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親には言いたくない!性別に違和感がある子どもたち

「女の子扱いされたくない」
「胸がイヤ」
「声変わりつらい」
生まれたときの体の性別に違和感があることで、悩む子どもたちがいます。

「岡山大学ジェンダークリニック」が、受診した人を対象に行った調査によると、自分の性別に対する違和感を持つ人は、約9割が中学生までに自覚することがわかりました。しかし、その多くが親や先生など身近な大人には知られたくないとこたえたそうです。

性別に対する違和感は、ときには希死念慮などにもつながる深刻な悩みになることもあります。

子どもたちを追い詰めないために、私たち大人ができることはなにか。専門家に取材をしました。

(「おとなりさんはなやんでる。」班 ディレクター くぼまどか)

子育ての悩みをシェアする掲示板。
「性別に違和感がある子ども」に関する経験談を募集中!娘が「俺」と言ったり「彼女」ができたり…戸惑う父。どうすれば?

岡山大学大学院教授 中塚幹也さん
産婦人科医、GID(性同一性障害)学会理事長
「岡山大学ジェンダークリニック」で、性別に違和感がある子どもの診察もしている

性別に対する違和感とは

ディレクター

まずはじめに、性別に違和感があるというのは、どういうことなのか教えて下さい。

中塚幹也さん

「性のあり方」は多様です。男か女の2種類だけではありません。

例えば、生まれたときの性別が「女性」でも、「心の性」が「男だ」とはっきり感じる人もいれば、「女でもないし、男でもない」、「男、女、どちらでもあると感じる」人もいます。ですから、「男」か「女」かという生まれたときに割り当てられた性別に対して、違和感をもつことがあります。


男、女、どちらであるとも感じる場合のイメージ


しかし、この「性のあり方」については、子どものうちは特に、自分ではっきり説明できるわけではなく、性別に違和感があったとしても、何かモヤモヤとした感覚としか理解できず、自分でもうまく受け入れられないこともあります。また、その感じ方には「揺れ」があって、日によって変わったり、年齢によって変わったり人もいます。違和感が、ちょっと楽な日もあったりとか、すごく嫌な日があったり。40代、50代になってから、すごく違和感が強くなったりする人もいます。したがって、みんな一生変わらないものというわけでもありません。


性別に違和感があるというと、とかく「心は男性、体は女性」「心は女性、体は男性」というように、ステレオタイプみたいに思ってしまいがちですけれど、揺れる事もありますし、それからどちらでもない(男でも女でもない)というふうに感じる場合も、どちらでもある(男でもあり女でもある)というふうに感じる場合もあったりします。


性別に対する違和感を理解するときには、「性のあり方」にはすごく幅があって、グラデーションのようなものであるということは理解しないといけないと思います。

ディレクター

性別に違和感がある子どもたちは、親には知られたくない子が多いということでしたが、それはなぜなのでしょうか。

中塚幹也さん

そもそも、性別に違和感がある子どもは、学校で悩んでいたり、生活の中で困りごとがあったりしても、それを周囲に気付かれないように隠していることがほとんどです。


とりわけ親に言わない理由として多いのが、自分が「人と違う」ことが、親に対して申し訳ないと思ってしまったり、親に迷惑かけるのではないかと思ってしまったり、という気持ちがあります。また、家庭の中で交わされる、なにげない言葉が原因の場合もあります。自分の事を言われていないにしても、性的マイノリティの方たちのことをあまりよく思っていないような発言、例えば、「男は男らしくするのがいいよね」とかそういう会話があるだけでも、子どもは親に言い出せなくなります。


しかし、親には言えなくても他の人に打ち明ける場合もあります。最初に誰にカミングアウトするかというと、「仲のいい友だち」。ただのクラスメートではなくて、親友や、本当に仲のいい友達、例えば小さいときから一緒に育っているような子に言えるケース。それから大人でいえば、ちょっと斜め上の関係性の人。例えば、担任の先生には言えないけれど、習い事の先生とか保健室の先生には言えるという子もいます。家庭の中でも、親には言えないけれど、仲のいい兄弟・姉妹や、いつも小さいときからよく知っている親戚のおばさんには言えたとか、そういうことは多いと思いますね。

中学生は“危機の時代”

