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海の幸が食べられなくなる?「海洋酸性化」【インスタ画像でわかりやすく解説】

人間の活動によって放出される二酸化炭素。

その増えすぎた二酸化炭素を世界中の海が大量に吸収しているということを知っていますか?

そのことによって海の中では、驚くべき問題が起きています。

(NHK「NHKスペシャル 海の異変 しのびよる酸性化の脅威」より)

※サムネイルの画像を矢印に沿ってスワイプすると、インスタグラム「地球のミライ」で投稿した画像の続きを見ることができます。

海の幸が食べられなくなる!? “海洋酸性化”

深刻さを増している地球温暖化。原因は、人間の活動によって放出される二酸化炭素だと考えられています。

増えすぎた二酸化炭素を世界中の海が大量に吸収しているということを知っていますか?大気中の二酸化炭素の50倍もの量を海が蓄積しているのです。
これによって、海水が酸性側に近づいていくことを、“海洋酸性化”と呼んでいます。

地球温暖化の影響が特に進んでいるとされる北極海。ここで調査のために研究者たちが採取したのは、体長3ミリほどのプランクトン。「翼足類」と呼ばれる仲間で、北極海や近隣の海域に多く生息する「ミジンウキマイマイ」です。魚の餌となっています。

小さな体を一つ一つX線で撮影して、立体的に分析。殻の断面を見てみると、密度が低いことを示す青い部分が多いことがわかります。これは、殻がもろくなっていることを示しています。

こうした異常が見られた18個体を調べると、殻の密度が正常な物より平均で20パーセント低くなっていることがわかりました。
中には、殻が溶けて穴が開いているものも。

小さな生き物が溶ける原因は、北極海の水にあることが実験で確かめられました。正常な翼足類のプランクトンを用意し、北極海で採取した酸性化が進んだ海水にいれてみると…

これこそが「海洋酸性化」の仕業。
酸性に傾いた北極の水が殻を溶かしてしまったのです。調査によると、北極海の一部では翼足類の生息数が2004年に比べて2019年には約5分の1にまで減ったこともわかっています。

海洋研究開発機構 木元克典 主任研究員

「有殻翼足類は他の動物プランクトンや大型の魚といったものの、基本的なエサになっています。彼らがいなくなると、それを食べる動物がまた困りますし、今度はそれを食べている、さらに大きな生き物が困っていくとドミノ倒しのように生物に影響が及ぶということが考えられます」

毎年のように報じられているサケの不漁。
調査をすると、サケの主要なエサになっているのが「翼足類」だということがわかりました。
これまでは日本近海での海水温の上昇などが原因だと考えられてきましたが、不漁には海洋酸性化による翼足類の減少も関わっているかもしれません。

ほかにも「ダンジネスクラブ」というカニ。アメリカではゆでて食べられる人気の食べ物です。このカニの赤ちゃんの殻にも穴があき、うまく成長できないことがわかりました。
最悪の場合、2100年には海の生き物たちの5分の1が消滅してしまうとIPCCは予測しています。(IPCC=気候変動に関する政府間パネル)

二酸化炭素が吸収される!? 海外の最新取り組みとは…

8年前からベトナムの人たちが力を注いでいるのが「マングローブ」の植林です。国連の協力を得て、東京ドーム16個分、76ヘクタールの海辺に植えました。
実は、マングローブは熱帯雨林など陸上に生える樹木よりも二酸化炭素の吸収能力が高いとされています。

マングローブは大気中から二酸化炭素を吸収し、やがて水の中に葉が落ちます。葉は丈夫なため、海水の中で分解されるのに長い時間がかかります。葉に取り込まれた炭素は、泥の中に数百年にわたって封じを込められるのです。
この働きによって、マングローブは40倍の面積の熱帯雨林に相当する二酸化炭素の吸収量を誇ります。

国連はいま、海藻や海辺の植物が持つ二酸化炭素を吸収する力に注目しています。
世界の沿岸や浅瀬で植物を育てることで、年間最大14億トン、それは日本が一年間に排出するのとほぼ同じ量の二酸化炭素を削減することができると試算しているのです。

「二酸化炭素の吸収量をさらに増やそう」という、新たな挑戦がフィリピンの沖合で始まっています。目を付けたのは、本来海藻などが育たない沖合の海。民間の研究チームがこのプロジェクトを始め、実証試験が始まっています。

