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“更年期ロス” 100万人の衝撃 離職による経済損失 年間6300億円

ほてり、頭痛、憂うつ…。性ホルモンの減少によって起こる心身の不調、いわゆる「更年期症状」が働く人たちに深刻な影響をもたらしていることが、NHKと専門機関が行った初めての大規模な調査から明らかになりました。

更年期症状によって仕事に何らかのマイナスの影響があった、いわば「更年期ロス」にあたる人は専門家の推計で100万人を超えます。中でも「更年期離職」による経済損失は男女合わせて年間およそ6300億円に上ることが見えてきました。

働く現場でどんな問題が起きているのか、調査結果を詳しくお伝えします。

(2022年4月13日に経済損失推計を追記)

国内初の大調査「更年期と仕事に関する調査2021」

更年期と仕事に関するアンケート

働く女性およそ3000万人のうち、45歳から54歳の「更年期世代」はおよそ4分の1を占めます。

しかし更年期に現れる諸症状によって仕事にどのような影響があるのか、これまで大規模な調査は行われてきませんでした。その実態と必要な対策を探るため、今回NHKはインターネット上で大規模なアンケートを実施しました。
調査は「女性の健康とメノポーズ協会」、「POSSE」、「労働政策研究・研修機構」、「#みんなの生理」との共同企画で2021年7月に行いました。

「更年期症状を経験」 女性で約4割

全国の40代と50代の男女およそ4万5千人に聞いたところ、更年期特有の症状を「現在、経験している」または「過去3年以内に経験した」という人は女性で約37%、男性で約9%でした。

「更年期ロス」女性75万人・男性29万人

過去3年以内に更年期症状を経験した人のうち、治療の必要があるとみられる人を専門家の助言のもと およそ5300人(女性4296人・男性1038人)を抽出し、仕事への影響を詳しく聞きました。

調査では更年期症状によって仕事に何らかのマイナスの影響があった人を「更年期ロス」として集計しました。

「仕事を辞めた」
「雇用形態が変わった(正社員から非正社員になった など)
「労働時間や業務量が減った」
「降格した」
「昇進を辞退した」
など、雇用や収入に影響があった人が女性で15.3%、男性で20.5%に上りました。

これは働く40~50代女性では推計で75.3万人、40~50代男性では推計で29.2万人になるといいます。(日本女子大学 周燕飛教授の分析)

「更年期離職」で年間6300億円の経済損失

実際に仕事にマイナスの影響があった「更年期ロス」の内訳を見ると女性では「仕事を辞めた」という人の割合が最も多く、9.4%。男性では「人事評価が下がった・降格した」人の割合が7.8%と最も多くなりました。

この結果をもとに、更年期症状で仕事を辞めざるをえない、いわば「更年期離職」を経験した人の数を試算すると、今の40~50代で女性がおよそ46万人、男性がおよそ11万人にのぼりました。離職によって収入が減ったことなどによる経済損失は、▼女性で年間およそ4200億円、▼男性で年間およそ2100億円と、合わせて6300億円に上ることが分かりました(いずれも日本女子大学 周燕飛教授の分析)。

“更年期離職”の経済損失 年間約6300億円

更年期ロス「自分のせい」と考えがち

「仕事を辞めた」「降格した」など「更年期ロス」を経験した人にその理由を聞いたところ、勤務先や上司に指示・命令された人が一定数いる一方、最も多かったのは「仕事を続ける自信がなくなった」、次いで「職場に迷惑がかかると思った」など “自分のせい”と考えている人が多数に上りました。女性では「育児や介護と仕事の両立が難しかった」という人も10.2%いました。

職場や周囲の対応も影響

さらに更年期症状が原因で職場で抱えた問題について詳しく聞いたところ、「更年期ロス」は当事者ひとりの問題ではなく、職場や周囲の対応に原因があるのではないかということも見えてきました。

降格や人事評価の低下や退職勧奨など労働面での問題に加えて(図・更年期症状が原因で職場で抱えた問題①)、「症状への業務上の配慮がなかった」「偏見を感じた」「からかわれたり軽くあしらわれたりした」「嫌がらせやハラスメントを受けた」という人も少なくありませんでした(図・更年期症状が原因で職場で抱えた問題②)。

