
保育園や幼稚園に入れる条件は 日本の保育制度をわかりやすく解説
自分の申し込んだ保育園の結果はどうだったか…?
1月終わりから2月上旬にかけてのこの時期、きっとことしもそわそわと結果を待っている人がたくさんいらっしゃることと思います。
「認可保育所」「幼稚園」「認定こども園」「認可外保育施設」…
就学前の子どもたちが通う日本の保育施設にはさまざまな種類があります。一口に保育園と言っても、その中身もさまざまです。
子どもの年齢や親の就労状況などによって利用できる保育・教育施設が細かく異なるなど、筆者も、自分が『保活』をする段になり初めて制度の複雑さを知り、めまいを覚えた記憶があります。
一体どうしてここまで制度が複雑なのか。わかりやすく解説します。
クローズアップ現代「なぜ相次ぐ“不適切保育” 子どもの居場所どう守る」
1月16日(月)夜7時30分(総合テレビ)にて放送しました
子どもたちが通う施設の種類は?
子どもたちが通う施設の種類から見ていきましょう。

▼認可保育所
まずは認可保育所です。
「保育士1人が見られる0歳児は3人まで」といった配置基準や施設の広さ、設備など、国や自治体が定める基準を満たし認可を受けた施設です。法律上は児童福祉施設に該当します。公費に加え、利用者負担額を財源とした補助金で運営されています。
利用時間は原則として朝から夕方までの11時間のほか、土曜日も開園しています。園によっては延長保育を実施しています。
▼認可外保育施設
認可保育所に比べ基準が厳しくないのが、認可外保育施設です。
例えば、認可保育所では保育従事者全員に保育士の資格が原則必要ですが、認可外では1/3が持っていればいいとされています。公費は入りませんが、自然の中での活動や外国語教育、独自の教育法の実践など、制度に縛られず利用者のニーズに合わせた特色ある保育を行う施設も存在します。
夜に子どもを預かるベビーホテル(24時間保育)を行っているのは、認可外の保育施設です。
また、認可外保育施設の中には、自治体が独自に定めた基準を満たすことで補助金を受けて運営されている園もあります。例えば、東京都が独自に作った制度で認められた「認証保育所」も認可外保育施設のひとつです。東京都以外にも横浜市やさいたま市などで、独自基準で保育施設を認証する制度が行われています。
▼幼稚園
小学校以降の教育の基礎をつくるための、幼児期の教育を行う学校のことを幼稚園といいます。
利用時間は昼過ぎごろまでの教育時間に加え、園によっては午後や土曜日、夏休みなどの長期休業中の預かり保育などを実施しているところもあります。
▼認定こども園
平成18年に新しい法律が施行され誕生したのが、幼稚園と保育所の機能や特徴をあわせ持ち、地域の子育て支援も行う認定こども園です。
利用時間は昼過ぎごろまでの教育時間に加え、保育を必要とする場合は夕方までの保育や土曜保育を実施しています。また、園によって延長保育も実施しています。
このほかにも▼小規模保育事業▼家庭的保育事業▼居宅訪問型保育事業▼事業所内保育事業▼地域型保育事業など、さまざまな形態があります。所管の省庁が分かれていることに加え、保育ニーズを満たすための受け皿を増やしていった結果、非常に複雑な制度となっています。
保育園や幼稚園 利用するための条件は?
では、誰でも望むままに保育園や幼稚園を選ぶことができるかというと・・・そうではありません。
保育園や幼稚園の利用を希望する場合、まずは市区町村から「給付認定」を受ける必要があります。子どもの年齢や「保育を必要とする事由」があるかどうかで、3つの種類に認定が分かれ、どの施設が利用できるかが変わってきます。

①子どもの年齢が3~5歳で、親が働いている・病気であるなど「保育を必要とする事由」がない場合(1号認定)
②子どもの年齢が3~5歳で、親が働いている・病気であるなど「保育を必要とする事由」がある場合(2号認定)
③子どもの年齢が0~2歳で、親が働いている・病気であるなど「保育を必要とする事由」がある場合(3号認定)
①の場合、幼稚園や認定こども園の幼稚園部分(長時間の預かりはできない)を利用することになります。
②の場合、保育園や認定こども園の保育部分の利用申請を出すことができます。
③の場合、保育園や認定こども園の保育部分の利用申請を出すことができます。また、保育所より少人数の単位で子どもを保育する地域型保育事業も利用できます。
また、子どもの年齢が0~2歳で、親が働いている・病気であるなど「保育を必要とする事由」がない場合、認定は受けられません。
つまり、現行法上は公費が入って運営されている保育施設や教育施設(幼稚園など)に通うことはできません。家庭の事情など必要に応じて一時預かりなどの支援を受けながら、家庭で育てることになります。
さらに、給付認定を受ければ必ず認可保育所に通えるわけではありません。
認可保育所や自治体独自に認めた保育園(東京都の認証保育所など)、小規模保育事業などは自治体に利用申請を出し、家庭の就労状況や介護・看護、きょうだいの有無など保育ニーズが高いと判断された子どもから入れる仕組みになっています。ここで保育園に入れないと、いわゆる「待機児童」となります。
そうした待機児童や、上記の給付認定が受けられない子どもたちの受け皿となっているのが認可外保育施設なのです。

なんで種類も多いし、制度も複雑なの?
日本の保育制度がここまで複雑になってしまった理由のひとつに、担当官庁が三元化していることが挙げられます。
保育園については厚生労働省、幼稚園は文部科学省、認定こども園は内閣府と、3つに分かれています。このことは長く批判され、関係者たちが幼保一元化の必要性を訴え続けてきたものの、今日まで解消されないままです。
2023年4月からは厚生労働省と内閣府の担当部門がこども家庭庁に引き継がれ、二元化します。幼保一元化に向けて一歩前進と見る向きもありますが、まだまだ十分とは言えません。
欧米では、保育と教育を一元化し、親の就労状況などに左右されず全ての子どもが「幼児教育」を受ける権利を保障している国が少なくありません。
子どもたちの学びの土台を作る大切な幼児期を、親の就労状況で差を付けないためにも、こども家庭庁には踏み込んだ議論を期待したいです。