
車道と歩道 どこを走る?自転車事故を減らすために
「NHKを使って世の中 1ミリ変えてみる」がコンセプトの「1ミリ革命」プロジェクト。第1回のテーマは「自転車で安全に走れるにはどうすればいいの?」です。自転車事故を減らすために、具体的な解決策を考えていきます。
(1ミリ革命 取材班)
1件でも自転車事故を減らしたい
取材のきっかけは、NHK北海道の夕方のニュースの課題解決コーナー「シラベルカ」に寄せられた1通の投稿でした。
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札幌市・40代女性
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「自転車は車道の左側を走るものと決められていますが、実際は路上駐車している車が多く、安全に走れる状態ではありません。どうすればいいでしょうか?」

コロナ禍で利用者が増えている自転車。全国のNHKには自転車が車道を走行する上での悩みや、交通ルールの疑問が寄せられていました。手軽な乗り物である一方、ルールに関して迷いながら自転車に乗っている方が多いようです。
全国の自転車事故は67,673件、交通事故全体の中で自転車が関与しているのは21.9%。自転車乗用中の死者数は419人にのぼっています。(警察庁交通局調べ・2020年)
今回、NHK北海道の「シラベルカ」とNHK福岡の「追跡!バリサーチ」が、「どうすれば自転車が安全に走れるか」をテーマに、交通ルールや走行方法を調べました。
路上駐車をしている車が多くて、車道を自転車で安全に走れない!
「自転車で車道を安全に走るのは難しい」と投稿を送ってくれたのは札幌市内のカラスの生態を研究するNPOで働く中村さん。毎日カラスの研究のため市内を自転車でまわっているといいます。車道を走行中、路肩に駐停車している車を追い越そうとして、至近距離に迫ってきた車に身の危険を感じることがよくあるといいます。

中村さんが特に怖い思いをするというのが、行政の建物や商業施設が建ち並ぶ地域。私たちが調べた時も、車道上に駐停車している車を多くみかけました。駐車禁止の場所で駐車している車や、長時間にわたって停車している車が多く、自転車が車道を走行するのは難しいように思えます。

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中村眞樹子さん
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「中心部はいつも路肩に車が止まっていて、安心して走れる場所がありません。たまに車にあおられたり、クラクションを鳴らされたりすると、怖くなって歩道を走ってしまいます。歩行者に怖い思いをさせたいわけでないけど、自転車はどこにいけばいいんでしょうか」
歩道を走行する自転車は歩行者にとって大迷惑!?
中村さんのように「車道で怖い思いをするならば、やむを得ず歩道を走ろう」という方も多いのではないでしょうか。
NHK福岡には、歩道を走る自転車のマナーに悩む、歩行者からの声が届いていました。
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ペンネーム求人48号さん 40代
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「福岡は自転車のマナーが悪すぎる。歩道を横一列。猛スピードで走る。車道を逆走など、軽車両という意識が欠落していると言わざるを得ない」
NHK福岡「追跡!バリサーチ」が街で聞き込み調査をしてみると・・・

「あります。歩道を歩いていても スレスレで来るときあるじゃないですか、シャッて来たとき」
「歩行者の間を通って、通り抜けていきます」
「信号無視、それから歩道を通っていても、ほとんどゆっくり行く方おられんですもんね」
「ぶつけられたこともありますね」
実は福岡県は自転車の事故発生率が全国3位。福岡県警察本部・交通企画課の井上さんに、県内の現状を聞きました。

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福岡県警察本部 井上秀晴課長補佐
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「実はここ10年、自転車事故の総数は減少していますが、歩行者との事故は年間100件ほどと横ばいになっています」


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福岡県警察本部 井上秀晴課長補佐
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「自転車側の脇見運転によって歩行者と衝突する事故が発生したり、また歩行者の間をすり抜けようとして衝突をしてしまったりする事故があります。自転車側が、そもそも歩道をバンバン走っているのが、自転車は自動車と同じ『車両』なんだという意識の低さだと思うんですね」

福岡県で歩行者との事故が減らないのはなぜか?福岡特有の都市整備の状況があると、福岡の交通計画を長年研究してきた福岡大学の辰巳浩教授はいいます。

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福岡大学 辰巳浩教授
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「車道に自転車が走るスペースが十分にあればいいんですけれども、なかなかそれが福岡の場合はなくてですね。走るには少し危険を感じるということで、歩道を走ってしまう自転車が多いというのがその理由かなと思います。自転車の走行空間を捻出するというのはなかなか難しい状況にあります」
行き場のない自転車 どこを走ればいいの?
車道はスペースが狭く安全に走行できない、一方で歩道を走るとついスピードを出しすぎてしまい衝突事故など危険と隣り合わせ。
専門家によると、自転車事故の6割が交差点で起こっていて、そのうち8割以上が自動車との事故だといいます。(2019年)
道路交通法上、「軽車両」扱いとなっている自転車。原則として車道の左側を走らなければいけません。しかし、身の危険を感じてまで、車道を走行し続けなくてはいけないのでしょうか?
NHK北海道「シラベルカ」が北海道警察に問い合わせたところ、「自転車が歩道を走っても許される場合」が3つだけありました。
1. 歩道に普通自転車歩道通行可の標識や標示があるとき。
2. 13歳未満の子供や70歳以上の高齢者や身体の不自由な人が、普通自転車を運転しているとき。
3. 道路工事や連続した駐車車両などのために車道の左側部分を通行することが困難な場所を通行する場合や、著しく自動車などの交通量が多く、かつ、車道の幅が狭いなどのために、追越しをしようとする自動車などとの接触事故の危険がある場合など、普通自転車の通行の安全を確保するためやむを得ないと認められるとき。
ただし、あくまでも歩道は歩行者が優先。自転車は歩道の車道寄りの部分を、いつでもすぐ停止できる速度で走行しなくてはならない。
また福岡県警察本部では現在、少しでも事故を減らすために、一方通行の逆走や片手運転など、取り締まりを強化しているといいます。
自転車にまつわる、あなたのヒヤリハット/お悩みを教えてください
「1ミリ革命」では、「安全に自転車が利用できるアイデア」について、みなさまと一緒に考えていきます。
自転車と一口に言っても、子どもを乗せて走る電動ママチャリ・通勤で使うスポーツタイプ・通学で使うかごつき自転車・子ども用自転車までさまざま・・・どんな状況で危険を感じているか、「ルールはわかっていても、こういう場合は難しい」など悩みや疑問をお寄せください。
今後、「1ミリ革命」では集まったお悩み投稿も記事にしてご報告します。その後、解決のアイデアも募集。具体的な解決策を読者の皆様と探っていきたいと思います。
投稿はこちら⇒https://post.nhk.or.jp/pxfnpg5mhz/bicycle_citizens_voice/image/registrations/input