海に浮かべた直径10mほどのリングに放射状にロープをはり、様々な海藻を根付かせます。
「どんな海藻が最も効率よく二酸化炭素を減らせるか」、検証している段階です。

沖合の海水には沿岸ほど栄養分が含まれておらず、元々は海藻の栽培に向いていません。そこで研究チームは海底の栄養豊かな海水を太陽光発電を使ってくみあげ、海藻に供給する仕組みを考えたのです。

海藻は、最終的に自然にちぎれて深海に沈みます。それによって、深海に炭素が運ばれ何百年も貯蔵できるといいます。
ゆくゆくは海藻の栽培場を直径数百メートルにまで拡大し、世界の海の沖合に展開する構想です。目標は、日本の本州の面積に匹敵する20万平方キロメートルもの「海藻の森」です。

プロジェクト代表 ブライアン・フォン・ヘルツェンさん

「10数年後には、10億トンの二酸化炭素を減らすことができるはずです。二酸化炭素を深海に封じ込めることは、気候を守るとても素晴らしい策だと思います」

海の持つ力を最大限高めようとする挑戦。これらの構想が実現すれば、二酸化炭素を年間24億トン削除できると見積もられます。

いま、人間は大気中の二酸化炭素を年間187億トンずつ増やし続けています。このままの状態で海の持つ力を最大に働かせても、減らせる量はごく一部にすぎません。地球の未来は、私たち自身の努力にかかっています。

いちどは超温暖化した地球が 元に戻ったハナシ

5600万年前、アイスランド近くの海底で数千万年に一度という規模の地殻変動が始まったと考えられています。長さ3,000キロ、日本列島をすっぽりと覆うほど広大な範囲で海底が裂け、マグマが噴出、大量の二酸化炭素が放出されました。

その結果、大気中の二酸化炭素の濃度は現在の4倍にまで増え、地球の平均気温は5度以上もあがったとされています。
大量の二酸化炭素を海が大量に吸収し、海の水がpH7.4まで酸性に傾く海洋酸性化が起こりました。(※現在の世界の海の平均のpHは8.1)

そこから地球が元の状態に戻るまでには17万年もの時間がかかったといいます。
激しい海洋酸性化から地球がどのようにして回復していったのか。
それを解明することが、いまの地球に起きている問題を解決する糸口になると考えられています。

東京大学の安川さんが調べたのは、世界各地の海底から掘り抜かれた太古の地層のサンプルです。
インド洋の海底から採取した地層を詳しく分析したところ、5600万年前あたりの地層にだけ「バリウム」が突出して多く含まれていることを発見しました。

バリウムの結晶は、植物プランクトンの死がいがもとになってできています。つまり、二酸化炭素が激しく増えたこの時代、海で植物プランクトンが爆発的に増殖していたことがわかったのです。

海の中では何が?

◆海では植物プランクトンが大繁殖。二酸化炭素を吸収し光合成を行う。

◆吸収した二酸化炭素は植物プランクトンの体内に炭素を含む有機物として蓄えられる。

◆食物連鎖を通じ動物プランクトンやそれを食べる魚なども増加。

◆炭素は糞などに含まれる形で、海の底へ。

約5600万年前に起きた二酸化炭素が激増した地球では、このように時間をかけて元の環境に戻ったと考えられるのです。

東京大学 安川 和孝 准教授

「地球で急激な気候変動、環境の変化が起こった時に、それをもとの状態に戻していく『フィードバック』と呼ばれる作用が自然界の中で働いているということ、それの証拠の一端が見えたという風に感じました」

インスタグラムでも画像を公開中

インスタグラム「地球のミライ」では、環境問題や気候変動のほかSDGsの達成に向け、いま課題になっていることを写真やグラフィックで紹介しています。こちらも合わせてご覧ください。
インスタグラム「地球のミライ」※NHKサイトを離れます

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みんなのコメント(2件)

感想
トムジェリ大好きマン
2023年8月16日
とても勉強になったよ!
質問
SDGs応援団員
30代 男性
2022年12月31日
とっても勉強になりました。温暖化でCO2が増えているから、そのCO2の中の酸素が原因で海洋の酸性化、とは分かったのですが、大気中に元々あった酸素では、海洋酸性化問題は起きなかったのでしょうか?