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“警報音の中の散歩が日常になった”【北東部スムイ州に戻った15歳 リザさん】

軍事侵攻の後、ロシア軍が撤退した 首都キーウ近郊の街、スムイ州。州知事が「数百人の市民が殺害された」と主張するこの街に、避難を余儀なくされていた15歳の少女が戻り、生活を再開しています。

かつての当たり前の日常と、戦闘が終わった街を比較する動画を作り、SNSに投稿したリザさんは、友人たちとの日常を取り戻そうとする中でも、あの日の恐怖が鮮明によみがえってくると話します。

(クリエイターセンター 第1制作センター ディレクター 谷 紗耶香)

世界10代ウクライナ通信

【放送】2022年8月13日(土) 午後2:45~3:30 [Eテレ1]
世界の10代が国境を越え語り合うシリーズ。ロシアによるウクライナ侵攻からおよそ半年、泥沼化する武力侵攻に各国の10代は何を思い、どんな未来を描くのか。

"2月24日が人生の中で最も長い一日だった"

スムイ州で暮らすリザさん(15)
スムイ州で暮らすリザさん(15)

「私の町では朝5時に空襲が始まりました。私はもう起きていたのですが、母に 電話がかかってきて、母がとても動揺していたので、私は、ベッドを出たくありませんでした。怖かったです」

再び、スムイ州で暮らし始めた15歳のリザさんは、戦闘が始まった日のことをこう語ります。
学校に行く日と同じように目覚まし時計をセットしていた朝6時までの1時間ほど、「何かが起きている」という恐怖で、起き上がれずにいました。

スムイ州で暮らすリザさん(15)

「アラームがなり、6時にベッドから出て、母に『何があったの?』と聞きました。
母は、『戦争だ』と答えました。
もう1回聞き返すと、母は、動揺を隠しきれない様子で『戦争が始まったのよ』と答えました」

「どうやってわかったの?」、「誰かから連絡もらったの?」と、リザさんは何度も母親に問い続けたと言います。

スムイ州で暮らすリザさん(15)

「母は、最初は父からの電話で知り、ニュースは戦闘の様子ばかり伝えていた、と答えました。このように、2月24日がウクライナ人の人生の中で最も長い一日になりました」

避難を余儀なくされた3月の深夜

戦闘の最中、2週間ほどは自宅に残っていたリザさんですが、3月7日の深夜が「最も怖い夜になった」と話します。

スムイ州で暮らすリザさん(15)

「私はもう寝ていましたが、とても大きな爆音が聞こえました。
テーブルのコップが震え、床が振動しました。私たちは飛び上がって廊下に走り出ました。
廊下には耐力壁が2枚あるので、それがせめてもの”安全な場所”だと思ったのです。夜が明けて、ロシア軍が近所の住宅地に飛行機から爆弾を落としていたことが分かりました。我
が家の頭上をとても低く飛んでいたそうです」

このことがきっかけで、一度はリザさんは別の地域に避難しましたが、一緒に避難できなかった親族のことが気になったり、故郷が恋しくなり、今はスムイに戻って暮らしています。

"かつて"と"いま"を記録した15歳の動画

リザさんが制作しSNSに投稿した動画

リザさんが、私たちに送ってくれた動画の冒頭には、SNSに投稿した、2月24日の前と後で、スマホの画像フォルダがどう変わったかを比較した動画が使われています。

スムイ州で暮らすリザさん(15)

「戦争が始まった2月24日に、私のスマホで撮った画像には、家の近くを通る軍事車両が写っています」

リザさんが自宅から撮影した軍事車両

今も空襲やサイレンなどが続くスムイ。
ここで生活を再開した彼女は、5歳の頃から続けているエアロビクスや友達との散歩という、当たり前だった日常を取り戻しつつあります。

しかし、「少し変わってしまった」と感じる部分があると話します。

2月24日以前のエアロビクスの練習風景
スムイ州で暮らすリザさん(15)

「夏の間、学校がないときは、家の近くにあるグラウンドに行って、エアロビのトレーニングをします。その後は帰宅して友達と散歩にでかけます。

悪くないでしょ?

ただ、これは全部、戦時中に起きているできごとです。
時には空襲警報が鳴り響く間に散歩にでかけます。
でも、もう慣れてしまってこれが私たちの日常になりました」

警報音の中、壊れた街を散歩するのが"日常"になっている。
15歳の少女の言葉とは思えない言葉に驚きました。スムイの街は今も破壊されたまま。
彼女の”日常”の周りには、がれきがそこら中に残っています。

破壊されたスムイの街

ウクライナの各地でリザさんと同じような10代がたくさんいます。
直接的な”戦闘状態”が終わっても、10代の心の傷はいえることはない。
わたしは、彼女の話を聴きながら、そのことを痛切に感じさせられました。

スムイ州で暮らすリザさん(15)

「私は平和が訪れても、このことを忘れることはないでしょう。今も最初の頃の爆撃音を忘れることはできません。他の国の10代には、平和を満喫してほしいです。絶対に自分のような思いはしてほしくありません」

世界10代ウクライナ通信

【放送】2022年8月13日(土) 午後2:45~3:30 [Eテレ1]
世界の10代が国境を越え語り合うシリーズ。ロシアによるウクライナ侵攻からおよそ半年、泥沼化する武力侵攻に各国の10代は何を思い、どんな未来を描くのか。

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