
成長のカギは「OBN」の解消!?組織を強くする “愛の10か条”
「女性自身が “管理職はやりたくない” って言うんだよね」
そんな言葉、周りで聞いたことありませんか?
女性の管理職登用がなかなか進まない日本。女性の意識やワーク・ライフ・バランスの問題だとされてきましたが、いま注目されているのは「オールド・ボーイズ・ネットワーク(OBN)」の壁。これを解消すれば組織の活性化が進み、成長が期待できるというのです。
「OBN」を乗り越える10か条とは? 一緒に探ってみませんか。
【関連番組】NHKスペシャル「“男性目線”変えてみた 第2回 無意識の壁を打ち破れ」
2023年4月30日(日) 夜9時~放送
※放送から1週間は、NHKプラスで見逃し配信をご覧いただけます。
「女性だけの問題じゃない」必要なのは男性管理職の気づき
ダイバーシティー経営を支援するNPO法人「J-Win」では2007年に活動を開始してから毎年さまざまな企業の女性社員250人ほどを受け入れ、意識改革や企業の垣根を越えた女性どうしのネットワーク作りを進めてきました。
しかし10年ほどたったころ、女性側の意識をいくら変えても、変わらないものがあることに気づいたといいます。

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内永ゆか子さん(NPO法人J-Win会長理事)
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「トップがいくら旗を振っても、結局は現場の管理職の意識が変わらない限り何も変わらない。でもそこに今、女性たちはほとんどいないわけですね。頑張ってキャリアを上げていこうと思っても、男性社会の壁にぶつかってしまって無意識のバリアで外されてしまうことが多い。何にも変わらないよねって、一種のむなしさみたいなものを感じました。結局中間のコア層の人たちに、『ダイバーシティーは女性のためじゃなくて会社のために、社会のために必要なんだ』『自分たちが無意識のうちにバリアになっているんだ』と分かってもらわないことには、絵に描いた餅だなと」
そこで6年前から始めたのが「男性ネットワーク」。全国各地の企業から現場の男性管理職が集まり、多様性のある組織運営について1年かけて学ぶ勉強会です。

男性管理職たちに最初に伝えるのが、「オールド・ボーイズ・ネットワーク(OBN)」の壁。組織の多数派である男性どうしで作り上げてきた暗黙の了解や慣習、人間関係のことです。明文化されていない約束事や仕事の進め方、会話の仕方に至るまで。男性たちが悪気なく当たり前に取ってきた行動が、女性のモチベーションを下げているというのです。
あなたも無意識のうちに… “OBN”とは、これだ!
OBNの中で男性が無意識にやっているとされる行動は、例えばこんなこと。皆さんも身に覚えありませんか?
★酒席やたばこ部屋で人間関係ができあがり、人事や仕事の割り振りがそこで決まる

★男性どうしの根回しで会議の前に結論が決まっている

★上司の呼び出しがあれば休日でもいとわず出勤するのが当たり前

★育児をしている女性社員に対し、本人に確認せず過剰に配慮して仕事を振らない
(逆に本人に確認せず、時間外の仕事など遂行困難な業務を依頼する)

★無意識に雑務を女性に振る、お茶出しや掃除をいつの間にか女性ばかりがやっている

★一緒に食事に行っても、食べるスピードや歩く速度が速すぎる

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内永さん
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「ひとつひとつは本当に小っちゃなことばかりなんですけど、実はそういうものが組織の“文化”を作っているんですね。今までやってきた価値観、仕事のやり方、評価の仕方というのを、男性どうしはあうんの呼吸で教え合っています。でもそこに入っていけない・分からない女性は、ネットワークの仲間になれない。それは立場が上がれば上がるほど、致命傷になるんです。大したことない話で『あいつは分かってない』とかね。小さな違和感が積み重なることで女性が阻害されてしまうのです」
男性の行動を変える 愛の10か条
「そんなこと言われても、ずっとこのやり方でやってきたし・・・」「自分一人だけ変わることはできないよ」というあなた。安心して下さい。「オールド・ボーイズ・ネットワーク」の壁をなくすために、すぐに取り組めることがあるんです。
2019年に男性ネットワークに参加した宮原淳二さんは、他の企業の男性管理職たちと議論を重ねるなかで、OBNは日本企業に共通する組織の課題だと感じたといいます。

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宮原淳二さん(東レ経営研究所)
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「同じ立場の男性どうしで議論する中で、業界関係なく共通の体験談が出てきました。例えば『片道3時間の出張でも日帰り』という暗黙のルールがあって、6時に東京を出て23時に家に戻るとか。それが当たり前だと、子育て中の人は出張できませんよね。男性は『それができてこそ一人前』みたいなところがあって理不尽なルールに従ってしまっていました。お互いに共感しながら “あるある” を話せたことが、気づきのきっかけになりました」
メンバーの男性管理職がそれぞれの社内で部下に意見を聞いたところ、異口同音に共感の声が上がりました。「若手の男性部下もOBNに息苦しさを感じている」とか、「実はこれは男性だけでもなく、数少ない女性管理職も男性たちと似たような行動スタイルだ」という意見もあったそうです。
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宮原さん
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「女性も男性化した思考スタイルや振る舞いをしないと生き残れなかったのだと思います。管理職ってこんな風に見られているんだと正直ショックでしたが、これを変えていかないとジェンダーギャップだけでなくジェネレーション(世代間)ギャップも広がる一方だと思いました」
管理職たちが無意識に積み重ねている行動を、どうしたら変えられるか。宮原さんたちは1年間の活動の成果を「男性の行動を変える 愛の10か条」としてまとめました。


変革のカギになる“多様性” OBNにとらわれない組織づくりを

オールド・ボーイズ・ネットワークの壁をなくし、多様な価値観を活かせる組織こそが、これからの時代の変革をけん引すると内永さんはいいます。
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内永ゆか子さん(NPO法人J-Win会長理事)
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「今まで多くの会社を成功に導いてきたのは男性ばかりなので、その人たちが作ってきた文化や仕組み、価値観、成功体験が “オールド・ボーイズ・ネットワーク” になっている。それが次のステップに行くときに、実はとても大きなバリアになっているんです。そこに違った意見や見方、違った価値観が入ることで、今までやってきたことが本当にいいのか見直すきっかけになるんですよね。これまで日本はモノカルチャー(画一的な文化)の力で勝ってきたんですが、今この変化が激しくなってきた時代には、多様性が日本を変える、日本の成長をうながす、その転換点になるといいなと思っています」
誰もが力を発揮できる職場にするために
女性管理職が11.5%(2021年度)とまだまだ少ないNHK。私自身、仕事をする中で疎外感を感じたり場違いな存在なのではないかと不安になったりすることが何度もありました。「OBN」は単に“男性の問題”ということではなく、多数派が作りだす組織風土や文化の問題です。自分自身も当たり前だと思っていたことが、無意識に誰かを居心地悪くしているかもしれない、とも思いました。多様な価値観や仕事のスタイルが尊重され、誰もが力を発揮できる職場にするために何が必要なのか、取材を続けたいと思います。皆さんの声や体験談を、ぜひお寄せ下さい。