
生理痛で学校に行きたくない 休みたくても休めない学生たちの実情
ことし「生理の貧困」が社会問題となったことをきっかけに、経済的な問題に留まらない、生理にまつわる様々な困難が指摘されています。
特に若い世代から上がっているのが、「学校現場で生理が理解されていない」「つらくても休めない」という声です。
今回新たに実施されたアンケートからは、成績や進路にも影響が出ている実態が見えてきました。

アンケート調査を行ったのは、今年2月に「生理の貧困」に関する調査を行った団体「#みんなの生理」と、若者の声を政治に反映させる活動を行っている団体「日本若者協議会」です。
生理のために学校を欠席する人がどれくらいいるのか、欠席することで学校生活にどんな影響があるのかを調べるため、オンラインアンケートを実施しました。
“休みたくても休めない”
アンケートには、学校(小中高校、専門学校、大学など)に在籍していて、過去1年以内に生理を経験した300人が回答を寄せました。
「生理で学校や授業、部活、体育を休みたいと思ったことがある」という人は、全体の93%。そのうち68%、およそ3人に2人は生理がつらくて休みたいのに「学校を休めなかった」経験があると答えました。

なぜ我慢してしまう?
「休みたいけど休めない」理由を聞いたところ、「成績や内申点に悪影響が出ると思った」が最も多く63%、「生理を理由に休んでいいと思わなかった」が57%でした。

休めないことで“体調悪化” “授業に集中できない”
生理がつらい時に休めないと、どんなことに困るのでしょうか?回答した181人のうち8割が「授業に集中できなかった」、3割以上が「体調が悪化した」と答えています。

「生理痛でボーッとするので、授業中の記憶はあまりない。授業中、冷たい椅子にずっと座っているのが一番つらく、途中で保健室に行くのも気が引けるので、痛みを耐え続けていた」
「集会などで冷たい床に座って何時間も拘束される時は、床やスカートに血がつかないか不安で、余計体調が悪くなった」

アンケートに回答した一人、アヤカさん(21歳/仮名)です。「生理で休みたい」と言い出せず、我慢した結果、学校で倒れてしまった経験が2回あります。
1回目は高校1年生のとき。生理痛がひどくて保健室に行ったものの、痛み止めなどは処方してもらえず教室に戻ることになりました。
教室についた途端、フラフラで立っていられなくなり、吐いて倒れてしまいました。担架で運ばれましたが、周囲には生理が原因だとは伝えなかったと言います。
2回目は高校3年生のとき。授業中に気が遠くなりそうなほどの腹痛がありましたが、男性教諭にトイレに行きたいと言い出せませんでした。授業が終わって立った瞬間、足がふらつき座り込んでしまいました。
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アヤカさん
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「ずっと『生理で授業を休めるわけない』と思っていました。友達に『生理がすごく重い』と言ったら『そう?私はそんな痛くないよ』と言われてしまって、私が異常なのかな?他の人には分かってもらえないんだなと思ってしまいました。サボっていると思われるのが嫌で、我慢し続けてしまいました」
3人に1人は「生理による欠席で成績や内申点が下げられた」
一方「生理のために学校や授業を休んだ」場合も、その影響は小さくないことも分かってきました。
「生理で学校や授業を休んだ」経験がある人は全体の半数近く。「生理のたびに」または「1年間で5回以上」休んだという人だけでも13%にのぼります。

生理で学校を休んだ時に困ったことを尋ねたところ、特に多かったのが「欠席扱いにされたことで、成績や内申点が下げられた」という声。休んだ人の34%、およそ3人に1人に上りました。


