
食品ロス削減への道
子どもの頃に「残さずに食べようね」と言われたことありませんか?
苦手な料理が目の前にあって“ドキッ”とした経験、誰にでもありますよね。
農林水産省によると、本来は食べられるのに捨てられる「食品ロス」は日本で年間522万トン。国民1人が毎日お茶碗1杯のご飯を捨てている計算になります。この「もったいない」状況をどのように変えることができるのでしょうか。地球にやさしい取り組みを紹介する番組「Ethical Every Day」で進行役を務めるエバンズ亜莉沙さんにヒントを伺いました。
ごみ処理にかかるのは約2兆円!?

飲食店やスーパーマーケット、コンビニなど、私たちのまわりには食べ物があふれています。しかし、いったん賞味期限や消費期限が切れてしまうとすぐに廃棄されてしまいます。
さらに野菜や果物などを包装するプラスチック容器のごみも大量に生み出されています。
こうしたごみの処理にかかる経費は年間2兆円を超えています。
このような状況を改善したいと、エバンズさんはかつて仲間たちとともに東京都内である店を立ち上げたことがあります。個包装をせず、量り売りでナッツやドライフルーツ、塩などの商品を販売し、ごみを出さない「ゼロ・ウェイスト」の店です。
店をやろうと思ったきっかけは、ふとした日々の生活の気づきだったといいます。

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エバンズさん
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「“野菜ってこんなに皮って取らないといけなかったっけ?”とか、“野菜の端っこは、切り落とす理由は何だっけ?”とふと疑問に思ったのです。それから『食品ロス』を私自身の問題としてとらえるようになりました。」
では、私たちが食品ロスを減らすために何ができるのでしょう。エバンズさんが日々の買い物で心がけていることを教えてもらいました。
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エバンズさん
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「スーパーでの買い物では、包装の少ないものや“ばら売り”などで売られている野菜や果物を選ぶようにしてはいかがでしょう。もし近所のスーパーに包装されたものしかない場合には、ぜひお店のスタッフさんに要望を伝えてみてください。
ご意見箱などがあれば、リクエストを入れておくのもいいかもしれません。
ばら売りや量り売りで買うことができるようになれば、例えば小売りのトマトや玉ねぎなどは必要な数だけ買えるので、使いきれず傷ませてしまったりするリスクも減ります。食品ロスを減らすことにもつながるかもしれません。
少し勇気がいるかもしれませんが、声を届けることで変わった例もたくさんあります。」

エバンズさんが番組で訪れた京都のスーパーマーケットでは、野菜や果物などの生鮮食品から昆布などの乾物、しょうゆなどの液体まですべてが量り売りで販売されています。ここでは、自分でほしい分だけを量って買うことができるのです。

店では、すべての商品が個包装されずに販売されています。客もバッグや容器を持参するか、店の容器を借りることでごみを出さずに買い物をすることが出来ます。
量り売り専門店はまだ少ないですが、店舗の一部に量り売りを取り入れるなどごみを減らすための取り組みが各地で少しずつ広がっています。
さらに、エバンズさんが気にしているのが販売されている食材が有機栽培や自然栽培のものであるかどうかについてです。
野菜を育てるために使用される農薬は、生態系への影響が懸念されています。化学肥料も大量に使用することが水質汚染などにつながっているとも言われています。
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エバンズさん
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「農薬や化学肥料の使われていない食品は食べる人の健康だけでなく、作物を育てる生産者の方々の健康、各地の農地の健康、つまり地球の健康にもつながっています。農薬の使われていないものは安心して皮まで使えるので、その分食品ロスの削減にもなりますね。」
食品がどこから来ているか気にしてみる
日本の食料自給率をご存知でしょうか。農林水産省によると*38%。私たちが食べている食料の半分以上が海を越えてやってくる輸入品ということになります。
環境負荷を考えるための“フード・マイレージ” というひとつの見方があります。食べ物の輸送量に輸送距離を掛け合わせたもので、輸送時に排出される二酸化炭素の量を試算するための数値としても使われたりします。
日本は島国という地理的な特性もあり、ほかの国と比べてこの数値が高いのが特徴です。
二酸化炭素の排出で温暖化が進み、気候変動に悪影響を与えるとされています。フード・マイレージの数値が少ないほど地球にやさしい“エシカル”な取り組みとも言えるのかもしれません。ここで、エバンズさんは「地産地消を意識」することを提案してくれました。
*1人1日あたりの供給熱量に対する国内生産の割合で計算
「地球の反対側からものを買うよりも地元の果物や野菜を買った方が、輸送時に排出される二酸化炭素の量を減らすことができます。輸送にかかる時間が長いと、移動中に腐ることのないように防腐剤や防かび剤が使われたりするかもしれません。
食品の種類にもよりますが、お店から近い場所で採れた野菜や果物を新鮮なままいただくのが一番だと思います。」

生ごみは乾燥させてコンポストかごみ箱に
料理をした後などに出る野菜くずや食べ残しなどの“生ごみ”。そのままごみ箱に捨てていませんか?
環境省などによると生ごみの約8割は水分。捨てる前にひと手間を加えることで、地球への負荷を減らすことにつながるといいます。
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エバンズさん
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「生ごみは乾燥させてからごみ箱に捨てるのがいいと思います。水分を含んだままの状態で『燃えるごみ』に入れてしまうと、水分の蒸発に熱が必要になり、焼却に多くのエネルギーが必要になります。
あまり意識されていない部分かもしれませんが、少しの手間でエネルギーのむだを減らすことが出来るのです。生ごみを乾燥させる機器の購入に市や町が補助金を出しているところもあります。一度お住いの自治体に問い合わせてみるのも良いかもしれませんね。」
エバンズさんの食品ロス削減のアイデア、いかがだったでしょうか?
エバンズさんが心がけていることはどれも「無理なく続けられることをやる」ということでした。
環境のために何かしなくては、とプレッシャーを感じるのではなく、
自分にもやれそう!と思ったことから始めてみるのがいいのかもしれません。
BS1「Ethical Every Day」
地球環境にやさしい暮らし方のヒントを発信。