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女性誌がみつめた“更年期” 200人のインタビューから

「更年期」について18年にわたり連載を続ける女性誌があります。ネガティブなイメージで捉えられがちだった「更年期」という言葉を華やかな誌面に持ち込み、長期連載を続けています。9年にわたりコーナーを担当し更年期世代の女性たちにインタビューしてきたライターと編集部に話を聞きました。“200人の経験と声”から見えてきたものとは?

華やかな雑誌だからこそ「更年期」を伝えたい

40代の女性に向けた雑誌STORY。ファッションやライフスタイルのトレンドを伝えてきた雑誌が、創刊直後から続ける長期連載があります。

2004年に始まった連載『更年期のクスリ』。毎号3ページを使い、ひとりの女性のインタビューを掲載。更年期とどう向き合ったのか、支えとなったものは何かを紹介しています。これまでに登場したのは229人。女優、作家、タレントなど、さまざまな分野で活躍する女性たちです。

創刊直後、更年期の女性が自らの体について語った記事が大きな反響を呼びました。その反響を受けて、「リアルな悩み」にちゃんと向き合う企画があってもいいのでは、と検討が始まったといいます。

副編集長 川原田朝雄さん

当時はまだ、“更年期は触れてはいけないもの”という雰囲気が世の中にありました。それを“もっと明るく堂々と話していこうよ”と。STORYは人生をハッピーに楽しもうということを提案している雑誌ですが、40代は自分のこれから先を考える時期でもある。ちょっと先輩の話を聞いて、いまのうちから準備できることがあるかもしれない、という立ち位置で始まりました。

女性誌に更年期という言葉がまだほとんど登場していなかった時代。少し下の世代だからこそ、深刻になりすぎずに、更年期を扱えるのではないか。先輩の話を聞き、準備をすることで、近い未来の体調の変化に、より良い形で向き合えるのではと考えたといいます。

始まった連載は、「心の準備ができてよかった」「生き方も学べる」と読者からの支持を受けて、いまでは最も長い連載になりました。

“更年期”のイメージを変えたい タブーからの出発

しかし、連載を始めた当初は、登場してくれる人を探すのにも大きな苦労がありました。ライターの柏崎恵理さんが、コーナーを担当することになったのは9年前。当初は断られることも多かったといいます。

ライター 柏崎恵理さん

以前は、“更年期”という言葉を伝えただけで断られることも多かったです。“更年期というタイトルがついているのはちょっと・・・”と。更年期という言葉自体、“秘めなければいけないもの”、“恥ずかしいもの”という意識が根強いことを肌で感じました。受けてくださった方でも、「更年期で女ではなくなると思っていたし、夫にもそう言われていた」という話も聞きました。

更年期のイメージを変えるにはどうしたらいいのか、柏崎さんが大事にしてきたのが写真です。

記事では、「自分が最も輝くと感じる場所」を聞き出し、そこで撮影します。毎回異なる場所でのロケは手間がかかりますが、その場に立ったときの明るい表情をみてもらうことで、更年期のイメージが変わっていってほしいといいます。

この連載で、初めて自らの更年期症状について語った人も多くいます。女優の有森也実さんもその1人です。5年前、自分の体に何が起きているのか戸惑う時期でしたが、初めてその不調を人前で語ることで、自分自身を客観的にみつめる機会になったといいます。記事は共感を呼び、その後も求められれば、包み隠さず話をしています。

ライター 柏崎恵理さん

「こんなに活躍している人でも悩んでいたんだ、閉経があって、症状で大変な時期があったんだ」というのが、多くの読者の安心につながると感じています。「更年期」に対するネガティブなイメージが、ポジティブに変わってほしい。「読んで気が楽になった」という感想を聞くことが一番うれしいです。

NHK武内陶子アナは元気をもらえる場所・新大久保で撮影

「更年期」の症状はまだまだ知られていない

取材を始めてから驚いたのが、更年期症状の幅広さ、そして、それが十分知られていないということでした。

ライター 柏崎恵理さん

ホットフラッシュしか知らない人も。冷えや動悸、めまいなど更年期症状は幅広いのに、情報が少ないために、自分に起きている症状と更年期症状の“ひもづけ”が進んでいないと感じます。ある人は動悸が激しく、心臓外科や内科などいろいろな病院で検査をして、何ヶ月も悩んだ。「知っていたら、まず婦人科を受診したのに」と話していました。多様な症状が知られたら、みんなの意識にひっかかり、婦人科に行ってもらいやすいと感じます。

