
「女らしさ・男らしさ」の押しつけ みなさんの声
5月10日に放送したクローズアップ現代「女らしく…って言わないで!声を上げ始めた若者たち」。放送後、この「みんなでプラス」のサイトや、番組のTwitter、YouTubeに掲載した動画などに、「女らしさ・男らしさ」の押しつけにモヤモヤした経験があるというご意見が100件以上寄せられました。みなさんの声をご紹介しながら、「自分らしく」生きるためのヒントを探りたいと思います。
(クローズアップ現代『女らしく…って言わないで!』取材班)
「女らしさ・男らしさ」の押しつけ 経験談
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千葉県・50代女性
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小学1年生から4年生の子どもが中心に通う放課後児童クラブ(学童保育)の支援員です。6歳の子どもの口から「女のくせにゲームに参加するな」とか、人生ゲームをしていても「女だから社長は無理なのに」とか言う女子の声を聞き、明治生まれの祖父のような考えを言う小学生に驚ろかされます。大人が偏った考えを植えつけているのです。
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大阪府・40代女性
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若者だけでなく30代、40代の女性もこの課題にずっと苦しめられてきたと思います。 「あなたぐらいの歳の女性は(家事を)みんなやっているんです!」と、女性が家事をやることを当たり前に押しつける母に対して、父と弟はいつも無言でやり過ごします。家族内で当たり前に会話できる環境にならない限り日本は変わらないと感じます。もう20年、30年と、この「女性らしさ」への抵抗や理解を求めて、家庭内で、ひとりで戦っていますが、「世間は世間」と切り離して考える両親を前に心が折れそうです。
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大阪府・20代男性
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私自身、「男のくせに重いものを持てない」とか、「車を運転しろ」、「男ならこうであれ!」という(周りからの)押しつけを感じます。 私は男っぽいことがとても苦手なので、そういった押しつけを感じるとすごく悲しく苦しい気持ちになります。自分が間違ってると感じたり、こうして生きていちゃダメなんだというふうに感じたり、自己否定の気持ちに襲われます。
男性自身にもまだまだ「男なら」という考え方が根底にあると感じ、女性も男性に対して「こうあってほしい」という暗黙のルールがあると感じます。
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東京都・10代女性
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「らしさ」に悩んでいるのは女性だけではないと思います。私の周りでは、女性らしさに異議を唱える人はいても、男性らしさに異議を唱える人は少ないです。女性らしさだけでなく、男性らしさにもフォーカスするような報道が見たいです。
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埼玉県・30代男性
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“「女なのに…」はNO!”なら、“「男なのに…」もNO!”。次回に、男性らしさを押しつけられる苦しみやその実態、差別についても取り上げてもらいたいです。 今回の話で終わってしまっていては、結局ジェンダー平等なんて実現できないと思います。
「らしさ」を押しつける背景に何が? 専門家は…
「女らしさ・男らしさ」の押しつけの背景には、一体何があるのか。広島大学教授で社会心理学やジェンダー問題が専門の坂田桐子さんにお話を聞きました。

Q「らしさ」を押しつける背景に何がありますか?

やはり(日本の)伝統的ジェンダーステレオタイプ(男女への偏った思い込み)の影響が大きいと思います。「女性(男性)とはこういうものだ」という現状認識だけでなく、「女性(男性)は~であるべき」という規範的な意味合いも含まれます。
女性には“美しさや協調性、従順さ”が求められ、男性には“独立性や強さ、リーダーシップ”などが求められるということがわかっています。例えば一番典型的なものでいうと、男は仕事、女は家庭。そういうジェンダーステレオタイプが「らしさ」の押しつけにつながると考えられます。
Qジェンダーステレオタイプは、どうして生まれるのでしょうか?

ジェンダーステレオタイプは、人が生活していくうちに徐々に知識として蓄積されてくるものです。世の中の男性と女性が、どういう役割についているか、どんな行動を取っているか、どのように評価されているかという現状を見たり聞いたりすることによって、あるいはメディアなどに登場する男女の描かれ方を知ることによって、それが(虚実とりまぜて)知識として蓄積されていきます。
人は目の前の出来事や人物を判断する時に、頭の中にある知識の枠組みを使いますが、「自分は今、こんな知識枠組みを使っている」ということを自覚できることは少ないです。ある女性や男性について判断するときも、ジェンダーステレオタイプ的な知識の枠組みを深く考えず、無自覚に使ってしまいます。そのため、例えば数学の成績が良い女子生徒に対して「女子なのにすごい」というような反応が反射的に生じるわけです。
Q偏ったジェンダー規範は、どんな問題を生むと考えられますか?