「誰にも相談しない」人が過半数

職場で問題を抱えたとき 誰に相談したかを尋ねると、女性では「同僚」、男性では「産業医や主治医」がそれぞれ24%、およそ4分の1に上る一方、「誰にも相談していない」という人が女性では60.8%、男性でも47.2%とそれぞれ最も多くなりました。

家計・生活にも影響

家計への影響が深刻であることも分かりました。更年期症状による収入低下や治療費用の捻出によって生活に起きた変化を聞いたところ、「食費を切り詰めた」「貯蓄を取り崩した」という人が男女ともにおよそ20%に上りました。

求められる「休みやすい制度」「収入補償」

更年期症状と仕事を両立するために、国や職場でどんな支援や制度が必要か尋ねたところ、女性では「育児休暇や生理休暇の使いやすさ」が43.6%で最も多く、次いで「休んだときの収入補償」41.6%でした。男性で最も多かったのは「休んだときの収入補償」40.2%、次いで「治療の経済的支援」34.3%でした。

「誰もが更年期症状を理解できる」環境へ

さらに職場で更年期症状がどのように扱われるのが望ましいか聞いたところ、男女ともに40%近くが「職場の誰もが更年期症状や対処法について理解できる研修(職場の全員への研修)」を望んでいた一方、「職場の人には知られたくない・自分ひとりの問題にしておきたい」という人も女性で9.5%、男性では16.8%に上りました。

更年期は“みんな”の問題

これまで更年期症状によってもたらされる さまざまな困難は「個人の問題」とされ、支援が必要だといった社会的な認知は十分に進んできませんでした。しかし調査に携わった専門家は周囲や社会が適切にサポートすれば「更年期ロス」はなくすことができると強調しています。

(「更年期と仕事に関する調査2021」に関わった 昭和大学医学部 有馬牧子講師)
昭和大学医学部 有馬牧子講師(医学博士)

「ずっと仕事を頑張ってきたこの世代がこれだけ辞めていくということは、やはり企業や社会の更年期への認識がこれまで薄かったのだと思います。更年期症状には安全性が確立された治療法がありますし、『更年期に具合が悪くなるかもしれない』と理解して、本人や周囲が備えられていれば防げる損失です。更年期に合わせた評価制度、研修、休暇などを考えることが大事になってくると思います。」

更年期による症状・治療・職場・生活に関する相談は
▼一般社団法人 女性の健康とメノポーズ協会(https://www.meno-sg.net/
電話番号 03-3351-8001(火曜・木曜 11~16時 無料相談実施 8月は休止)

▼NPO法人POSSE(https://www.npoposse.jp/
電話番号 03-6699-9359(労働相談)
電話番号 03-6693-6313(生活相談)

専門家による調査の詳細分析
https://www.jil.go.jp/tokusyu/covid-19/collab/nhk-jilpt/index.html
※NHKサイトを離れます。

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この記事の執筆者

報道局社会番組部 ディレクター
市野 凜

2015年入局、首都圏局・前橋局・政治番組を経て現所属。コロナ禍の女性不況・生理の貧困・#みんなの更年期などジェンダーや労働に関わるテーマを取材。

みんなのコメント(15件)

悩み
カズ
50代 男性
2022年4月17日
現在50歳で1年くらい前から頭痛、肩こり、倦怠感等が頻繁に出始めて、睡眠障害、頭痛が酷く顎まで痛くなってきています。
提言
ピースまま
50代 女性
2022年4月16日
今、営業職の50代。更年期真っ只中です。漢方を飲んでいるため症状は軽いと思います。
先ほどのキャリアが崩れた方の話もありましたが、私は女性の生理現象は男性陣と共に働き始めた時からハンディであると思っています。
丁度、団塊ジュニア世代が更年期世代。
親の時代は、会社で働く女性は少数だった。男女平等と言われて働いて来ましたが、最近は避けられない性に気づいたので、男性女性・ジェンダーレス…それぞれの特性を受け入れる社会、男女雇用機会均等の解釈を考え直す時が来たのではないかと思います。
感想
みかん
50代 女性
2022年4月14日
4年前から症状が出始めました。フルタイムの仕事をしています。投薬治療を行なっていますが、症状に波がありつらいです。社会の雰囲気が更年期なんかで休むなんてと、まだまだ理解が得られていないと感じます。