それだけに記事では、それぞれの人の症状、そして、どんな対処や治療をして改善に向かったのかを書くようにしています。

ライター 柏崎恵理さん

症状は千差万別・ひとそれぞれ。ほかの人がよかった治療法が自分に効かないことも。いろんなケースがあるということを紹介することで、心の準備につながる。それが連載として続けることの意味だと感じています。

先輩たちから学んだ向き合い方・乗り越え方

連載の担当になった当時、柏崎さん自身はまだ更年期症状を経験していませんでしたが、50歳前後から体調の大きな変化を感じるようになりました。

ライター 柏崎恵理さん

不定愁訴(ふていしゅうそ)がすごくて、やる気が起きない、朝起きられない。イライラして、家族にもネガティブなことばかり言って、“お母さん、暗い感じになった”と言われました。電話では「お世話になっております!」と明るく言うのに、電話を切ったとたん、ため息をついて。動悸もすごくて。

症状に苦しむ中、インタビューで聞いた先輩たちの言葉が支えになったといいます。

ライター 柏崎恵理さん

「更年期のせいにして、自分を甘やかしていいのよ」とおっしゃる方がいて、気が楽になりました「自分からカミングアウトして、“更年期だから大変”と伝えると、まわりが優しくなってくれるわよ」とアドバイスくださる方も。だから、私も、家族には「更年期かもしれないから、きょうは店じまい」と言って家事をさぼったりしました。最近はさすがにもう更年期じゃないだろうと通用しなくなっていますが(笑)

更年期は“人生を豊かにするチャンス”

インタビューで話を聞く中で、最も強く感じたのは、「更年期は人生の後半戦を豊かにするチャンス」だということでした。

多くの人が、苦しさから抜け出そうと、新たな挑戦を始めていました。女優の南果歩さんは、筋力トレーニングを始め、57歳で初ライブを開催。タレントの磯野貴理子さんは食べることを大事にするように。ビューティ・ライフスタイルデザイナーの藤原美智子さんはランニングとバレエを始め、更年期は“自分育て”の時間だったと言います。女優の有森也実さんはフラメンコを始め、「違う世界に出会えた。“折れ線グラフの底辺”を経験したからこそ今がある」と語りました。

女優の有森也実さんはフラメンコを始めた
ライター 柏崎恵理さん

更年期に始めたことが、その後の人生=第2フェーズのかなめになり、生きがいになる。自分を見つめ直すチャンスになる。ある女優さんは「人生下り坂しか残っていないと崖をのぞくような気持ちだったけど、残りの人生でやりたいことは何か、自分に向き合う時間になった」と語っていたのが印象的でした。

連載は、2023年の3月号で、229回になりました。更年期への理解が少しずつ広まっていると感じています。

ライター 柏崎恵理さん

今でも取材を断られることはありますが、名刺が名刺を呼ぶというか、“この方が出ているなら”、“こんな風に取り上げてくれるなら”と、受けてもらえるようになりました。昔よりも、更年期=“秘めなければいけないもの”という意識がなくなってきたと感じます。「更年期は誰にでも来る。そしていつか終わる」と思ってもらえたら。生理については口に出して語ろうという機運が高まっています。その波、更年期にも来てほしい!生理のことは話せても、更年期には「生理が終わる=恥ずかしい」という意識がまだあると感じます。そんな意識をひっくり返したいですね。

副編集長の川原田さんは、編集部が連載を続ける中で大きな支えとなっている言葉があるといいます。作家・瀬戸内寂聴さんの言葉です。

副編集長 川原田朝雄さん

瀬戸内寂聴さんは「40代の雑誌なんでしょ。だったら、更年期のことを絶対やらないとだめよ。作家の仲間も更年期で苦しんでいる。女性誌でもっともっととりあげるべきよ」という話をしてくれました。連載を担当するようになって、いつも瀬戸内さんの言葉を思い出し、“途絶えさせてはいけない”という気持を強くさせています。

みんなでプラス「#みんなの更年期」

「更年期」に関する記事はこちらでまとめてご覧いただけます。
https://www.nhk.or.jp/minplus/0030/

【関連番組】
NHKスペシャル「#みんなの更年期」
2022年4月16日放送

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みんなのコメント(1件)

感想
きこ
50代 女性
2023年6月4日
サラリーマンをしていると「更年期のせいにして、自分を甘やかしていい」という状態ができず、人知れずみな更年期による体調不良で自信をなくしている様子が伺えます。
人生100年時代、更年期はそのうち10年ほどと言われています。ここをいかに焦ることなく、孤立することなく自己効力感を上げて生活するか。個人レベルだけではなく、企業も真剣に考えてもらう時代になっていると思います。