方法としてHPVワクチンというものがあるので、これをぜひ知っておいてほしいです」

「"知って打たない"と"知らずに打たない"は違う」

学生たちがパワーポイントを使って丁寧に解説していたのは、
HPVワクチンの有効性と安全性についてです。

まず有効性についてはアメリカで行われた研究を紹介。
積極的に接種した年代の女性は、他の年代に比べてHPVへの感染率が大幅に減少していると説明しました。

【解説】接種が増えると、接種してない人も守られる?

アメリカでは2006年からHPVワクチン接種が推奨されていて、2011年からは男性も定期接種の対象とされています。そこで、接種が増える前の年代と接種が増えた後の年代の女性でどれくらいHPVへの感染が抑えられているかを調べる研究が行われました。

この研究では、10人中6人ほどが接種した年代の場合、接種が増える前の年代と比べてHPV(6/11/16/18型)への感染率がおよそ78%減少していたことが示されました。さらに、接種した人だけでなく、接種していない人の感染率も減少していたとしています。
これは、「集団免疫効果」と呼ばれるもので、一定の割合以上の人がワクチンなどによってウイルスに対する免疫を持つようになると、たとえ感染者が出ても他の人には感染しにくくなり、結果として免疫を持たない人も感染から守られる効果があることを示す結果だったとしています。

学生たちは安全性についても説明。
厚生労働省の資料を元に、接種後の副反応疑いの報告について紹介しています。

Vcanの説明資料より
【解説】安全性についての厚労省のデータ

厚生労働省は、2014年11月までにHPVワクチンを接種したおよそ338万人の追跡調査の結果を公開しています。
「副反応疑い」として報告があったのは、接種との因果関係が定かではないものも含め2584人。ワクチンを接種した人の0.08%(1万人中8人)が頭痛や倦怠感などの症状が出たと報告されています。
このうち、発症日や症状の経過が把握できた1739人の症状がその後どうなったかについても調査されています。発症から7日以内に回復した人が74.6%。7日以降も含め回復した人は89.1%。調査終了段階までに回復が見られなかったのは10.7%でした。

有効性も安全性も説明をした後、生徒からは当事者としての質問が相次ぎました。

医学部の学生による特別授業の様子
生徒

「これって筋肉に打つ注射ですか?」

鳥取大学医学部 学生

「そう。コロナと似てるやつだよ」

生徒

「打ったほうがいいですかね?」

鳥取大学医学部 学生

「どっちを選ぶか自分で判断するのは難しいよね。
確率が低いとは言え、副反応についても考えた方がいいし、病気になることを防ぐことも考えた方がいい。メリットとデメリットを天秤にかけて考えてもらいたい。お母さんやお父さんともぜひ話し合ってみてください」

鳥取大学医学部 学生

「知って打たない選択をするのと、知らないで打たないというのは全く別のことだと思っています。副反応が絶対にないとは言い切れないし、もちろん痛みもありますので、そのことを伝えた上で両方しっかり考えて打つか打たないか自分で考えてほしい」

"「キャッチアップ接種」は同世代に伝わっていない"

全国への出張授業を続けるVcanでは、さらに力を入れようとしていることがあります。

情報が行き届かず接種の機会を逃した同世代に向けた啓発活動です。

Vcanで代表をつとめる医学部3年生の中島花音さん(20)は「キャッチアップ接種の対象者に情報が行き届いていない」と話します。

Vcan代表 中島花音さん(20)

【2022年5月記事】子宮頸がん・HPVワクチンは親子で学んで デマや誤解で接種を逃した医学生

中島花音さんが啓発活動を始めた理由はこちらの記事でご覧ください。

キャッチアップ接種

1997年4月2日から2006年4月1日生まれで合計3回の接種を受けていない女性がHPVワクチンを無料で接種できるというもの。また、2006年度・2007年度生まれの女性も2025年3月末までは無料で接種することが可能です。

どうすれば同世代に興味を持ってもらえるか、全国の大学や医学部の学生たちがオンラインで集まり、何度も話し合いを重ねてきました。

オンラインで会議をするVcanメンバー

2021年3月の調査では「子宮頸がんの予防としてHPVワクチンがある」ということを「知らない」と答えた人が半数近くに上っていました。
(出典:ルナルナ×シンクパール共同調査(2021年3月))

キャッチアップ接種の対象となる世代の女性はおよそ787万人。
今のままではすべての対象者に情報を届けることは難しいと考えたメンバーたちは、あるイベントを開催することにしました。

READYFORサイト「がんを予防するチャンスを逃した世代にもう一度知る機会を提供したい!」より引用

新型コロナウイルスの影響で思うような大学生活を送ることができなかった学生に向けたイベント、蛍光ハンドペイントイベントです。
普段つながることができない学生や社会人が一同に集まり、楽しみながらHPVワクチンについての理解を深めてもらうことで、自発的に周りの友人たちに伝えてもらえるような企画にしたいと話しています。

Z世代向け啓発イベント実現へ クラウドファンディング始動

クラウドファンディングについて発表する中島さん

11月17日、中島さんたちは子宮頸がん撲滅を目指すライトアップイベント「ティールブルージャパン」に登壇。
2023年3月4日の国際HPV啓発デーにイベントを開催するためにクラウドファンディングを開始することを発表しました。

Vcanメンバーの医学部生 左:中島花音さん 右:大坪琉奈さん
Vcan代表 中島花音さん

「私は知らないまま接種の機会を逃してしまった一人で、医学部に入って初めてHPVワクチンについて深く知ることができました。でも、同世代の多くは自分ごとだとは思えていないのが現状です。キャッチアップ接種は2025年3月までがタイムリミットとなっているので、知らないまま後悔してしまう人を一人でも減らしていきたい」

2022年11月17日 ティールブルージャパン大阪会場の様子

Vcanが始めたクラウドファンディングは2023年1月15日まで支援を受け付けています。

まじめに伝えるだけでなく、当事者世代が興味を持って触れたくなるようなイベント。
当事者世代だからこそできる情報発信が多くの人に届き、がん予防やHPVワクチンを自分ごととして考えるきっかけにつながることはとても大切なことだと感じました。

HPVワクチンについてはリスクとメリットの両方についてきちんと知ることが欠かせません。友人や両親と一緒に考えながら、後悔のない選択に近づけてほしいと思います。

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この記事の執筆者

首都圏局 ディレクター
藤松 翔太郎

「#がんの誤解」「みんなのネット社会」担当。
2012年入局、宮城・福島で勤務し津波・原発事故の取材を行う。その後、クローズアップ現代、NHKスペシャルなどを担当後、「フェイク・バスターズ」「1ミリ革命」を立ち上げ。継続取材テーマ(がん/フェイク情報/原発事故/性教育/子ども)

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