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ごみが200万円に生まれ変わる町!

ごみからお金を生み出している町があります。その額、年間約200万円。その町とは、徳島県にある人口約1400人の上勝町です。町ではムダ、浪費、ごみをなくす「ゼロ・ウェイスト」を日本で初めて宣言しました。そのリサイクル率は80%以上に達しています。サステイナブル だと国内はもとより世界からも注目される上勝町。ごみだと思っていたものをごみでなくす仕組みを、町や住民たちと進めてきたNPOの元事務局長に話を聞きました。
(NHKエンタープライズ ディレクター 小藤理絵/報道局社会番組部 ディレクター 酒井利枝子)

ごみ45分別 混乱は?

ごみをお金に生まれ変わらせる上勝町。そのヒミツはごみの分別にあります。町で唯一のごみ収集場を訪れると、なんとその分別は45にものぼっていました。例えば、紙だけでも9種類、プラスチックは6種類、ビンでも茶色や透明など4種類に分けています。分別で苦労したことはなかったのでしょうか?

エバンズ亜莉沙さん

▶環境に配慮した経済活動を広めるため企業へのアドバイスやイベントを実施

▶“エシカルコーディネーター”という肩書で活動

マシュー・チョジックさん

▶ライター、大学講師、タレント

▶エシカルについては勉強中

エバンズさん
ー実際ごみを45に分別する体験をさせていただきましたけれど、町民の皆さんは慣れるまでは大変だったのではないかと思ったのですがいかがですか?

NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー元事務局長/ゼロ・ウェイスト推進員 藤井園苗さん
藤井さん

「やはり初めてのことなので町民の皆さんは不安だったと聞いています。ただ町民のリーダーが『心配するな、何か困ったら俺が助けてやるから一緒にやろう』と言ってくれました。町民の皆さんも行政が本当にこうしなきゃいけないって言っているのだったら協力しなくてはいけないっていう感じで始まりました。


実際やってみたらすごく面倒だったので、現場で不満も出てきました。そんな中、なぜこの分別をしなくてはいけないのかを説明すべきだと思いました。分けてもらったものが何に生まれ変わるのかというのを伝える必要があると思い、表紙に書き始めました。」

ごみの行き先を“見える化”

ごみ収集場で特徴的なのがごみ箱ごとに説明書きが添えられていることです。
例えば、雑金属。雑金属とはいったいどんなごみなのか絵でも説明されています。その後、徳島市でさまざまな金属製品として生まれ変わることが明記されています。

藤井さん

「『ビンは色ごとで生まれ変わるものが違います。茶色のビンは茶色のビンになるし、透明のビンは色が透明だから何色にも生まれ変われます。しかし、緑とか青のビンは透明のビンにはなりません』とまず書きました。それが最初のステップでした。


やがて分別が増えてくると、何に生まれ変わるのか説明がつかないものが増えてきました。 そこで、処理するお金がこんなに違うんだよっていうことを伝えるためにごみ処理費用を書き始めました。」

ごみ箱の看板をよく見るとー、「入」か「出」という文字があります。
実はこれ、「入」は売却できるごみで、「出」は逆にリサイクルの処理にお金がかかるという意味です。

「入」の文字がある牛乳パックなど内側が白い紙パックは1キロ10円で売れるということだそうです。一方、透明ビンの看板を見てみると、「出」の横には0.204という数字が。こちらは、1キロで約0.2円のリサイクル費がかかるということになります。

このような"ごみの見える化"は町民の分別の意欲につながりました。
2019年度は古紙類だけで約110万円、そのほか金属類も約60万と高く売ることができました。素材を細かく分別することで、町は今では約200万円の収益を得るようになったのです。

写真提供 上勝町

そもそも、上勝町はなぜごみを減らすことにしたのか。それは町の財政事情などが理由でした。

かつて、野焼きや小型の焼却炉でごみを燃やしていた上勝町では有害物質であるダイオキシンが大量に出るため政府の基準が厳しくなる中、燃やすのが難しくなりました。

新しい焼却炉を作る財政的な余裕もなく、ほかの町で焼却するにもお金がかかるため、ごみそのものを減らすことにしたのです。

藤井さん

「町は燃えるごみを減らしたいと言っているので、どうにかできないかと考えたときに、単純に燃やすだけではなくて、せめて国内の製紙工場で使われる固形燃料で 使ってもらえるエネルギーとしてリサイクルできないかと方向性を切り替えました。


単純焼却よりも値段も安いし、日本のエネルギー事情にも貢献できる。なにより環境負荷も減らすことができると考えたのです。」

エバンズさん
ー上勝町では普通だったらごみを捨ててそこで終わってしまうのが、その先も分かるので、物の使い方も変わりますし、選んでいくものも変わっていくのではないかと思いました。

藤井さん

「分別すると、分別しなければいけないもののほとんどが容器包装だと気付くと思います。」

エバンズさん
ー確かに、そうですね。容器包装もいくつか種類が分かれていて、普通であればそんなに細かく分けないもの 、例えば紙パック、紙類もそうですが容器もいろんな種類があることを学びました。

ごみの分別の全体図 写真提供 上勝町
藤井さん

「慣れたとしても新しいものが開発されて 、その都度どうするかを考えています。」

エバンズさん
ー新しい種類のものが世の中に生み出されていくから、どう分別するかも考え続けなくてはいけませんね。

町民個人にもメリット大

ごみを分別するメリットがあるのは、町だけではありません。個人にも還元されています。

例えば、町民は紙パックや、トイレットペーパーなどの芯、液体洗剤などの詰め替えのパックなどを分別して捨てると、ポイントがもらえます(自己申告制)。ポイントが貯まると、トイレットペーパーや、ノート、台所洗剤などと交換することができます。