生理による欠席が重なったことで、受験や進学先など進路への影響を懸念している人もいます。
関東のIT系専門学校に通うアカリさん(20代/仮名)。生理痛が重く、毎回の生理で4日ほど寝込むと言います。
3年生の今年は前期の出席日数が8割を下回り、専門学校からあっせんされる志望業界のインターンシップに参加できませんでした。
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アカリさん
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「担当の先生からは『出席率が悪かったり、課題を出していない人はインターン先の企業に迷惑をかけるので紹介できません。これを機に振り返ってこれから改善してください』と言われました。
課題やリポートは頑張って提出して良い評価をもらっているのに、生理が原因の欠席で『さぼっている』と誤解されるのがつらいです。
これから就職活動が本格化しますが、面接などで理解してもらえるか、そもそも書類選考でふるい落とされるのではないかと不安です」
“学校にも生理休暇を” 社会はどう応える?
今回の調査を行った2つの団体では、労働者が生理日の体調不良で働くことが難しい場合に取得できる「生理休暇」の制度に注目しました。
アンケートで学校への導入について聞いたところ、9割以上が生理休暇の導入に「賛成」「やや賛成」と答えました。

アンケートを行った「#みんなの生理」共同代表の谷口歩実さん。
これまで言いづらかった生理の問題に対して声が上がっていることを歓迎した上で、こう述べています。
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谷口歩実さん
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「生理の貧困のときは“生理用品の入手”による機会損失について問題提起しましたが、今回は生理用品の有る無しに関わらず、出席重視という教育システムそのものが、生理がある人にとって不利に働いていることが見えてきました。
その一方で、仮に「生理休暇」のような制度があったとしても、生理のことを「言いにくい」「言ってはいけない」という空気が強ければ、結局休みを取りにくいという声も多くあがりました。
学校現場や社会全般が、児童生徒たちの声やニーズをちゃんと受け取る環境になっていくと良いと思っています」
中高生が足を運びやすい産婦人科「ユースクリニック」を開催し、学校での生理の悩みを多く聞いてきた産婦人科医の門間美佳さん。
自身も学生時代に生理がつらくても休めなかった経験を踏まえて、こう話しています。
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門間美佳さん
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「やっぱり月経痛で学校を休んでそれが内申点に響くというのは、女子がもう絶対的に不利になりますので、月経痛で休んだときは考慮してほしいというのはとてもいい考えだなと思います。
ただ、痛かったら休めばいいというだけではなく、生理痛の原因として子宮内膜症や子宮筋腫といった病気が隠れているかもしれないので、産婦人科に足を運んでほしいというのが産婦人科医としての願いです。
月経痛で休むだけじゃなくて産婦人科を受診する場合も生理休暇みたいな感じで対応してくれるとすごくありがたいです」
これまで埋もれてきた「生理がつらい。でも、学校を休めない」という声。この声にどう応えていけば良いのか。生徒・学生自身にとって、どんな制度や仕組みが使いやすいのか。取材を通してみなさんとともに考えていきます。
アンケート調査結果の詳細
「9割以上の学生が「生理によって学校を休みたいと思ったことがある」にもかかわらず、そのうち68%が休むのを我慢している、学校での「生理休暇」についてのアンケート結果まとめ」(2021.11.17公開)
▼一般社団法人 日本若者協議会のサイトで見る※NHKサイトを離れます
▼#みんなの生理のサイトで見る※NHKサイトを離れます
「生理の貧困」をなくすために
私たちは、みなさんの声をもとに“生理の貧困”の問題を継続的に取材し、発信しています。報道を通じて国や自治体に対策を促しながら、どうしたらこの問題を解決できるのか考え続けます。
▼これまでの記事をまとめました☟
-社会が動いた「生理の貧困」が国の方針に明記されるまでの4か月2021.7.16公開
-「生理の貧困」男にできることは? 考え続けた1か月2021.4.28公開
-“生理の貧困” 私たちはどう向き合う2021.4.6公開
-「生理用品に課税しません!」海外ではどう実現?2021.4.2公開
-学生の5人に1人が「#生理の貧困」2021.3.11公開
-“生理用品が買えない” 日本でいま何が?2021.3.9公開
NHK おはよう日本 ニュースアップ「学校の生理 休みたくても休めない」
2021年11月18日放送