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“がんの原因・予防法を正しく知って”|国立がん研究センター若尾文彦先生に聞く

「がんの原因は○○!?」「○○でがんが治る!?」。
がんについて、さまざまな情報を目にし、「何を信じたらいいの?」という声をよく耳にします。

今回、#がんの誤解では、国立がん研究センターの若尾文彦先生に協力をいただき、がんの原因、予防、検診について、イチから学べる記事を作成しました。
誤った情報で困惑する前に、正しくがんを知ることから始めてみませんか。

(NHK厚生文化事業団ディレクター 栗原佐代子 )

(記事はNHK厚生文化事業団・福祉ビデオシリーズ「あなたに知ってほしい がんのこと」をもとに作成しています)

がんの要因を正しく知り がん予防へつなげる

がんになるリスク要因はいくつかあることがわかっています。
下のグラフは、日本人におけるがんの要因をグラフで示したものです。

国立がん研究センターがん情報サービス
※Inoue, M. et al.: Ann Oncol, 2012; 23(5): 1362-9より
国立がん研究センターがん情報サービスが作成したものを一部改変
国立がん研究センターがん情報サービス
※Inoue, M. et al.: Ann Oncol, 2012; 23(5): 1362-9より
国立がん研究センターがん情報サービスが作成したものを一部改変

具体的な要因として、喫煙、感染、過度の飲酒、塩分過多、運動不足、野菜や果物の摂取不足などがあります。
こうしたリスク要因を減らすことは、がんの予防につながります。

最も効果的ながん予防は「禁煙」

グラフでも突出しているのが、喫煙、たばこです。
喫煙=肺がんと思われている方が多いのですが、喫煙が引き起こすのは肺がんだけではありません
喫煙は肺がん、肝臓がん、胃がん、大腸がん、すい臓がん、子宮頸がんなど、多くのがんを引き起こすリスクになります。

がんの予防のためには、喫煙の習慣がある人は禁煙外来の受診をおすすめします
また喫煙者本人だけではなく、受動喫煙もがんの要因となります。
家族や職場に喫煙者がいる場合、周囲の人が影響を受けることになるのです。

がん予防の対策として一番先に取り組むべきものは禁煙です。

がんの要因「感染」予防と対策について

生活習慣だけでなく、感染によって引き起こされるがんもあります。
主なもので、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)、肝炎ウイルス、HPV(ヒトパピローマウイルス)が挙げられます。

子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス 写真:グラクソ・スミスクライン

日本人に多い「胃がん」は、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)によって、慢性胃炎が引き起こされたあとで、がんになるということが確認されています。
ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)に感染していた場合は、投薬治療による除菌を行います。

肝炎ウイルスには、C型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルスなどがあり、血液などを通じて感染します。感染すると、慢性肝炎、肝硬変を経て、がんにつながります。
病気の進行は薬で予防できるので、肝炎ウイルスに感染しているか、チェックすることで対策が可能になります。

子宮頸がんを防ぐためのHPVワクチン(4価ワクチン)

HPV(ヒトパピローマウイルス)は、子宮頸がんを引き起こす主な原因となります。
HPVに対するワクチンは、小学6年生~高校1年生の女性が無料で接種を受けることができます。
2022年4月から、積極的な接種の呼びかけが再開されています。

HPVワクチンについて知りたいときは、こちらの記事も参考にしてください。

がんリスクチェックを活用しよう

日本人の生活習慣が、がんや他の病気にどう関わっているのでしょうか。
国立がん研究センターがん対策研究所は、リスクをまとめたサイトを公開しています。

国立がん研究センター がん対策研究所 予防研究グループ
Epidemiology and Prevention Division 2016 (※画像をクリックするとNHKサイトを離れます)

国立がん研究センターがん対策研究所予防研究グループが運営している「がんリスクチェック」のサイトを活用し、生活習慣を見直すきっかけにご活用ください。

国立がん研究センターがん対策研究所予防研究グループ
がんリスクチェック
(※NHKサイトを離れます)

「がん検診で早期発見を」

メディアも含め、あらゆる場所で「がん検診で早期発見を」と見聞きします。
しかし、なぜがん検診が重要なのか、なぜ早期発見が重要なのか。
改めてその意味を若尾先生に伺いました。

国立がん研究センター がん対策研究所事業統括 若尾文彦先生
若尾文彦先生

「がんの要因」のグラフからもわかるように、がんの要因が「不明」=何が原因か分からないものが、6割以上もあります。つまり、どれだけ予防を心がけていても、がんになってしまうことがあり、実は100%完璧で、完全ながんの予防策はないのです。
そこで重要になるのが「がん検診」です。
がんの初期は自覚症状がほとんどありません。
その自覚症状がないときに受け、わずかな異変を見つけるチャンスが、がん検診にあるのです。
そのため症状がなく、健康に自信がある人も、定められた年齢に達した人は、必ずがん検診を受けてください。自覚症状がなくても「がん」を早期に発見できる機会です。
生活習慣に気をつけ、定期的にがん検診を受けて、早期に発見し治療をする。ご自身、そして家族、周囲の人と健康でいつも通りの生活を長く楽しむために、お互いに声を掛け合ってがん検診を受診しましょう。

