
男らしさ・女らしさに縛られてない? からだとこころの話③ Vol.16
“性”について考える『からだとこころの話』3本目は、性別をめぐる固定観念についてです。知らず知らずのうちに、“思い込み”や“決めつけ”をしていませんか。
『男らしさ・女らしさに縛られてない?』
男性は、積極的、社交的で、「外で仕事」?
女性は、やさしくて器用で、「家事育児」?
いま、共働き世帯は専業主婦世帯より多いんです。
役割・生き方は人それぞれ。
みんなが、自分らしく。
(監修:順天堂大学 教授 西岡笑子、慶應義塾大学大学院 特任准教授 本田由佳)
NHKが3月末に全国の18歳以上を対象に行った世論調査*で、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方について、賛成か反対かを尋ねたところ、「反対」「どちらかといえば反対」を合わせた『反対』は5割近くを占めた一方、「賛成」「どちらかといえば賛成」を合わせた『賛成』も4割に上りました。

男女別では、回答に差はありませんでした。年代別にみると『反対』と答えた人は、60代までは5割以上~6割前後で多数を占め、『賛成』を大きく上回りました。これに対し、70歳以上は、『賛成』が5割を超えて、『反対』を大きく上回っていました。

では、実際に、夫が外で働き、妻が家庭を守っている世帯はどれくらいあるのでしょうか。国の調査によると、1990年代半ばから2019年まで「共働き世帯」(雇用者の共働き世帯)の数は、「専業主婦世帯」(男性雇用者と無業の妻からなる世帯)より増え続けていて、今では2倍以上です。

多くの人の“思い込み”と実態に大きなギャップがあることが分かります。
「性別への“思い込み”にとらわれないことが、自分自身の、そして、周りの人たちの可能性を広げることにもつながります。」
順天堂大学 保健看護学部 教授の西岡笑子さんは、公立中学校2年生に向けた「ジェンダーフリーについて考える」授業でそう伝えています。看護学生の実習の一環で行っているこの授業。まず、中学生に髪の長い子どもの写真を見せて、「女の子・男の子どちらと思う?」と尋ねます。「女の子」と答える生徒がほとんどですが、写真の子どもは実はウイッグ・ドネーションのために髪を伸ばしている男の子。さらに、職業でも、男性のキャビンアテンダントもいれば、女性の医者もいるなどの実態を伝えることで、社会がつくり出した性別をめぐる固定観念が、いかに自分たちの思考や行動の幅を狭めてしまっているか、“気づき”を促しています。
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“性別の思い込み”にとらわれないために
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まず、自分の中にある“思い込み”に気づくことが重要です。そのためにも周りと話すことをおすすめします。人の話を聞く中で、自分の意見と同じ・違うなどと考えながら、おのずと自分の身の回りのことを振り返り、自身の考えが整理されていきます。
自分の中にある “思い込み”に気づき、その“思い込み”から自分を解放することで「一人の人間」として生きやすくなり、そして周りの人たちのことも尊重できるようになります。そういう人が増え続けることが多様性と包容力のある社会につながっていくと思います。
「男だから」「女だから」ではなく、「あなただから」「自分だから」という考え方を身に着けたいですね。