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HPVワクチン 予診票がまだ来ない・・・|接種希望する人はどうすれば?

予防接種では 、対象の時期が近づくと、基本的には自治体から「予診票」や「接種券」などが自宅に郵送されます。
ところが、この4月から接種の積極的な呼びかけが再開された子宮頸がんを予防するためのHPVワクチンをめぐっては、「まだ予診票などが届かない」という声が保護者から相次いで聞かれました。
一体どういうことなのでしょうか。
(社会部記者 小林さやか)

9年ぶりに呼びかけが再開

子宮頸がんの説明資料

予防接種の中でも特に感染対策上、必要性が高いとされるのが「定期接種」です。自治体は原則、公費で接種を行うだけでなく、対象者には個別に接種を呼びかけることが予防接種法で定められています。その接種の呼びかけが9年ぶりに再開されたのがHPVワクチンです。

接種のあと体の痛みやしびれなどを訴える人が相次いだことで、国は2013年に呼びかけを一時中止しましたが、ことし4月、有効性と安全性が確認されたとして呼びかけを再開。
去年11月には、自治体に対して、対象となる人(=今年度、小学6年生~高校1年生になる女性)に4月から順次予診票などを個別に送付(以下、「個別送付」)するよう通知しました。

4月までに送付 7割

自治体 聞き取り調査の様子

なのに予診票が届かないという声が、なぜこれほど相次いでいるのでしょうか。
全国の県庁所在地と東京23区に話を聞いてみました。

(※調査期間は2022年4~5月。調査をしたのは69自治体。学年によって送付時期が異なる場合は、最初に送る学年の時期で集計)

その結果、大半の自治体が「6月までには予診票などを送る見込みだ」と説明したものの、4月になっても送付していなかった自治体が3割近くありました。

さらに、「予診票などを送った(送る)」と回答した自治体の半数近くが「対象年齢の全員には送らない」と答えました。
ちょうど対象年齢に入る小学6年生に対しても送るという自治体は6割で、「高校1年生にしか送らない」という自治体もありました。

なぜすべての対象者に送らないのか尋ねたところ「全員に送付する余裕がない」「接種希望者が一度に増えると医療機関が混乱する」などという説明でした。

キャッチアップ接種の個別送付 大半はまだ

予診票などが届いていなかったのは、定期接種の対象者だけではありませんでした。

この9年間に対象年齢を過ぎて接種の機会を逃した人は「キャッチアップ接種」として、公費で接種を受けられることになっています。

対象は今年度17歳から25歳になる女性(=1997年4月2日から2006年4月1日生まれの人)で、これらの人にも準備が整いしだい個別送付を行うよう国は自治体に通知しています。
ところが、4月中に送付していたのは、名古屋市と福岡市、松江市の3市だけで、「5月までに送る」と回答した自治体とあわせても2割にとどまりました。
3分の1にあたる23の自治体は「送付時期は未定」としています。

さらに、自治体によって対応が大きく異なっていたのが「償還払い」です。

定期接種の機会を逃して、自費でHPVワクチンの接種を受けた人について、国は市区町村の判断で、接種費用を払い戻す「償還払い」ができるとしています。

しかし、今回取材した69の自治体のうち「償還払いを実施するかどうか決めていない」という自治体が4割に上りました。

個別送付 どうして時間がかかる?

なぜ、予診票の送付やキャッチアップ接種を行うかどうかの判断に、これほど時間がかかってしまうのでしょうか。
まず予診票について理由を自治体に聞くと、大半の自治体が次のように回答しました。

自治体担当者

「新年度になってから準備を始めたので対応できなかった」

さらにキャップアップ接種についても、多くの自治体がこう回答しました。

自治体担当者

「詳細が決まったのが年度末ぎりぎりで、予算編成が間に合わなかった」

実は定期接種の費用の大半は毎年、接種対象者の人数に応じて国から支給される地方交付税でまかなわれています。
キャッチアップ接種対象者の費用はすでに国からは支給済みということになっているため、これから新たに接種しようとすると、市区町村で新たに予算を組まなくてはなりません。
しかし、補正予算を組んで財源を確保しようにも、予算案を審議する地方議会は6月に開かれることが多いため、新年度に入ってすぐには対応できなかったというのです。

キャッチアップ接種 “できるだけ早く検討を”

そんな中、産婦人科医などからは「対象年齢を過ぎているキャッチアップ世代には接種するかどうかをできるだけ早く検討してもらうべきだ」という声が上がっています。

子宮頸がんなどの原因となるHPV=ヒトパピローマウイルスは主に性行為で感染するため、性行為を経験する前に接種を済ませることが重要とされているからです。

厚生労働省の担当者も「早く接種した方が予防効果が高いというエビデンス(科学的根拠)があり、自治体にはなるべく早く送付してほしい」とした上で、今の状況について次のように話しています。

厚生労働省担当者

「キャッチアップ接種を実施する方針はことし1月に決めていたが、手続きに時間がかかり、自治体に詳細を示せたのが3月になってしまった。自治体は今、新型コロナウイルスワクチン接種の対応に追われているので、いつごろ送付できるかはそれぞれの自治体の準備状況しだいだ」

予診票届いていない人はどうすれば?

では、接種を希望する人に予診票が届いていない場合はどうすればいいのでしょうか。
取材したすべての自治体がこう回答しました。

自治体担当者

「個別に問い合わせてもらえれば必要な書類を送付する対応などを取る 」

ほとんどの市区町村は、HPVワクチンの接種に関する情報をホームページに掲載しているので、一度確認した上で、予診票の送付などを希望する人は予防接種の担当部署に問い合わせてほしいということです。

多くの自治体は予診票などを送る際、ワクチンの効果やリスクについて紹介するリーフレットも同封しています。
リーフレットを読んでもらった上で、接種を受けるかどうかを家族などでじっくり考えてもらうためにも、できるだけ早くきめ細かな情報が提供されることが望まれます。

この記事のコメント投稿フォームからみなさんの声をお待ちしています。

担当 藤松翔太郎ディレクターの
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みんなのコメント(2件)

オフィシャル
#がんの誤解 取材班
2022年6月16日
コメントをいただきありがとうございます。
「安全性が確認された」との表現についてご質問がありましたのでお答えいたします。

厚生労働省に積極勧奨を再開した理由を確認したところ「エビデンス(科学的根拠)を整理した結果、有効性と安全性が確認できたため」という説明だったことなどから原稿の表記としています。
質問
くま
60代 男性
2022年6月10日
このコラムには、
◆ことし4月、有効性と安全性が確認されたとして呼びかけを再開。
と書いてありますが正確ではありません。
厚労省webサイトには
◆HPVワクチンの接種については、専門家の会議において継続的に議論されてきました。令和3(2021)年11月12日に開催された会議において、安全性について特段の懸念が認められないことが確認され、接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回ると認められました。
としか書かれていません。「特段の懸念が認められない」というのと「安全性が確認された」とは違います。NHK独自の判断でしょうか?