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"仲間も取り返して"【マリウポリで捕虜となった兵士・グリーブさん】

「命があるのだから、まだウクライナのためにできることがあると思うのです」

マリウポリでの激戦で意識不明の重傷を負って捕虜となったグリーブさんは、ロシア兵との捕虜交換によってウクライナへ帰ってくることができました。仲間の多くがまだ捕虜のままで、なんとか助け出してほしいと支援を訴えています。体の傷は癒えていませんが、すでに「ウクライナを守る闘いを続けたい」と決意を語りました。

マリウポリの製鉄所の激戦 戦車の砲撃でがれきの下敷きに

25歳のグリーブさんはウクライナ海軍の兵士として、軍事侵攻が始まった当初からマリウポリ周辺で戦っていました。
戦闘が激化するにつれて、街中にある製鉄所に拠点を移しました。
4月10日、グリーブさんがロシア軍の位置や動きを監視していた時、戦車からの砲撃がグリーブさんのいる建物に命中したのです。

グリーブさん

「戦車が私のいるところへ砲撃してきました。建物が崩れ始め、私は3階から落ちて上から落ちてきたがれきの下敷きになったのです。
生きているか死んでいるかもわかりませんでした。トランシーバーから司令官の声が聞こえた時だけ"自分は生きている、戦いがまだ終わっていない"とわかりました」

ロシアの捕虜として "鎮痛剤もなく ナイフを突きつけられる"

しばらくして仲間によって助け出されましたが、グリーブさんは頭を強くうって脳しんとうを起こし、骨盤やあご、鼻を骨折して左目が見えなくなる重症を負っていました。
戦闘が激化しているマリウポリの製鉄所では助けられないと、グリーブさんは意識がないままロシア側に引き渡されることになりました。

<ロシア側がSNSで公開した動画より>

たどり着いた病院で、ロシア兵からは「ロシア語を話さないと治療はしない」と脅されました。
苦手なロシア語をなんとか話しても、結局ほとんど治療を受けることはできなかったといいます。

グリーブさん

「体のどこを触られても、言葉にできないほどひどい痛みを感じました。鎮痛剤ももらえなくて、ただ痛みに耐えるしかありませんでした。
せめて折れた骨盤を固定するため包帯を巻いてほしいとお願いしましたが、それも無駄でした。骨がバラバラになった状態のまま横たわっていただけでした」

戦争捕虜の取扱いなどを定めたジュネーブ条約では「捕虜は人道的に待遇しなければならない」とされていますが、ロシア側は捕虜たちに対して、何度も敵意を向けてきたとグリーブさんは証言しました。

グリーブさん

「医療関係者は兵士から武器をとり、私たちに向けることがありました。チェチェンから来た兵士は夜中に酔っ払ってやってきて、ナイフ取り出して私の体に突き付けたのです」

捕虜交換で生還 "まだウクライナのためにできることがある"

さらにグリーブさんの心を苦しめたのが、ロシアのプロパガンダニュースを毎日聞かされたことでした。
まだ仲間が必死に防衛している街が「陥落した」といううそのニュースを聞かされ、精神がおかしくなりそうだったといいます。

ロシアのメディアは、そんなグリーブさんたちウクライナ兵の捕虜を撮影までしていました。ただ、ネット上に公開されていた動画を友人が見つけたことが、グリーブさんの解放につながりました。家族らは重傷を負ったグリーブさんが生きていることを知り、ウクライナ政府などに働きかけたのです。

負傷してから2週間あまりがたった4月28日、ロシア兵の捕虜との交換で解放されてウクライナへと生還することができました。

グリーブさん

「ウクライナの救急車に乗せられ、初めて鎮痛剤を打ってもらいました。痛みがないのはなんて素晴らしいことかと感じ、とても心が落ち着きました。ウクライナ語で話せて、病院で治療を断られないというのは幸せでした。
ただ、怖かったのが夜眠ることでした。目が覚めたらまたロシア側の占領地にいるかもしれないと恐れていたんです。自分が安全な場所にいると感じられるようになるまで、3~4日かかりました」

グリーブさんの骨盤には体を固定するための器具が装着され、左目は今もほぼ見えない状態です。
まだ歩くこともできませんが、ベッドの上ですでにリハビリを開始しています。

グリーブさんは「神さまが命を救ってくれたのだから、まだウクライナのためにできることがあると思う」と語り、体が治ったらまた戦場に戻るつもりだといいます。

ロシア国営のタス通信は、マリウポリで捕虜となりロシアに移送された兵士は1000人以上に上ると伝えています。
グリーブさんは国際社会に向けて、今も捕虜としてとらわれたままの仲間の解放を働きかけてほしいと訴えました。

グリーブさん

「私の友だちや仲間の多くが、まだロシアの捕虜になっています。勇気を出してマリウポリを守っていた兵士たちのことを忘れないでほしいです。
兵士たちを取り返すため、兵士の家族やウクライナ政府を支援してほしい、捕虜を探し解放する活動をしている国際団体を支援してほしいのです」

みんなのコメント(1件)

感想
野山草木
2022年7月24日
Twitterでウクライナ兵のツイートを見ていて老若男女『国や自分たちの街を守りたい』という人が多いことに驚きました。
今の日本で自分も含めて本当にそんなふうに思える人そして戦える人はどれだけいるのでしょうか。