ディレクター

中塚さんは、性別に対する違和感で悩む子どもは、中学生の頃に特に注意が必要とおっしゃっていますが、それはなぜですか。

中塚幹也さん

「中学生は危機の時代」と我々はよく言うのですが、性別に違和感がある子たちにとって思春期はつらいことが重なる時期だからです。


まずは学校。制服を着たくない。小学校までは大丈夫だったけれど、中学では制服を着るように求められる。しかも女子はスカートと決められているということも多いです。もちろん、男女はっきり分れているトイレに行きたくない、修学旅行で男女に分けられるのがつらい、水泳の授業で望まない水着を着たくない・・・など、性別に違和感がある子どもたちは学校生活ではつらい思いをする場合が多いです。親には理由がわからない「不登校の原因」が性別の悩みであるということもあります。

男女できっぱり分かれる制服やトイレ、水泳の授業や修学旅行


また、恋愛相手が、体の性から見て異性ではないことも多く、打ち明けられない。「彼氏はできた」「彼女はできた」といった友達との会話がつらいということも、中学生では増えてきます。


さらに何といっても大きいのは、体の変化が顕著な時期でもあります。二次性徴といいますが、女の子の胸が大きくなる、生理がくる、男の子であればヒゲが生えてくる、声変わりする…。どんどん自分の望まない性の体になっていきます。生理が嫌で、「内臓を全部かき出したい」「死にたい」という子どももいます。


私たちの調査では、希死念慮がとても高くなるのが、この中学生の時期です。


悩みを親に言わずひとりで抱え込むケースも多い

ディレクター

でも、「親だけには知られたくない」と、子どもたちに悩みを隠されてしまったら、親はどうやって気付いたり、助けてあげられたりするのでしょうか。

中塚幹也さん

子どもに性別に対する違和感がある場合、どんな悩みごとや困りごとが起きやすいのか、具体的なケースについて事前に知っておくと子どもが悩んでいることに気付きやすくなります。

「性別に違和感がある子どもたちが」が実際に遭遇した困りごと
番組に届いたおたよりから


●中学に入るときに、制服でスラックスを選択しましたが、友だちで「え?女の子だよね?」と聞いてくる子がいた。「女です」と明言するのも嫌だと感じて、どう答えていいかわからず、苦しかった。「生まれたときの性別をちゃんと受けとめられるのが普通の人?自分っておかしいのかな?」と感じて怖かった。

●中学の頃、自分の胸が大きくなるのが嫌なのに、体のラインがはっきり目立つ女性用の水着を着るのが嫌で、プールの授業をほぼ休んでいた。「生理と重なった」「水着を忘れた」と毎回理由をつけるのも苦しかった。

●小学校のときになぜか女子トイレに入りたくなかった。大人になった今は、「心が男」だと言えますが、当時は理由も言えず「トイレが汚いから一日中我慢している」と親に言っていました。

修学旅行で着付け体験があった。女は着物、男は甚平、と分けられていたが、可愛い柄の着物を着たくなかった。男女関わらず、甚平を選択できるようにしてほしかった。

ブラジャーをつけたくなかった。女性の象徴のような感じがして。でも、胸が大きくなって、しかたなく薄めのシンプルなスポーツブラを選択。スポーツをしていたので、親に本当の理由を言わずに済んだ。

●中学のころの水泳の授業は一回も出ていません。自分は男子扱いが嫌なのに、胸があらわになるアンダーしかない男子用の水着を着なくてはならないことが苦痛だった。でもその理由を言えなくて、嘘をついて授業を休んでいました。

●女子の友達と一緒に遊んでいるのに、トイレは分かれて男子トイレに入らなければならず、それが嫌で、トイレをずっと我慢していました。

ディレクター

こうした経験談を知っておくと、子どもがプールやトイレのことで困っていたら、「もしかして性別に違和感があるのかもしれない」と気付くことができそうですね。

中塚幹也さん

ただ、気付いたからと言って、子どもに根掘り葉掘り聞いたり、「こうした方がいい、ああした方がいい」と親の意見を押し付けると、子どもはかえって悩んでしまったり、余計につらくなってしまったりする可能性があります。私が見てきた子どもの中には、親がしつこく聞いたり指示をしたりしたことで、もう話したくないと言い出したケースもありました。


