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「#みんなの更年期」社会でどんな変化が始まっている?

いま、様々な現場で更年期への注目が高まり、新たな動きが始まっています。NHKスペシャル「#みんなの更年期」を放送した4月から半年。働く女性を取り巻く環境を中心に、社会の変化を紹介します。10月18日は、世界メノポーズデー(更年期の日)。誰にも言えないつらさを1人で抱えている人が、あなたの周りにいませんか?

働きやすい環境への後押し 労働組合は

おおむね45歳から55歳、閉経前後の10年を指す更年期。私たちはこの時期に現れるさまざまな症状が社会に大きな影響をもたらしていることを指摘(“更年期ロス” 100万人の衝撃 離職による経済損失 年間6300億円)。働く更年期世代の皆さんから数多く寄せられる切実な声を伝えてきました(管理職だった私が更年期の症状が原因で退職した話)。

日本最大の労働組合「連合」では、今月6日に発表した来年度の活動計画に「男女の更年期、生理休暇等の課題を可視化し解決に向けた取り組みを進める」という一文を盛り込みました。労働組合が企業の経営側と労働条件や賃金をめぐって交渉する「春闘」でこの課題について取り組むよう、運動を進めたいとしています。

井上久美枝さん(連合・総合政策推進局総合局長/ジェンダー平等・多様性推進担当)

「これまでワークライフバランスなどは運動方針の中で訴えてきましたが、更年期を取り上げるのは初めてのことです。職場で働く女性が増え勤続年数も長くなるなか、職場の課題として取り組んでほしいという要望が多く出てきたため、新たに取り組むことにしました。昔から制度としてはあった生理休暇についても取得方法などに課題があります。芳野友子会長が掲げる『すべての運動にジェンダー平等の視点を』という方針のもと、議論を始めるきっかけとして、現場の実態把握や取り組みを可視化し、休業制度や支援の制度化などにつなげていく必要があると考えています。」

オンラインで集まる“変化を求める声”

社会の変化を求めて当事者自身が声をあげる動きも広がっています。

今年5月、厚生労働省に提出されたのは「職場での生理-更年期差別を法律で禁止してください」という署名。更年期障害が原因で雇止めにあったナオミさん(仮名)が、支援団体などと共に今年3月にオンラインで署名を立ち上げ、およそ2か月で2000筆以上を集めました。

ナオミさん(仮名)

「私自身、病院に通ったり治療を積極的に試したりしていますが、ホルモンのことなので完全にはコントロールできず、どうしても仕事に影響が出てしまうところがあります。それが全部勤務評価などに響くとなると、特に非正規で働いている場合は職を失うことにもなりかねません。なんとか働きやすい、安心して休める、安心して体調を整えられる職場環境が当たり前になってほしいと思います」

青木耕太郎さん(総合サポートユニオン共同代表)

「男女雇用機会均等法では、妊娠や出産、産休・育休の取得などについては不利益取扱いを禁じていますが、ナオミさんのような更年期症状や生理による体調不良で仕事を休んだ場合などについては法律上、不利益取扱いを禁止する明文の規定はありません。自分ではなんともできない生理現象によって職場で不利益な扱いを受ける人がいなくなるよう、国に動いてほしいと考えています」

今年4月には、更年期に特化した「オンライン掲示板」が立ち上がりました。運営する高本玲代さんは、自身も更年期症状と付き合いながら子育てと介護のダブルケアや仕事との両立を模索しているひとりです。当事者や経験者が悩みを共有することで共通する課題が見えてきたり、解決に繋がったりすることを期待しているといいます。

高本玲代さん

「不安感やだるさ、やる気が出ないなど、周囲から理解されにくい症状の悩みが多く寄せられています。同じ経験をしている人がコメント返信をすることで、“自分ひとりではない”という安心感が生まれているようです。身体のことに限らず、家族のケアや仕事など更年期に重なる様々な悩みについて相談する心理的ハードルが下がって、当事者の支えになる場になれば良いと思っています。」

掲示板に寄せられた声をふまえて、先月には「更年期を社会課題に」というオンライン署名も立ち上げました。国をあげた取り組みが進むイギリスの例を参考に、▼健康診断での対応▼組織での対応▼社内教育▼医療格差の是正を掲げて賛同を募っています。
※イギリスの署名キャンペーンの設立者へのインタビュー記事はこちら

動き出した企業 具体的な対策は

更年期障害に向けられる企業の目にも変化が生まれています。
日本航空では今年5月から、更年期のオンライン診療サービスを試験的に福利厚生として取り入れ、薬の処方や宅配の費用を会社で負担することにしました。

日本航空 人財戦略部 島大貴 アシスタントマネジャー

「更年期の症状で昇進の辞退や転職を考えた社員がいます。我慢しなきゃといった感覚や、どの医療機関にかかったらよいのか分からないといった不安を少しでも解消することで社員のモチベーションにもつながり、満足度が上がることは非常に大きなメリットだと思います。当然、仕事でのパフォーマンスの向上につながりますし、お客様に提供していくサービスの品質そのものが向上していくことにつながっていくと考えています」