ジェンダーステレオタイプは、人が生活していくうちに徐々に知識として蓄積されてくるものです。世の中の男性と女性が、どういう役割についているか、どんな行動を取っているか、どのように評価されているかという現状を見たり聞いたりすることによって、あるいはメディアなどに登場する男女の描かれ方を知ることによって、それが(虚実とりまぜて)知識として蓄積されていきます。
人は目の前の出来事や人物を判断する時に、頭の中にある知識の枠組みを使いますが、「自分は今、こんな知識枠組みを使っている」ということを自覚できることは少ないです。ある女性や男性について判断するときも、ジェンダーステレオタイプ的な知識の枠組みを深く考えず、無自覚に使ってしまいます。そのため、例えば数学の成績が良い女子生徒に対して「女子なのにすごい」というような反応が反射的に生じるわけです。
Q偏ったジェンダー規範は、どんな問題を生むと考えられますか?

例えば管理職の比率で言うと、(日本は)男性より女性の割合が圧倒的に少ない現状があります。女性のリーダーシップ能力は社会でいかされていません。そして、管理職に女性が少ない現状を見て、人は「管理職は女性の役割ではない」とか「管理職の仕事には向かない」などと解釈します。ジェンダーステレオタイプが維持されていきます。
一方、「男らしさ」の押しつけも問題です。育児をやりたい男性でも,男性が育休をとりにくい雰囲気が職場に残っていて結局は育児に男性がかかわりにくい現状があります。「男性は独立的で強くあるべき」という規範のせいで,悩みがあっても人に相談できず、ストレスを抱えこみやすいなどの健康問題にもつながります。
Q「らしさ」の押しつけをなくすために、私たちひとりひとりにできることは?

まずは,自分の中にあるジェンダー・ステレオタイプに気づくことが重要かと思います。他者や自分を見ていて「女(男)だから」「男(女)なのに」という考えが頭に浮かんだ時に、「どうしてこんな考えが浮かぶのか?」「そのこだわり、必要?」と立ち止まって考えるクセをつけるといいのではないかと思います。そして、「らしさ」の押しつけを見聞きしたら、時には「それ、性別関係ないのでは?」と声をあげてもいいかもしれませんね。そのことが、「らしさ」の押しつけのない環境づくりに役立つのではないかと思います。
「らしさ」の押しつけをなくすために
みなさんのご意見にも、「女らしさ・男らしさ」をなくしていくための手がかりがありました。
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女性(地域・年齢 答えたくない)
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○○らしくって、世の中に無数にあります。人は○○らしくに自分を当てはめて苦しく生きています。そのため他人を観(み)るときにも○○らしくを共有しています。一人一人が○○らしくをやめて、人にも「もうやめようよ」と言い、周りからじわじわと○○らしくをやめたらどんな世界になるのか楽しみです。今日から始めましょう。
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和歌山県・30代男性
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「男だから、女だから」で、私も嫌な思いをしたことがあります。そういう意識が強いのは、いつでも上の世代。 価値観が世代を超えられない以上、私たち若者は、りゅうちぇるさんが言うように、自分をしっかり持つしかないと思います。
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宮城県・50代女性
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なぜ料理を作ったり、家事をしたりすることに性別が関係あるのかが分かりません。何事も性別でではなく、できる人がやればいいのです。 女性が少ないからそのボジションは女性を起用というのも違うと思う。適材適所が一番です。
女性だけでなく男性も感じている「らしさ」の押しつけは、その人のやりたいことを妨げたり、将来の可能性をも奪ったりする危険性があることが、近年の社会科学の研究でわかってきました。特に思春期を迎える10代は、他人の評価に敏感になりやすい時期とも言われ、こうしたジェンダーステレオタイプは影響が大きいと言われています。
誰もが男女のくくりに縛られることなく、自分らしさを大切にするためには、どうしていくべきか。番組放送後に多くの声を寄せていただいたことで、その注目の高さと重要性を改めて実感することができました。今後も取材を継続し、解決のヒントを探っていきます。
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