親もわが子が心配ですし、口を出したくなる気持ちもわかりますが、「ちょっと待つ」ことが必要な場合もあります。口は出さないで見守る、受け止める、そっと隣にいる、というイメージでしょうか。


やはり大事になってくるのが、普段から何か困ったことがあったら言ってくれるような環境を作ることだと思います。性のことだけじゃなく、子どもにとっては、いろんな悩みってありますよね。それを、「親には言えない」というふうに思うのか、それとも「困ったことがあったらすぐ親に言おう」と思うのか…。そういう親子関係を意識することだと思います。


そのためには、子どもの意見を否定しない、親が味方でいるよという姿勢を普段から示す、性についてのドラマやニュースを見たときに、少なくともネガティブなことを言わない。できれば、ポジティブな話題として話すことを勧めたいと思います。


ドラマやニュースを見たときに親子で話題に

ディレクター

性別に違和感がある子どもに関して、親が得ておくべき知識には、他にどんなものがありますか

中塚幹也さん

医療的なサポートにはどんなものがあるのか、知っておくことはよいことだと思います。


たとえば、「岡山大学ジェンダークリニック」では、日本精神神経学会のガイドラインに沿って治療を行っています。


生まれたときの性別が女性で、胸や生理など体の特徴に強い嫌悪感をもつ場合、どのような治療の選択肢があるのか、いくつかご説明したいと思います。


【二次性徴抑制療法】(二次性徴の始まるタナー分類の2期(11歳頃を中心に、10~13歳と個人差がある)から)

二次性徴に伴って、どんどん自分の望まない性の体になっていくことを一時的におさえる治療です。生理や乳房が大きくなるのが一時的に止まります。保護者の同意と治療への協力が得られる場合、小学生や中学生でも治療を行うことができます。


【性ホルモン療法】(15歳以上)

「男性ホルモン製剤」を使用することで、生理がとまったり体毛が濃くなったり、体に変化が起こります。少なくとも1年はカウンセリングを行うなど慎重な検討と判断を伴います。


【乳房切除術】(18歳以上)

乳房を切除し、胸を平らにする外科的手術のこと。

親の無関心・無知が招く“リスク”

ディレクター

性別に違和感がある子どもが親に打ち明けられず、トラブルに巻き込まれるケースがあると聞きました。具体的にどんなことがあったのでしょうか。

中塚幹也さん

親に悩みを言えない子どもが、ネットで薬剤を購入してしまったケースがありました。中学生でも、海外のサイトからホルモン剤を輸入して飲んでいたみたいな子もいます。しかし、そうしたものには、本当のホルモン成分が少なかったり、有害なものが入っていたりする可能性もあります。また、本人が体を変えたい一心で、大量に使っている場合もあり、いろんな健康被害が起こるケースもあります。


また、乳房に違和感がある子どもが「胸をつぶすシャツ」をネットで購入することも多いですが、無理して長期間使用すると乳房が変形してしまう可能性があります。そうすると、乳房切除術を希望したときに、手術自体が難しくなる場合があります。


親の理解 その先の人生にも関わる

ディレクター

やはり、性別に違和感がある子どもにとって、親が理解することが、何よりも大切だということでしょうか。

そうですね。性別への違和感を相談できる人がいるかどうかで、その後の人生が大きく違います。私たちのクリニックを訪れる方でも、周りに1人でも話せる人がいたかどうかで、その後、うつになる・死にたいと思う頻度は全然変わってきます。


悩みを話すことができる友だちや兄弟も大事ですが、やっぱり親だと思うんですよね。親が理解してくれるかどうか、親にカミングアウトできるかどうか、カミングアウトしたときにどういう反応なのか、というのはそのあとの人生にもすごく影響してきます。


子どもが性別への違和感を話してくれたときに、親が受け止めて肯定するには「親の知識」が大事になってくると思います。親が、すぐに子どものことを理解できなくても、「理解してくれているんだな、理解しようとしてくれているんだな」と子どもが感じると、子どもからいろいろ話をしてくれると思います。