※同様の取り組みについて詳しい記事はこちら

大塚製薬「健康経営推進プロジェクト」会議の様子

多くの企業にとって悩ましいのが「そもそも更年期症状を我慢しながら働いている社員を把握することが難しい」という課題です。
大塚製薬では今年度、体調不良による仕事への影響などについて、全女性社員を対象にアンケート調査をすることになりました。更年期による症状であると自覚していない場合でも、「仕事に何らかの影響が出ているかどうか」を目印にすることで、背景にある体調不良やその原因を把握し、早い段階で積極的なサポートに繋げることができるとしています。

西山和枝さん(大塚製薬「女性の健康推進プロジェクト」リーダー)

「“体調不良の原因がわからない”とか“この程度でつらいと言っていいのかわからない”など、症状がある本人が戸惑っているケースが多くあるのではないかと思います。これは更年期に限らず月経困難症やPMS(月経前症候群)などでも同様です。今後深く調査していくことで、不調があるにも関わらず対処できていないのはなぜなのか、適切に対処して仕事と両立するために会社としてどんな後押しができるか考えていきたいです」

「仕事の両立支援」 国の研究班が注目するポイントは

更年期症状が仕事や日常生活に与える影響を、どのように把握するのか。岸田総理大臣は今年2月の衆議院予算委員会で「女性の健康を生涯にわたり包括的に支援していくことは大変重要な課題であると認識している」と述べ、国として調査研究を進めていくことを明らかにしました。

厚生労働省が今年6月、更年期症状について初めての調査を行ったところ、40~50代の男女で更年期症状を自覚している人のうち、医療機関を受診していないと回答した人がおよそ8割に上ることがわかりました。

厚生労働省の科学研究費で結成された研究班では、今年度から3年間かけて、更年期症状の具体的な特徴や治療の状況、仕事への影響などの実態調査を進めていくとしています。研究班に加わっているのは、さまざまな分野の専門家。更年期症状と仕事の両立をどう支援していくのか。今後のポイントを聞きました。

安井敏之さん(徳島大学教授) 女性の更年期医療について詳しい

「女性の更年期について臨床の現場で研究を続けてきましたが、個人個人の症状の強さを単純に数値でみることは難しいです。例えば女性ホルモンの値を測れば良いと思われるかもしれませんが、更年期の女性はホルモン値が大きく変動しますので一回の検査では分かりません。こうした課題を明らかにしつつ、職場環境やストレス度合いが更年期症状にどのように影響しているかも研究していきます」

堀江重郎さん(順天堂大学教授) いわゆる「男性更年期」について詳しい

「今回、厚生労働省が“男性更年期障害”を認知したことは画期的なことです。男性更年期の症状に対する理解や対処法を一般の人に普及していくことに加えて、職場の労働衛生に携わる専門家への啓発も必要です。地域や職場で使える“更年期のガイドライン”や産業医に向けた対応指針のようなものを最終的に示したいと考えています」

藤野善久さん(産業医科大学教授) 健康と労働の両立支援について詳しい

「産業衛生の分野では、何らかの体調不良があるまま働いている状態を「プレゼンティーズム」と呼びますが、プレゼンティーズムによる労働生産性の損失は「休業」よりも大きいことが近年注目されています。不調を抱える人の治療と仕事の両立支援に関する研究は、メンタルヘルスやがんなどについて、ここ10年ほどで進んできましたが、更年期はこれまで注目されてきませんでした。まずは更年期障害を抱えながら働く人がどれくらい、どのように困っているのかを把握し、両立支援の道筋を立てることを目指します」

取材を通して

「更年期ロス」について報道してからおよそ1年。取材班には更年期に関する悩みや社会の壁について、多くの声が寄せられてきました。(詳しくはこちら)
こうした声がきっかけとなり、当事者がひとりで抱え込んできた問題に様々な角度から光が当てられ、現実的な模索が始まっています。「私は1人じゃない」と信じられる社会へ。私たちは取材を続けます。

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この記事の執筆者

報道局社会番組部 ディレクター
市野 凜

2015年入局、首都圏局・前橋局・政治番組を経て現所属。コロナ禍の女性不況・生理の貧困・#みんなの更年期などジェンダーや労働に関わるテーマを取材。

みんなのコメント(1件)

体験談
ぴいどん
40代 女性
2022年10月20日
私も46歳、更年期真っ盛りです。1年前くらいから心身の不調が現れ、今年に入りひどくなりました。心療内科を受診、血液検査で更年期の症状だとわかりました。ひどくなる前に専門科に診てもらう事が出来て良かったです。幸い、私の職場は理解がある方なので、体調に合わせて仕事が出来ていますが、更年期について理解があるわけではありません。もっと、みんなに理解してもらえるように、社会全体の認識が変わることを望んでいます。