ごみだけでなく、町内で量り売りを実施している店で買い物をしてもポイントが貯まる仕組みになっています。

ポイントで交換できる景品が掲示されている

エバンズさん
ーポイント制度であったり、いろいろ楽しく取り組めるような仕組みを作られたりしていますよね。

藤井さん

「そうですね。個人に直接還元できるメリットは何だろうと考えたとき、経済的なものを一番先に思いつきました。それを形にしたのがポイントサービスでした。」

ごみを通じて生まれるコミュニケーション

チョジックさん
ー上勝町ではごみ収集車が走っておらず、町の人たちが自分でごみを収集場へ持って行くところを見て、本当に驚きました。町の人たちの協力はすごいですね。

藤井さん

「そうですね。ただ高齢者の方で車を運転されない方とか、何かハンデを持たれていてごみを持ち込むのにサポートが必要な方には2か月に一度、運搬支援というサービスでこちらから自宅まで取りに伺っています。」

エバンズさん
ーごみを捨てに行くのに手間と感じるかもしれませんが、ごみ収集場に行くことでコミュニケーションが取れるのではないかと思ったのですがいかがですか?

「本当にそこは大事にしている部分です。ごみの収集車で収集している場合は、作業員の方とお話する接点もそんなに持てないと思います。


時間に追われていると思うので、誰かと話をしていることなんてできません。町民たちは困ったことがあっても聞くことができないし、作業員の方も『もっとこうしてほしい』と思っていても伝えられなかったりすると思います。


各市町村でコミュニケーションをとることにすごく苦労していると思いますが、上勝町の場合は現場にごみを持ち込むという方式だからこそコミュニケーションを大事にすることが可能になるところがあって、本当にいい効果が出ているのではないかと思います。」

チョジックさん
ーそういうコミュニケーションの場は現代社会においては本当に足りていないので、すごくいいところもありますよね。

布オムツで先輩・新米ママが交流も

布オムツセット 写真提供 上勝町

リサイクルできず、焼却処分となるゴミのひとつが紙オムツ。削減しようと、町が2017年から取り組みを始めていますが、そこでもコミュニケーションが生まれています。

「布オムツを使ってみませんかという取り組みをしています。新生児が生まれた世帯で希望する人には、布オムツはあげています。オムツを洗うバケツとか干す洗濯ピンチとかも全部セットで貸し出ししています。


新生児はオムツを使わなくなるのも早いですし、戻してもらえれば次の希望する家庭にそれを貸し出しすることもできます。布オムツを使ってくださいって言ってもなかなか買いそろえるのもお金がかかる話なので、そういったことを解決するために貸し出しという手段をとるようにしました」。

エバンズさん
ーオムツが新米ママと先輩ママとの交流の機会になりそうですね。

藤井さん

「新米ママさんたちが初めて布を使うのはハードルも高いので、それを先輩のママさんが教えています。教えることをきっかけにいろいろな悩みなども一緒に聞くことができるので、子育て支援も兼ねています」

チョジョックさん
ー都会に住んでいる人たちも真似することはできますね。

藤井さん

「真似することはできると思います。よく私たちは 子育てする方たちに言っていますが布オムツにすることによって赤ちゃんと触れ合う時間を増やすことができますよね。


紙オムツはとても高機能なので長時間つけていてもそんなに不快にならない機能性がありますが、布オムツであれば赤ちゃんが気持ち悪いからよく泣く、それでお母さんが気にかけて世話をしてあげるということになります。そうすれば、赤ちゃんとお母さんとの接点も増えて、より子育てにいいのではないかというところがあります。


ただそれにこだわることはなく、日常昼間とかで赤ちゃんを構ってあげられる時間とかは布オムツを使って、お出かけするときや夜は紙オムツを使う方がいいのではないかとの話もしています。


そういうのも先輩ママさんに教わるからこそやっていける。最初の1人目の子どもは結構不安になりますよね、本当にこれでいいのかなとか、そういったところもコミュニケーションで補っています。都会でもそういったサポートする体制があれば、本当に多くの方が取り組めるのではないかと思います。」

エシカルな取り組みで移住者が増加

エバンズさん
ーさまざまな取り組みに魅力を感じて、上勝町に移り住む若い人たちが増えているということはありますか?

藤井さん

「いまは本当に増えていますね。いわゆるZ世代と呼ばれている皆さんは本当に環境意識の高い方が多くいます。都市部に住んでいたら、その分別とかに協力している実感が湧きづらいというのもありますが、上勝町に来たら実際に暮らしの中で実践できるっていうことが受け入れてもらえているようです。」

チョジョックさん
ー若い人たちがたくさん集まって来るなら、今後もしかしたら人口が増えたりということも?

藤井さん

「そうですね。そうなることを願って活動を続けています。持続可能な町のために、このゼロ・ウェイストの取り組みが必要であるというふうに思っています。」

エバンズさん
ー間違いないと思います。ゴミ資源だけではなくて、人の生活そのものの持続可能性というヒントが上勝町にたくさん詰まっているなと思いました。

藤井さん

「ありがとうございます。」

チョジョックさん
ー行ってみたいです。

上勝町の取り組みあなたにはどう映りましたか?またあなたの周りで行っている取り組みがあったらぜひ、コメント欄で教えてください。

担当 地球のミライの
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みんなのコメント(2件)

感想
まかっちゃん
70歳以上 男性
2023年4月15日
素晴らしい取り組みです。こんな企画がされている街があるなんて知りませんでした。私もこの小美玉に提案して行きます。ありがとうございました。
感想
カオル
60代 女性
2023年4月8日
素晴らしいです!
街の人たちがイキイキしている感じがします!町に協力したくても、やりがいがあり楽しそうに出来る事が、人と人の繋がりをつくっていると思います!