更年期休暇や勤務時間の短縮など取りやすい環境になるよう啓発をお願いします。
体験談
コニー
50代 女性
2022年3月10日
やっと更年期についてスポットが上がって、世間にも言いやすくなりました。障害とついても何の社会保障も無い私達は、職場を追われ家庭でも崩壊しかねない状況。唯一の拠り所は病院ですが、婦人科では報酬の少なさで対応できず、結局、心療内科しかありません。そこに行き着くまでの時間ロスや犠牲は本当に大きいです。
質問
あは
50代 男性
2022年3月3日
男性更年期については、どういう姿勢でしょうか
ゆび
50代 女性
2022年2月23日
47歳の時に、重い更年期症状で仕事を辞めました。当時、某行政機関で臨時職員をしていましたが、50代後半の女性上司に更年期障害の知識が全く無く「これだから女は駄目だ」みたいな事を言われました。その発言は今でも心の傷となって残っています。早く、更年期障害に対して理解のある社会が来る事を願っています。
あも
2022年1月3日
休職中。「いつでも戻ってこい」って言われる、「どう?もうそろそろ来れるんじゃない?」と言われるのがつらい。「1時間でもできるんじゃ?」と言われるが、できていたら そうしている。いくさきざきも申し訳ないって思う。辞めようと考えてる。金がそこをつく、働けない悪循環で、もうどうしたらいいのか思考もできない。
ブギー
50代 女性
2021年12月16日
先月50歳なりました。48歳になった頃から不調を感じる日が多くなり、特に肩こり、関節痛、腰痛、頭痛に苦しみました。動画共有サイトで更年期障害の動画を片っ端から見て、ホルモン補充療法を知り、婦人科へ自らその治療をお願いしました。その前にもいくつか婦人科には行っていましたが、補充療法の提案はありませんでした。私の場合、この治療で体の痛みはかなり楽になり、なんでもっと早く…と思いました。
はるみん
50代 女性
2021年11月6日
更年期の症状は40歳になってからPMSという形で出始めました。現在50歳。婦人科で受診していたものの更年期ではなく月経困難症とこと。症状がかなりひどいと分かったのは、派遣社員として、女性だけ、年齢も同じくらいの方達という環境で、他者からの意見で知りました。朝はだるいくらいでしたが、10時ごろに頭痛、30分間後にけん怠感、30分後には発熱。午前中には一気に体調が悪化してしまいました。
ペロスリ
女性
2021年11月6日
更年期を取り上げてくれてありがたい。イライラする、突然不安が込み上げるなどの症状があり、テレワークでのストレスも相まって思うように仕事の生産性があがらない。毎日のように会社を辞めたいと考えてしまう。
よここよこよこ
50代 女性
2021年11月5日
フルタイムでのお仕事を頑張っていらっしゃる方には、最優先で1年に1回の健診で更年期対策に気軽に取り組めるメニューがあるべき。私は週2でパートの身だが体調について家族の理解度も低いし、心身共に変化があることに寄り添ってもらえずつらいと感じる。コロナ禍で不規則な在宅勤務の娘たちがいるため、話しを聞いてあげる立場と思いながらも、ひとりで家に居ることで自分のバランスを保ちたいと思う。
Auok?nonnon
女性
2021年11月5日
なぜ年代性別を決めるの?
60代に入って症状がでている人は無視されるの?
がちゃぽん
40代 女性
2021年11月5日
離職を余儀なくされることは社会全体での働き手の喪失になりますが、その人が働かないでも生きていけるのであれば無理はしないほうがいいと個人的には思います。あとで身体にガタがくる気がします。
キャリアを継続するよりも、辞めても再就職しやすい社会であるべき。
日本の労働市場にもっと流動性があると良いと思う。
マラ
50代 女性
2021年11月5日
私は女性が活躍できますよ!という企業で働いてますが、実際の現場では、全く表に出ておりません。みな抱え混んでるのかな?仕事できなくなると、給料に直接ひびきます。女性を多く雇ってる企業なので、考えてもらいたい。
みーさま
40代 女性
2021年11月5日
突然の目眩、怠さの更年期うつになりました。
私の場合は、鍼治療で回復しましたが、婦人科では、症状出るのが早いね。と取り合ってくれませんでした。