覚えておきたい「5つのがん検診」

国が推奨するがん検診は5つあります。
それぞれに決まった年齢、検診の間隔(毎年1回など)が定められています。
5つのがん検診は住民健診として提供され、地方自治体が公費負担をするため自己負担額は抑えられています。自治体によっては、がん検診の受診率向上を目指して、ある一定の年齢の方や初めてがん検診を受ける方を対象に無料クーポンを送付する取り組みも行われています。

NHK厚生文化事業団 冊子「あなたに知ってほしいがんのこと」より

お住いの地方自治体の健康福祉課など、医療・福祉を担当する部署に問い合わせてみましょう。
また職場によっては、職場の健康診断の一環でがん検診を実施する企業や、 がん検診を含む人間ドックの補助を行う企業も増えてきました。
職場の担当者に確認をしてみましょう。

がん検診を忘れないために

誕生日や結婚記念日など、覚えやすい記念日当日や記念日の前後に、がん検診や人間ドックを設定し習慣化することもおすすめです。
「ケーキを買う」「漫画を買う」「映画館や観劇に行く」など、ちょっとしたご褒美や趣味の予定と合わせ、日程を組むこともおすすめです。

がん検診は一度受けたら終わりではありません。
定期的に決まった間隔で、受け続けることが必要です。

「要精密検査となったら怖い」不安な気持ちはどうしたらよい?

がん検診を受け、要精密検査(要精検)の結果が届き、不安や恐怖がある方もいらっしゃるかもしれません。そんなとき、恐さや不安とどう向き合って、どう行動したらよいのでしょうか。
若尾先生に伺いました。

左:内藤裕子さん(フリーアナウンサー)右:若尾文彦先生
若尾文彦先生

要精密検査(要精検)の結果が届いた場合は、すみやかにお近くの医療機関に予約を取り、精密検査を受けましょう。検診で要精密検査という結果でも、がんが確定したわけではありません。
精密検査でより詳細に調べて初めてがんかどうかが分かります。落ち着いて行動することが大切です。

「自覚症状がないから、まだ大丈夫」「来年、またがん検診を受ければいいか」と安易に自己判断をして、放置をしないことが重要です。

「どのような検査をするのか不安」「どこで精密検査を受けられるか知りたい」という方は、全国にあるがん相談支援センターに相談するのもおすすめです。がんに詳しい相談員が対応します。
結果が届くと、驚きのあまり、慌てて、パニックになることもあります。

一人で抱え込まず、医療機関を訪ねて、より詳しい検査を受けましょう。
医療スタッフには、その怖さや不安な気持ちも含めて、相談してください

NHK厚生文化事業団では、福祉ビデオシリーズ「あなたに知ってほしい がんのこと」(DVD全2巻)を無料で貸し出ししています。(送料のみご負担)
ホームページからの申し込みはこちら (※NHKサイトを離れます)

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お問い合わせ NHK厚生文化事業団「福祉ビデオライブラリー係」
電話:03-3476-5955(平日午前10時から午後5時まで)

この記事のコメント投稿フォームからみなさんの声をお待ちしています。

担当 藤松翔太郎ディレクターの
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みんなのコメント(2件)

体験談
レモン
60代 女性
2023年11月6日
先日がんが判明しました。大腸がんにもう一つ 大腸がんの影響でなのか
違うがんなのか リンパが腫れているそうでまだハッキリしません
時間が限られているので 先生に質問するのも難しく ついネットで検索してしまいます。するとまた不安、疑問でいっぱいになり気分が下がったり安定したり
がんの事は人にも余り言いたくない 可哀そうと思われるのが嫌で・・・
分からないから怖い、もっと怖いのは 手遅れな事
私は 酒、たばこ、遺伝なし、食事も野菜食べるのに
がんってこれ以上どうしたら良いのかよく分かりません

がんという病気がもっと普通に会話の中に出てくるようになればいいなと
思っています
質問
ゾウガメ
60代 女性
2022年6月8日
4年前に近所の呼吸器科クリニックで肺炎の疑いでCTを撮って、1.5㎝の肺腺癌が見つかりました。肺葉切除をして今も再発なく生活しています。紹介された病院や健診センターで「これはレントゲンでは見つからない」と言われました。別の医療機関では「レントゲンで見つかる肺癌は、かなり進んでいる」とも言われました。いろんな見解があるようです。私はラッキーだったのですが、レントゲン検査というのは有効なのでしょうか。