取材を通して

性別に違和感があると話してくれた中学生がこんなことを言っていました。

「自分の違和感のことを伝えていない友だちから『ねぇねぇ、LTBGQって知ってる?キモイよね?』と言われて、傷つきました」

また、ある中学生は、

「クラスメートに『同性同士でつきあうことの意味が分からない。何かに影響されてるんじゃないの?』と言われて、自身も同性が恋愛対象だったので傷ついた…」

これは、おとなになって、子どもの頃を振り返ってくれた方の言葉です。

「自分は女の子で、幼稚園の頃から、女の子が好きだったんですけど、先生から『好きな男の子いる?』と聞かれて、(好きな子が男の子じゃないということは、なにかおかしいのかもしれない。この気持ちは大人に言っちゃいけないんだ…)と感じて、それから大人になるまで誰にも言えませんでした」

この方は、その後、高校を卒業するまで、性別への違和感について誰にも言いませんでした。学校のトイレを一日中我慢して、恋愛の話は周りに合わせて、嫌な気持ちを我慢して制服を着ていたと言います。そして、中高生のときの気持ちをこう話してくれました。

「学生時代に自分らしいっていう言葉はゼロでしたね。自分らしさをなくしてなくして生きてました」

取材をする中で、私もきっと、自分が話している相手がどんな思いを抱えているか分からないまま、知らず知らずのうちに傷つけている可能性があると思いました。

実際、中学生のときの友達に、おとなになってから性別に対する違和感があったことや、同性愛について話してくれた子がいますが、中学生のときに一緒に遊んでいても、全く気付きませんでした。

「好きな男の子いる?」と聞いたこともあったかもしれません。

親が子どものために知識を持つのは大事ですが、学校の友達、先生、親以外の大人も、1人でも多くの方が知識を持っていれば、その子が傷つくのを防ぐことができるかもしれません。

中塚先生は、「理想は、性別の違和感についても公表できて、困ったことがあれば、みんなで支え合える社会」とおっしゃいます。でも、「現在の学校や職場では、いじめや偏見の目が合って、実際、公表することにリスクを伴う」とおっしゃっていました。

いつか、その理想の世の中が来るといいなと思います。

みなさんのご意見や感想、またご自身の経験談などをぜひお寄せください。
https://www.nhk.jp/p/otonarisan/ts/MZ6VLPZPKQ/
この記事のコメント投稿フォームからみなさんの声をお待ちしています。

みんなのコメント(3件)

感想
ピエロ
2024年2月1日
俺も性的違和で親に言いたくないと感じています
ですが1人の好きな女の子に
俺は性的違和っていって心と体の性が一致しないんだ、実は〇〇ちゃんのことが好き
と俺の事を言ったところ
私はレズビアンだよ 今まで誰にも言わなかったけど
と言われて俺のように自分の事を家族に言えてない人もいたんだと思い話してよかったと思いました
今では〇〇ちゃんは彼女になり幸せに生きています
家族に相談してなくても大丈夫だと思いますし俺はまだこの事を話していませんそれでも幸せになれるんだなぁと思いました
悩み
ピエロ
2024年2月1日
俺は性的違和で学校や家ではいつも女を演じています。家族にも俺の性別の事を言えていなくのですがこの前髪型をベリーショートにしたいと言ったところ
女を捨ててる や 男の子みたい
と言われ心が雑巾のように絞られました
家族には俺の性別のことを言いたいしこのままずっと偽って生きていくのは辛いですどうすればいいのか...
体験談
洋梨
30代 女性
2023年11月8日
おとなりさんは、悩んでます。を観ましたが、私は、水泳の話を聞きましたが、幼稚園年長まで3年間水泳パンツでしたが、小学校はクラスでどころんこプールをやった時1年生だけ水泳パンツでした。翌シーズン2年生になった時のどろんこプールで「水泳パンツがいい」と言ったら担任の先生が「まだ低学年だからどろんこプールだけなら水泳パンツでもいいよ」と言ってくれました。母に「2年生だから水着じゃなきゃあねぇ水泳パンツは1年生まで」と言われてから2年生はどろんこプールだけじゃなく水泳授業で水着着るのがやるのがいやになりずっと見学してました。それについてどうおもいますか?
おとなりさんは悩んでますで思春期の生理の悩みもやってほしいです。皆の体験談がききたいからです。婦人科も保健室みたいに気軽に行ける事をしってほしいからです。子供が生理不順で悩んだら婦人科に相談だけに行かせるか?も調査したらどうかな?と思います。